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#2 フィリピンの運転手さんたち(2)

前回の続きで、フィリピンのマニラで出会った面白い運転手さんを紹介したい。

二人目は、マニラの中心街から宿泊先のホテルに向かうためショッピングモールの目の前で拾ったタクシーの運転手さん。

夕方で外が暗くなってきている時間帯で、家路につくためだろうかタクシー乗り場には行列ができていた。そこからホテルまで歩いて帰れなくはなかったが、一日中歩き回ってくたくただったので、タクシーに乗るまで少しくらい待ってもいいかと思いタクシー待ちの行列に並んだ。その後しばらく待ってようやくタクシーに乗れた。ホテルの住所を見せると、分かったと言って運転手さんはタクシーを発進させた。

ようやくタクシーに乗れてほっとしたのだが、しばらくして異変に気付いた。後ろの方からブブブブブブブブという大きい音がずっと聞こえているのだ。自分が乗っているタクシーの後ろにバイクがいるのかと思い後ろを振り返ったがバイクは見当たらない。???と思ってよく確認してみるとその音は自分のお尻の下から聞こえているようだった。つまり、タクシーの後部座席かトランク辺りから音が出ているようだった。

え、どういうこと?車のエンジンって運転席より前についてるよね??とするとこれはエンジンではなく何の音???とプチパニックの私。車内をよくよく見まわしてみると内装はボロボロで、道路の段差でタクシーが揺れる度に車体からもガタガタ音がする。今にも崩壊するのではと不安になるほどそのタクシーはボロかった。

そして運転手さんはというと、、、ヤバかった。
道を間違えたようで運転手さんは一旦車を停めた。そして、辺りをきょろきょろ見まわして「サングラスが無いから見えない」と謎のことを言い出した。外は暗いのになぜサングラスをかける必要がある??(後でよくよく考えると、サングラスではなく眼鏡が無いから見えないと言いたかったのだろうと思い至ったが、眼鏡が無くて見えないというのもヤバイだろう。)先ほどからずっと鳴っている謎のブブブブブブという音と相まって、私の不安は一気に増幅した。

その後も運転手さんは何度か道を間違え、かなりの遠回りをした挙句、最終的に客の私がスマホで経路を調べて、次は右、ここはまっすぐ行って、など指示を出していた。その間中、私は死ぬかもしれないという恐怖に苛まれ、ドアの取っ手を必死に掴んで、無事にホテルに着くことだけをひたすら願った。

長い長い恐怖の時間がやっと終わり、なんとかホテルに到着した。ひとまず無事に着いたので私は料金をちゃんと支払った。そしてタクシーを降りようとしたその時、「チップくれないの?」と運転手さん。その言葉に私はぶちギレ。それまで乗ったタクシーの運転手さんたちにはちゃんとマナー通りチップも払ったが、この人に料金以上のものを払うなんてありえない!「あなた、何度も道を間違えたでしょ!」と大声で怒鳴ってドアをバンと閉めた。知らない人にこんな大声を出したのは生まれて初めてだった。

怒鳴って悪かったなと後で後悔したが、どうか許して欲しい。
命の危機を感じるほどの恐怖だったのだ。


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