standじゃないけどalone
最近レザーじゃないライダーズジャケットが増えてきたなぁ。色も形も豊富になった。でも、私は生まれ変わったら黒のダブルのレザージャケットを着るのさ。少佐みたいに。
春先のマネキンは、フリルのブラウスとプリーツのロングスカートの上にモスグリーンのライダースジャケットを羽織っていた。
また華奢に生まれてきてしまったら、ああいう感じもいいかもしれないけど、と横目に見ながら通り過ぎる。
生まれ変わったら云々…は、今世は無縁ということだ。だから、今年の春、黒いシングルのライダーズジャケットの前で立ち止まった時(どういうこと?)と思った。こういうのずっと見てはスルーしてきたよね。右手の中指と薬指が革に触れる。あれ?触ってるよ。振り向いて店員さんを探している。「試着していいですか?」
セーターの下に着ていた紺の長袖Tシャツの上にジャケットを羽織る。シングルライダーズジャケットといっても、それはどちらかというとノーカラージャケットに近いデザインだった。ノーカラージャケットの似合わなさはスーツを着ていた時代に痛感していてその確認のつもりもあったのに、袖を通して正面の鏡を見たらなんか似合っている。あれ?
店員さんに手持ちのスカートの特徴を伝えて似た形のものを借り、試着室を出てショートブーツを履いて、鏡から少し離れてバランスを確認する。良し。黒にも革にも思ったほど負けてない。前下がりのボブのおかげかな?それともマスクで顔が半分隠れているから?そうかもしれない。私はマスクを外さないまま試着を終え、レザージャケットを拐うように連れ帰った。マスクの世のうちにたくさん着よう。どうせひとりで出かけるし、たぶん私は生まれ変わらないだろうから。
マスクをしていれば、これまであまり似合わなかった黒系の服も似合うのでは?という仮説を立て、この夏、黒系の服を2着購入した。そう思わなかったら試着すらしていなかっただろう。
黒地にオレンジと白の図案が描かれたアロハ、黒地に白のクロスステッチが施された身幅の広いフォークロアなブラウス。この2着を買った際は試着室でマスクを外した。真っ黒より白が入っている方が似合うような気がする。無印良品のセールで買ったままタンスの肥やしになっていた白のデニムが活躍中だ。
レーヨンのアロハは30代前半の子育て期にも着ていたが、テロテロのレーヨンと貧弱な私の骨格が作り出す心許ないラインは、ちっとも「アロハ〜」ではなくて残念だった。ライダーズジャケットにしてもアロハにしても、私の身体やキャラクターとは遠く、でも憧れの象徴だったのだろう。草薙素子みたいに。今なら加齢で得た若干の丸みや白いマスクのおかげで着こなせるだろうか。
先日、ファッションや発言が3S(スタイリッシュでストレートでスパイシー)な知人に、アロハが前より似合うようになったと話した。
「開き直ってきてるから、前より似合うんじゃないですか?」
4S(+速攻?スピーディー?)で返ってきた。
「それもあるかも。standじゃないけどaloneって感じだけどね」
「noteにそのタイトルで何か書いてくださいよ」
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