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【質問箱】がん保険を検討中、アドバイスを

私が代表を務める卵巣がん体験者の会スマイリーでは匿名で質問をしたい方のために「質問箱」を設置しています。
回答はスマイリーのTwitternoteなどで回答していきます。
今日の質問と回答は以下のとおりです。

お答えします

個人的な考えと経験でよろしければ!ということなら

前回に続き今回も公開でお答えするには、すごい難しいお問い合わせで、長いお時間を返信までにいただいてしまいました。
ただ、そもそも質問者さんのお悩みは私が以前回答した質問箱の答えによるものだからやはりお答えしなくてはならないのだろうと思いPCに向かっています。
ただ私は生命保険に関しては不勉強ですのであくまでも個人的な考えと経験でよろしければ!責任は持ちません!ということを大前提とさせてください

拡大治験や患者申出療養に至る患者はそういないうえに・・・

まず、前回の質問箱でとりあげた拡大治験や、患者申出療養制度についてお話しさせてください。

2016年4月に拡大治験が導入され、実際に拡大治験を受けたい・受けたという相談があったのはこれまでに卵巣がんでは3人だけです。
ちなみに去年(2021年)は年間1016件相談がありましたが該当する相談は0件でした。
プラチナ抵抗性再発卵巣がんの新薬の治験や、インチキではない免疫治療(PD-1、PD-L1)の治験がプラチナ感受性・抵抗性ともに行われていたので、微々たる条件で治験に入れない患者さんから拡大治験の問い合わせくるのではと身構えていたんですが実際はこんな感じです。

同じく2016年4月から導入された患者申出療養制度(リンク)ですが、導入以降にご相談をいただいたのは、卵巣がんの患者さん・ご家族からは0件です。
ただ他の疾患の患者さん・ご家族からは相談をいただいており、スキルス胃がん2件・乳がん1件・肺がん1件・難病2件の合計6件の相談をいただき、これまでに対応しております。

胃がんに関しては「パクリタキセル腹腔内投与及び静脈内投与並びにS―1内服併用療法 腹膜播種又は進行性胃がん(腹水細胞診又は腹腔洗浄細胞診により遊離がん細胞を認めるものに限る。)」が行われました。(※)現在は新規登録受付は終了しています。
乳がんに関しても「経皮的乳がんラジオ波焼灼療法 早期乳がん(長径が一・五センチメートル以下のものに限る。)」が行われています。
詳細はこちら(リンク)

費用負担に関してお話しすると、実は多くの拡大治験において薬剤費は治験と同じく企業が負担しているケースが多いです。
また患者申出療養での費用負担は、上記で紹介した胃がんに関する患者申出療養の一部負担金をみると、平均的な投与回数である24回の場合、44万6千円(参考)となっています。

なにが言いたいかというと、

  • 未承認の医薬品・医療技術に何がなんでもアクセスするというケースに至ることは非常に少ない(のに特約をつけるの?)

  • 拡大治験の場合、薬剤の負担が企業側であることも多い(のに特約をつけるの?)

  • 患者申出療養の一部負担金については胃がんを事例にあげると平均的な回数で44万6千円(なのに特約をつけるの?)

ということは考えなければならないと思います。

つづいて先進医療に関して例をあげます。
膵臓がんに対して先進医療Bである重粒子治療を受けられた患者さんの費用負担は314万から350万円ほどと言われています(参考:パンキャンジャパン)。
また過去に卵巣がんに対してベバシズマブの効果を検討した先進医療関しては、ベバシズマブの費用992万9千円(21回)でしたが、患者負担額は13万9千円で差額は研究施設が負担しました。
カルボプラチンの腹腔内投与の先進医療も、111万円の費用負担のところが患者負担額は12万9千円で差額は企業が負担しました。
というように、先進医療でも、必ずしも高級車を購入できるような費用負担が発生するわけではありません

まれに患者さんから「家族の医療保険の検討をはじめたのですが」といった相談を受けるときがあります。
私は「特約については、その特約を使うことがなくても惜しくない金額であれば検討してもいいと思う」とお答えをしています。
つまり使うことがなかった場合に「あのお金をもっと他に使っていれば」「もったいなかった」と悔やむ額であれば慎重であってほしいです。
特約をつけない場合は、例えば月に2万円を定期貯金をしては?とお話をしています。2万円が12ヶ月で24万円、20年経過すれば480万円もの金額が貯蓄額として貯まります。万が一病気になり、保険適用外の治療をうけたくなった時の軍資金に使うこともできるし、がんにならなければ老後に旅行に行くなどご自身に投資すれば良いと思います。

私が入っていた生命保険

私は母親の勧めもあり、20歳の時に2つの生命保険に入りました。
いずれもが郵便局(当時)のもので、1つは15年、1つは20年で満期になる貯蓄型のもので、月に2万円ほど保険料の支払いをしていました。

そして30歳で卵巣がんになりました。
28歳で中古マンション購入(35年返済、月およそ14万返済)し、新車を購入(月およそ3万5千円返済、月2万円の駐車場)していて、生命保険料などもいれると生活費以外に月に20万円以上の支払いを抱えていました。

当時も高額療養費制度がありましたが、限度額適用認定証はなく、一度医療費を3割負担で支払ったのちに一定の金額を超えた額が払い戻される仕組みでした。
私の場合は、卵巣がんの手術・3サイクルの抗がん剤治療・入院費用(77日間)を支払う必要がありました。
2歳の息子のことを考え、実家から近い総合病院でがんの治療ををしたため母が医療費を立て替えてくれていました。
退院した翌日、母に郵便局に連れていかれました。窓口で退院時にもらった書類などを提出し保険還付の手続きを行ったのです。
1日1万5000円+手術時に50万円いただける保険に入っていたため、165万5000円がすぐに支払われました。
77日も入院し、手術も受けていたので絶対足りなかったと思うのですが、母は「65万5000円を返してね」と受け取り、100万円を「万が一再発したり、高級なウィッグが欲しくなったりしたら使うように」といい私の口座に定期預金しました。そして35歳と40歳の誕生日に2つの保険がそれぞれ満期になり、貯蓄型だったためまとまったお金が還付されました。
(ただそれらは誹謗中傷をされた際の相手の特定・訴訟費用として消えてしまいました・・・・いや、それがあったから裁判に踏み切れたと前向きに考えるようにしています。)

現在に置き換えると過剰かも

ただ、私が入っていた保険は20歳の頃(1993年)に加入したものであり、当時と現在ではがん医療にはさまざまな違いがあります
現在では入院や手術が予めわかっている場合には高額療養費の限度額適用証をもらうこと(リンク)で窓口負担を一定の金額(リンク)にとどめることができます

つまり、高額な抗がん剤を使おうと、手術をしようと、まるまる1ヶ月入院しようと保険適用されている治療であればある程度の上限が決まっています。
一般的な平均年収のご家庭だと80,100円+(総医療費-267,000円)×1%(4ヶ月目以降:44,400円)が負担額となります。
つまり1回3000万円の抗がん剤を保険適用で受けたとしても、80,100+(30,000,000-267,000)×0.01になるので377,430円の窓口負担です。
(※)もちろん検査費用などいろんな費用が請求されるのでこんな単純な医療費ではないわけですが

また手術時は2週間前後の入院が必要ですが、卵巣がんの標準的な抗がん剤治療の多くは日帰り治療・もしくは2泊3日程度(ハイカムチンでの治療の場合は1週間程度)の入院で行っています。
私は77日間入院をしましたし、当時の卵巣がん友達のなかには6ヶ月も入院をしたという方もおられましたが、現在卵巣がん治療ではほぼそういうことはないと思っていただいて結構です。
(※)ただし血液がんで骨髄移植を行う場合、ホスピス病棟に入院した場合などは長期の入院になる場合もあります。
1日の入院費の支払いが厚い必要があるかということも検討が必要です。
また外来で行う日帰りの抗がん剤治療に保障をつけるかも検討が必要です。

個人的にこうしておけばよかったなと思うこと

私は20歳の頃に郵便局の貯蓄型の保険に入り、30歳で卵巣がんの手術および抗がん剤・長期入院の費用が還付され助かりました。
ただ20歳の時にはまさか自分ががんになるなんて想像もしておらず、15年・20年で保険がそれぞれ満期を迎えました。
一度がんと診断されると次に生命保険に入るのは難しいです。
実際に卵巣がんになって10年目・15年目にゆうちょ銀行に足を運び生命保険に入りたいという相談をしていますが、健康な同年代の方に比べて割高な月額支払いで補償が少ない形の提案しか加入できないと言われました。
また友人に民間の生命保険会社のライフプランナーがいるため相談をしたところ、貯蓄型なら掛け金が健康な人の1.7倍、掛け捨て型なら1.3倍という条件が提示されました。
それなら普通にタンス預金しとくよママン・・・。

なので、生命保険(医療特約付)に入る場合は、終身プランにするかは大切なポイントだと思います。
終身以外の場合は「がんになったあとに生命保険に入れない」可能性を考える必要があります。もし、生命保険に入れたとしても、若い頃に加入した方が月々の保険料が安いため、がんになったあとだと年齢を重ねて保険料は高いうえにがんになった経験のため掛け金がさらに高くなる可能性もあることも考慮してください。
ライフプランナーさんとよく考えて欲しいのではありますが、ベーシックな生命保険(手術や入院費用が出るタイプ)であれば終身で加入することも考えられても良いかもと個人的には思います。
ただ、がん特約や先進医療特約などに関しては医療制度が今後変わっていく可能性もあるため、都度見直せるものにしておく方が良いかもしれません。
掛け捨て型や貯蓄型に関しては月々の支払いの差・将来に還付される金額などがありますので、どうするのが質問者様にとっていいのか、ライフプランナーさんとよく話し合ってください。

がんになったあとの私の生命保険

私が加入している生命保険

20歳の頃に加入した郵便局の生命保険は35歳と40歳でそれぞれ満期を迎えてしまいました。
そこで私は民間保険会社のライフプランナーさんといろいろ話し合いました。

がんを罹患しても入れる生命保険は現在徐々に増えてきています。
しかし、まだまだ掛け捨て型が多い気がします。
掛け捨て型が悪いとはいいませんが、私はどうせなら返ってくる方がよいなぁと生命保険を決めきれずにいました。

そんなときにライフプランナーさんからある提案がありました。
「コープ共済はどうだろう」
コープ共済たすけあいは、月掛け金2000円で、入院時には1日あたり5000円、さらに女性によくある疾患では+3000円の補償が受けられます。
加入の条件も比較的ハードルが低く、がんと診断され治療終了後5年以上経過している女性なら加入することができます。
(共済によってはもっと年数が少なくても入れるところもあるようです)
(※)コープ共済に入るには宅配や店舗でコープの会員になる必要があります。

私は卵巣がんと診断されてから10年経過していましたし、月2000円なら掛け捨てでも良いかなと思えました。
ちなみに先進医療特約は条件がありますが月100円の掛け金で1000万まで支援してもらえる可能性があります。

実際に加入後に原発性アルドステロン症の検査入院や、心のバランスを崩して入院など何度か入退院をしてますが退院時に病院でもらえる証明書を受け取り、コープに電話したら2、3日以内には申請書が届きます。
必要事項を記入し申し込めばすぐに入院した日数の補償が振り込まれていてびっくりしました。
1週間入院するとさすがに限度額の80100円+αを支払いますが、35000円返ってくるので自分の負担は5万円ほどとなり気分的にはちょっと楽です。

さいごに

私自身は生命保険の知識がほとんどなく、あくまでも個人の経験をもとにお答えさせていただきました。
どうか、質問者様にはライフプランナーとよく話し合っていただけたらと思います。
回答までにお時間をいただきましたことを深くお詫びいたします。

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