3月25日A代表を褒めたりする。

所謂日韓戦であった。結果は3-0で日本が勝利。

色々思うところはあったが、角の無い感じで書いていきたい。

際立った前半海外組の「判断力」

観た人は前半の日本チームの「強さ」に鮮烈な印象を覚えたことかと思う。何がその理由かを問うた場合、私は「判断力の高さ」を挙げたい。

理想的なボールさばきは何かと考えれば、「ボールを奪う」「ボールを奪われない」に極論できると思う。この試合の前半海外組は、このパフォーマンスが突出して高かった。

従来の韓国チームの印象は「当たりが強い」ことが一番に挙げられる。つまり、対戦する日本側としては「ボールを奪われる」という印象が強い。これを回避する為、安全な方向へパスを出していった結果、ジリ貧になり、押し込まれてしまったりする。対韓国チームだけでなく、これはよくある負けパターンである。

しかし、この日の日本チームは違った。大迫、鎌田、南野、純也、遠藤、佐々木らの「危機管理意識」は極めて鋭敏に機能していた。自分がボールを保持した際には、敵との距離、周囲の状況、試合の状況などから最も有効な行動を選択することが出来ており、結果として敵からの「当たり」を受ける事すら少なかった。更に、敵が保持しそうになったら、最短最速で潰しにかかることを徹底し、敵に余裕を与えない。「当たりが厳しい」と思われていた韓国チームは積極性を失い、敵に奪われる恐れから、ワンタッチでのパスや味方を走らせるパスワークは全く出来ず、それぞれが孤立し、ジリ貧になっていった。

特に海外勢の選手はこの高い判断力に加え、ボールさばきの素晴らしい技術力を持っており、「巧い」と舌を巻かざるを得なかった。凄い。貴方たちは凄い。

褒めたい選手達について

佐々木
前半組では数少ない国内組。とにかく海外組の「判断力の高さ+技術力の高さ=サッカーの巧さ」に驚愕した前半だったのだが、佐々木選手の「徹底した危機管理、危機対応意識の高さが見えるパフォーマンス」には海外組と同レベルの「サッカーの巧さ」を感じた。「今、何が必要か」をよく理解しているパフォーマンスだった。素晴らしい。見慣れていない人は、敵とのコンタクトの「見た目の激しさ」に目が行きがちになるだろうが、「何故今そういう激しいコンタクトをするのか」等が重要なのであると強く言いたい。この選手はそれがよくわかっている。とても頼もしいパフォーマンスだった。繰り返しになります。素晴らしい。あなたは凄い。

鎌田、南野、純也、遠藤
佐々木の項目で述べたが、「判断力の高さ+技術力の高さ=サッカーの巧さ」を見せつけてくれた人たち。民放の実況ではあまり取り上げられていないが、鎌田の得点シーン等はわかりやすく、この人たちの凄さが見られる場面だったと思う。大迫の凄さは間違いないのだが、彼らや守田等が同時に攻撃参加したことで、敵の動きが散らばったのである。それを見た鎌田は、最善の策として「自分が撃った方が良い」と判断したわけだ。この場面はそういった、「攻撃面における有効な動き」を各自が連動して行った凄い場面なのであるが、所謂前線からの迅速な攻守の切り替え、敵のボール保持者へのプレッシャー等、守備においても素晴らしい判断力、パフォーマンスを見せていた。守田も重要な動き自体はしていたのだが、なんというか、彼はもっとやれる子ですよねという感じ。

大迫さん
やばいぐらい巧い。散々述べてきた「判断力の高さ+技術力の高さ=サッカーの巧さ」を十二分に見せて、さらに佐々木と同じような「今、必要なこと」を実践していた。恐ろしいほどに「サッカーが巧い」。個人的に、長身で似たようなことが出来る鎌田との同時起用が面白いと思った。民放の実況では「大迫の得点が云々」と言っていたが、そうではなく、「大迫が敵を引き寄せる役をやっている時に、鎌田や他の選手が自由に動ける」「鎌田に敵が引き付けられた時、大迫や他の選手が自由に動ける」ということだと思う。特に、「ボールが関係ない時」に大迫が敵と戦ってくれていることが多いように思え、その分鎌田は自由にやれたのではないかと感じた。従来大迫に期待していた「敵を引き付ける役+ボールを保持できる役」という無茶ぶりが過ぎる仕事に対して、「当たりが激しい」と思われる韓国チームを相手に十分すぎる程、完璧と思える程の仕事ぶり。徐々に、徐々に「怪我しないかなあ、大丈夫かなあ、早くひっこめてやってよお!」とハラハラさせられたが、いやもうなんか、凄いとしか言いようがないのは間違いなかった。多分、彼史上最強のパフォーマンスなんじゃなかろうか。凄い。

山根くん
後半も含めると、特に守備面で気になるミスがあったので、褒めっぱなしにするつもりはなれない。彼について言いたいことと言えば、「あの得点は川崎イズムあればこそ」だと思った。あのタイミングで枠内にシュートを撃てるということ自体が凄いことで、なんとなく、彼が他のJチームでプレイしていたらアレは撃てなかったんじゃないかと思った。とても「川崎っぽい」プレイでした。守田の前線への有効な関わり方も川崎イズム感ある。

気になったこと

終盤の戦い方が不明瞭
日本チームを応援するサッカー好きとして、言っておかなければならないと思う。所謂「終わらせ方」問題である。
確かに勝ったが、中身を見ていると「本来は6ー0で勝てた」「もっと点が取れた筈」の試合である。取れた筈の3点はシュートを撃った人が外したというだけのことなので、特に論じる必要もない。問題は「試合の終わらせ方」である。

「勝ったのにどうして問題が?」というと、「得失点差が問題になることがある」からだと言うほかない。1つの試合だけでなく、グループリーグを勝ち抜けする為の戦略として、得失点差を考慮した上で「この試合をどう終わらせるのか」ということについて、その時々において議論が分かれる。今回の試合は練習試合なので、「得失点差を考える必要は無い」。しかし、ワールドカップではそれを考える必要が出てくる。

それを見据えた場合、今日の試合をどう見るか。この試合の終盤、「点を取りに行くのか」「失点をしないようにするのか」がはっきりしなかった。「点を取りに行く」のであれば、「攻め続ける必要がある」。簡単に言えば、「シュート本数を増やして、得点の可能性を増やす」ことが必要である。一方、「失点しないようにする」のであれば、「敵にシュートを撃たせない」必要がある。この方法は幾つかあるが、これほどのレベルの選手達であれば、「ボールを自分達で保持し続けて、時間切れを待つ」という最も安全な試合運びが実行できると思う。

この試合、日本チームはどちらも選択しなかった。選手達は漫然とプレイをしており、チームとしての一貫性が無いように見えた。これで良かったとは思えない。

国内組選手の多くに見える「判断の誤り」
佐々木選手や素晴らしいシュートで得点した山根選手のプレーなど、良い判断力を見せた国内組の選手もいた。しかし、後半の山根選手は「良くない」と思われる判断のミス等をしており、他の国内組選手にもそういった部分が多く観られた。彼らも所属チームでは良い働きをするところを見ているので、「出来ないことは無い」と思う。では、何故「今、出来ないのか」である。色々な理由があろう。海外組の中にも判断力に疑問を感じる選手はいたし。

だから、取り上げたいのは「海外組の選手達の判断力の良さ」なのである。技術力や身体能力の高さが大事じゃない、とは言わない。しかし、「良い判断力を持った選手こそが、サッカーが巧い選手」なのだと思う。久保建英選手はその両面を兼ね備えた典型的な例であると思う。他には大迫や富安、Jリーグで暴れている川崎の家長も代表例か。浦和の橋岡もCB時は完璧な判断力を発揮するので挙げてみたい。

巧い選手は判断力が優れている。是非とも観戦する際には、そこらへんを考慮して各選手の動きを見てもらいたい。日本では得点した選手等しか持て囃されないが、そうでないのにやたら持ち上げられる選手も少なくない。「何故この選手をみんなが褒めるのか」の理由の一つがそこにあると思う。

翌日のU24の試合にも、優れた判断力を持った巧い選手が揃っているので、ぜひ注目してもらいたい。


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