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パイプを喫う時 ・煙と共に/その1

煙草について思うところでは、味よりも空間が重要だと思う時がある。特にパイプタバコであると、ことさら儀式めいた空間づくりによって味わいも喫煙動作への集中力も、その結果として得られる満足度も大幅に差が出る。
さらに言えば、口中や衣服に着いた残り香についても、喫した場が楽しかったかどうかによって、臭く心地よくも感じ方が変わるのだ。
それが同じ味の葉とパイプだとしても、である。

お酒も料理も、それを味わう場によって味わいが損ねらることは、せっかくの時間が無駄であったかのように感じられてしまう。対して、インスタント食材でも開放感ある風景や気の置けない相手と過ごすだけでかけがえのない一食になりうる。

パイプタバコの場合、独りの方が好ましい。外出先であれば、コーヒーやビールなどが出てきて、あとはポツンと放っておいてもらえる空気の店が良い。声掛けもありがたいが、パイプタバコ喫煙中は勘弁してもらいたい気持ちである。
もちろん、時折言葉を交わす程度のお店もあるので、そこはそこ。そんな関係が作れていなければ、独りが良い。
友人知人同士でも、同じパイプ喫煙者同士であればよいが、そうでなければ喫わない。お互いに程よい距離感をもって同じ場でくつろげるなら良いが、そこまででない場合は喫わずに酒だけにする。この点についてはパイプ煙草自体の煙の強さが理由となる。気にしないと言ってもらえたとしても、やはり匂いはキツいものだから。

お供にするのはお酒が良い。パイプ葉の種類にもよるが、ビールにも合うときは合う。特にギネスは最適だ。他には、ラム酒や個性の穏やかなウイスキーも良い。
珈琲は間違いなく合う。中国茶も、黒茶や紅茶は良いが、緑茶系の軽いタイプは合わせ方が難しい印象だ。日本茶も同様。

個人的にはこのようなロケーションが適合した場合にパイプ喫煙を楽しみたい。そうでなければ無理をして喫うこともないと思っている。パイプタバコは自分にとっては非日常の一服なのである。


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