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逆襲のロリコンシャア

 ガンダムは知っているんですが、大体はゲームから得た知識なんです。ですので、意外と原典に当たっていないというか、アニメそのものを見たことがほとんどないんです。

 ただ、子供のころからチラホラと見ていたようで、断片的に場面が記憶に残っています。例えば、「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」の終盤、シャアによって基地に改造した小惑星「アクシズ」が地球に落とされようとするわけなんですが、いろんなロボット「モビルスーツ」がアクシズにしがみついて押し返そうとするも落下の勢いを止められず、逆にモビルスーツが壊れていく場面はなぜかよく覚えています。敵味方問わず、様々なモビルスーツが協力して落下を止めようと頑張るもうまくいかなかったというところが印象深かったのかもしれません。

 それからしばらく「逆襲のシャア」はゲームでしか触れ合わない時期が続いておりましたけれども、YouTubeの「ガンダムチャンネル」で「逆襲のシャア」が公開されていた時期があったんです(現在は見られません)。期間限定とは言え、せっかく公式が無料で提供してくれてるんです。いい機会だからと最初から最後まで拝見しました。

 話の大筋はゲームで知ってましたし、ネットで調べればあらすじくらいいくらでも出てきます。つまりメインのストーリーにあまり関係のない場面は触れられていません。だから印象に残ったんです。一般兵がシャアをロリコン呼ばわりしているところが。

 原作を見た方たちの間では有名な場面だったようで、シャアのロリコンをいじっているサイトも簡単に出てきました。

 最初は「公式がロリコン認定してたんかい」と色めきだった私ですけれども、冷静に考えるとこういう場面を入れるセンスはすごいと思うようになりました。

 やっぱりこういう話の目玉は主人公とライバルの関係性であり、本来ならばそちらに時間を割きたいはずなんです。しかし、「逆襲のシャア」の主人公はエースパイロットのアムロで階級は大尉、ライバルはネオジオンの総帥であるシャアなんです。メインのストーリーだからといって彼らばかり追っていくと、エースパイロットとか総帥とか、そういう選ばれ者たちの目線でしか話が進まないんです。

 もちろん、「それでいいじゃん」という見方もあるでしょう。映像作品にしばしば求められるものとして「非日常」というものがございます。エースパーロットが敵の総帥に挑む。それだけでもお話としては充分です。でも、描いているのは戦争とか紛争とか、そういう類の戦いです。一般兵の存在は欠かせない。

 シャアがクェスという13歳の少女の資質を見抜いて味方に引き入れる場面は、のちに訪れる「ニュータイプの悲劇」というガンダムならではの話に繋ぐ重要なポイントであるんですが、まあ一般兵からしてみれば「あのスカしたロリコンは何考えてやがんだ」という感想にもなるでしょう。その辺がものすごくリアルです。地球連邦政府に宣戦布告をかますネオジオンだってひとつの組織です。トップの決断に内心不満を持つ人がいてもおかしくはない。あくまで私の想像ですが。

 そして、更に想像で話をしますけれども。シャアが地球にアクシズを落とそうと思ったのは、彼なりにキチンとした理由があるわけです。しかし、全ての部下がそれに共感しているわけではないでしょう。「あのロリコン大将が」と思うような人たちの中にはシャアの理屈なんてどうでもいいと考えている者もいるでしょうし、そんな人たちからしてみたら「地球連邦にムカついてネオジオンに入ったけど、あんなロリコンのせいで地球が滅茶苦茶になるのはやっぱりよくないよな」と思って、身を挺してアクシズを止めようとする人がいてもおかしくない。一般兵のロリコン発言は、敵味方が協力してアクシズ落下を止めようとする場面への伏線のひとつだったのかもしれない。

 そういうところも含めて、すごいセンスだなあと今更ながら思いました。

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