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DESIGN : スクランブルスクエア ’20 AUTUMN VISUAL

渋谷エリアで最も高い地上47階建ての複合施設、渋谷スクランブルスクエア。’20 AUTUMNのビジュアル制作をOUWNが担当しました。

制作に至った経緯から、デザインする際のこだわりや印刷まで。スケジュール感も見えるようなインタビューでお届けします。

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商業施設 : SHIBUYA SCRAMBLE SQUARE
2020年9月10日(木) 〜 9月30日(水) オータムフェアビジュアル

始まりは母の日

ー 今回のものは「フェアビジュアル」と呼ばれるものですが、そもそもどんなものを指すのでしょうか?

石黒 : フェアビジュアルは、商業施設において期間で区切られる販促キャンペーンです。春や秋だったり、クリスマスやバレンタインなどのシーズンもので、一般的に館内全体の装飾をすることを指しますね。分かりやすく言うと、季節の館内演出です。

ー 制作に至った経緯は、どんな流れでしたか?

石黒 : 最初に母の日・父の日のフェアビジュアル制作をしていたんですが、コロナの影響で施設自体が休館になっちゃったので、期間が短縮してしまって。日の目を見る期間がグッと減ってしまったんです。ただその時とても好評だったので、もう一度秋のビジュアルでお願いしたいと言っていただきました。

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ー 母の日・父の日もしっかりと見たかったです…!いつ頃から秋の企画が始まったんですか?

石黒 : 6月の後半くらいですね。7月の上旬に最初の提案に行ったので、話をいただいてから提案までは1.5週間くらいです。その間に他の案件もやりつつ、アイデアを考えます。

出井 : スタートはお互いに案を出し合い、提案前にコンセプトが違うものをお互い2案ずつ、計4案に絞り提案に臨みました。

石黒 : 今までは自分のハンドリングでやっていたのですが、最近出井さんがADになったので、今はライバルみたいな感じであえて案を分けて作ってますね。それで先方にプレゼンして、結果によってその後の作業の担当が決まる、っていう流れです。

最初の提案

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石黒 : 1案目は、自粛開け一発目のフェアビジュアルということもあって、スクランブルスクエアに行くということがちょっとした小旅行になるイメージで作りました。少しだけ遠出して河原や森で小石を拾うとか、葉っぱを手に取るとか。そういうところのリンクでビジュアルをデザインしています。
スクランブルスクエアは、日本の最先端カルチャーが渋谷に集まるみたいなイメージもあって、「集積」っていう言葉が自分の中に浮かんで。だから小石とか、色づいた葉っぱとかが集積しているイメージともリンクさせました。

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石黒 : 2案目は、スクランブルスクエアに触れることで自分の見ている景色が変わる、視野の広がりや変化にフォーカスしたコンセプトにしました。渋谷の街が秋色に色づいたり、フィルターがかかって見えるようになる。スクランブルスクエアは様々なものを発信する最先端の場所だと思うので、割と無機質な感じでデジタルチックに表現しています。

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出井 : ここからが私がメインに動いたものなので、バトンタッチしますね。
実際にモノに触れることや、体験がなかなか出来ない時期だったので、「想像で旅に出よう」というテーマを設定しました。人が想像するときにイラストで用いられる吹き出しをグラフィックに落とし込んで、想像から世界が広がっていくさまをシンプルに表現しています。

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出井 : 4案目は、「物語を紡ぐ」というコンセプトをもとに、渋谷を行き交う人の交差や重なり、秋なのでニットの編み目も連想させるようなイメージを、当初は「SPIN a STORY」というコピーをつけて表現しました。スクランブルスクエアのデジタル要素もありつつ、季節感も感じられる温もりのあるデザインです。

ー 提案後は、すぐにどれで行くか決まったんですか?

出井 : そうですね、即決だったと思います。ビジュアルは4案目、テキストは2案目でもハマりが良かったので、2案目に決まりました。
私が印象に残ってるのが、「このビジュアルは元気が出る」って言ってもらえたことです。「今はコロナのこともあって暗いムードだけど、カラフルでハッピーな感じがするから、提案してもらった時のプリントを手帳に入れて持ち歩いている」と後日教えてもらったときは、すごく嬉しくて私が元気をもらっちゃいました。

ー それはとっても嬉しいですね…!
今回のビジュアルは出井さんが出したアイデアに決まったということですが、やったー!ってなりましたか?

出井 : めちゃめちゃなりました(笑)。
ADになったというプレッシャーもあるんですが、いかに石黒さんじゃなくて自分の案になるかっていうところにも、力を込めているので… 自分の案になる時はすごく嬉しいです。

ー そして、コピーは石黒さんの案ですね。

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石黒 : 母の日・父の日に続き、コピーは自分が設計しました。私的にも2案目のコピーは気に入ってたので嬉しかったです。
自分はコピーライターではないけど、ビジュアルと紐付いて考える時にコピーライターの人には出せないような、デザイナー目線のコピーって絶対あると思うんです。時間はすごいかかっちゃうけど、絞り出して、喜んでもらえたら嬉しいなって思って作りました。

ー 今回みたいに、コピーは石黒さんが書いてビジュアルは出井さん、というのは今までもあったんですか?

出井 : 初めてでしたね!そういった面でも嬉しいものになりました。

決まった案からブラッシュアップ

出井 : そこから2週間後に2回目の提案です。コピーとビジュアルのブラッシュアップをして先方に持って行きました。この時点ではまだ写真が仮の状態ですが、概ねOKをもらっていて、あとの細かい部分はお任せしてもらえました。

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↑ 2回目の提案時。色のバランスや文字の入れ方など、全体的にブラッシュアップ

出井 : 本制作用の写真は、後輩のデザイナー2人に、良い意味でノイズのあるような今時のヌケ感が欲しくてあえてiPhoneで撮ってもらいました。1つ1つの写真は大きくならないというところもあり、解像度も十分確保できるので、チャレンジしてみました。
スクランブルスクエア内の壁や床、館内にあるちょっとした造形物、服の生地、館内から見た空。すべてスクランブルスクエアの中で撮ったものです。

fumi : この写真、飛行機が映ってるんです!

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出井 : 最終的にはこの写真は左下に入れていますね。
何百枚も写真を撮ってもらって、その中から選んで構成しています。素材が全部館内の写真で出来ているのは、もしかしたらクライアントも知らないかもしれないです。

ー えっ!クライアントの方は、なんでもない写真だと思ってるってことですか…?それを知ったら絶対嬉しいと思いますよ!

石黒 : そうですよね。最後はもう作ることに集中しすぎて…(笑)伝えていないです。このnoteを通して伝わるといいな(笑)

同じものを並べない

石黒 : 今回の案は、たくさんのピクセルが集まって1つのビジュアルになっているのですが、同じ面の中に同じ写真が無いようにしてるんです。

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ー この1枚の中の四角は、全部が違うものってことですね。

石黒 : はい。コピーしたものが同じ空間にあると、それに気づいた瞬間にちょっと冷めると思うんです。そういう程度の高さは、デザインする時にすごく気をつけています。
あとは、全体的に凛とした空気感があるように意識しました。テキストもオレンジスクエアと重なる部分は、やや透けてボケて見えているなどもその印象を与えています。あえて言うなら日常でも「秋だなぁ」って思う瞬間ってあるじゃないですか?なんというか、暖かいけど、冷たい風が頬を伝うような、あの瞬間。デザインでそこを表現するためにマージンを広めにとったり、要素を削ぎ落としてクリーンに見えるように演出したり。オレンジの中に入る他の色のバランスも、こだわったポイントですね。

ー 素材の写真の色は変えているんですか?

出井 : 色はかなり変えてます。
今回のデザインでは、モチーフが分かっちゃうのは違うかなと思ったので、すごく寄ったりぼかしたりして、見る人には何の写真なのか分からないようにしています。

ー 分かっちゃうと気になっちゃいますもんね。意味が出ちゃうというか。

出井 : そうなんです。 絶妙なバランスで、知ってる人がよく見ると分かる、くらいの部分は少しだけあります。1階の入口に入る前のあそこだな〜とか。本当にちょっとしたところを撮っています。

ー その中でも好きな写真とか、好きなピースってありますか?

出井 : あります!さっきの飛行機も好きですけど、この写真が気に入っています。もうこれに関しては単純に色合いが好き(笑)なのが大きいですが...!
どの案件でも、そういった自分の小さな好きは盛り込んでいくようにしています。押し売りは絶対にしませんが、こだわるポイントや、好きという感覚を最後に加えることは、制作の醍醐味ですよね。

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ー 写真が全て違うとなると素材の量も多そうですが、作ってる時に大変だったことはありますか?

石黒 : 写真の管理は確かにありますが、一番は1つ1つのピクセルの配色バランスと、サイズの検証ですね。出来上がりのサイズに対して、「1つの四角がどれくらいの大きさで何個くらい入るようにするとバランスが良いのか」を考えるんです。大きいサイズのポスターだったら、四角が細かすぎるとガチャガチャしちゃうな、とか、実際に印刷して確認します。
1つ良いバランスができたとしても、それをそのまま他のものに持っていくことはできない。1つずつ、構成はもちろん色のバランスも見て細かく調整していきました。

ー ビジュアルは透き通るようなクリアな印象です。
館内に吊っているポスターが特に、風が吹き抜けるような透明感を感じますが、あれは普通の紙ではないですよね?

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石黒:あれはターポリンで、ビニール素材みたいなものですかね。文字の部分は透け感のある布に刷っていて、レイヤーになってるんです。館内装飾に入っていただいたスーパーエジソンさんのこだわりを感じて、とても素敵なところです。
今回は館内に色が増えて秋色に染まっていくように、ということを意識していたので、なるべく面が大きくなるようにとデザインの時から面を意識して制作していました。

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気持ちを繋げて持っていく

ー スクランブルスクエアはたくさんの人に見てもらえる場所だと思うのですが、どんな風に受け止めてもらえてたらいいな、というのはありますか?

出井 : 見てもらった時に、ほんのちょっとでいいので、素敵だなと思ってもらえたら。理想を言えば、写真とか撮ってもらえたらすごく嬉しいですね。

石黒:自分も同じかな。なんとなくそこにいて目に触れたことで、季節を感じてもらえたら嬉しい。無意識にその世界に入ってしまう没入感があったらいいなと思います。
スクランブルスクエアは商業施設なので、気持ちを繋げて持っていく役割にもなれたらいいですね。ちょっと秋のものを連想して美味しいものを買って帰ろうとか、秋っぽい洋服を買ってみようかなっていう購買意欲に繋がっていたら嬉しいです。

出井:今はこういう時期っていうこともあるので、なんとなくフラッと立ち寄ったところで素敵だなと思ってもらえたり、癒しになっていたらいいなって思います。

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CL : SHIBUYA SCRAMBLE SQUARE / @shibuya_scramble_square
PRD : JR Higashi Nihon Kikaku
CD+AD+C : ATSUSHI ISHIGURO(OUWN) / @ai_ouwn
AD+D : YUMI IDEI(OUWN) / @ideiyumi
D : FUMIKO ISHIKURA(OUWN) / @fumiko_ishikura

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聞き手 ・ 執筆 : 星成美

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