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「あつ森」がプレイできなくなるレベルデザイナーという仕事について


今回は自分が一番長い時間担当している「レベルデザイナー」という仕事の内容についてと、レベルデザイナーをしていることで「どうぶつの森」などのMAPを作る系のゲームがプレイできなくなってしまうという「レベルデザイナーあるある」(マイナーなネタですが)について書こうと思います。

最近はすっかり「クラフトビールの人 > ゲームの人」になりつつありますが(苦笑)クラフトビールネタばかりというのも書いていてつまらないので(本人が)、仕方なく(嫌なのかw)本業についても書かせて頂ければと思います。どっちなのって感じですが。


🎮ゲームデザイナーの中のレベルデザイナー

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小学生の夢の上位に「ゲームクリエイター」が入ってる!なんてのはよく聞きますが、実際は「ゲームクリエイター」といっても中身はかなり細分化されており、一般的には全く知られていない専門的な仕事ばかりです。
よく「このゲームのディレクターやシナリオライターがクソだ」みたいな書き込みを目にしますが、このゲームの「UIプランナーがクソだ」とか「モーションデザイナーがすごい」みたいな書き込みは、ほとんど目にしません。これはゲームの制作過程が一般的なユーザーの理解を超えちゃってるからだと思うんですが、専門的過ぎて理解するのはかなり難しいと思います。(ちなみにゲーム自体の批判については、ディレクターは仕方ないとしても、この職種が!と限定したところで、関わっている人が多すぎるため誰かの責任でクソになったということに限定にしくいのになといつも思います。みんなで作っている以上連帯責任なのです)

ちなみに自分が担当している「どういうゲームにするか考える仕事」であるゲームデザイナー(またはプランナー)という仕事だけでも大規模なRPGの開発になると以下くらい細分化されます。

<ゲームデザイナーの区分け>
 ・ゲームシステムデザイン
 ・UI(メニュー)デザイン
 ・バトル(プレイヤー)
 ・バトル(敵)
 ・シナリオ/テキスト
 ・レベルデザイン
 ・イベント/演出
 ・サウンド(誰かが兼任することが多い)
 ・オンライン(オンラインモードがある場合)


これらのパートに数名ずついることが多く、この中でも担当はさらに細分化されます。このように「レベルデザイナー」は「ゲームデザイナー(プランナー)」の1つのパートにあたります。(区分けは大まかですし、チームによっても違うと思いますが参考までに)

前置きが長くなりましたが、「レベルデザイナー」という仕事は、ゲームを開発するセクションでいうと

「ゲームクリエイター」の中の「ゲームデザイナー」の中の「レベルデザイナー」というカテゴリに入る

ことが多いです。

余談ですがFF15の本編ではゲームデザイナーの仕事として

・レベルデザイン → インソムニア(最終MAP)担当
・バトル(敵)→ ラスボス戦担当
・イベント/演出 → エンディング、スタッフロール担当
・サウンド → BGMのプランニング担当

このように細分化されている上に兼任もしまくっておりました。
どうりで忙しかったわけですw

これも余談ですが、ゲームデザイナーは「オレが面白いゲーム作るんじゃーい」という我の強いメンバーが集まっている集団で、これだけパートがわかれてて意見がぶつかることは必至なので、どんなゲームを作るにも正直カオスな状態になります。スキルが高いもの同士が集まると意外と揉めないですが、それにしても「同じ高みを目指すためのゲームのイメージ共有」だけでもかなり骨が折れますし、心も折れます(笑)


🎮レベルデザイナーの仕事


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レベルデザイナーの仕事は、各パートの中でも最も多岐に渡りすぎていてかなり説明し難いんですが、なるべく噛み砕いて説明してみたいと思います。
格好良くFF15あたりを例にしたいところではありますが……最もわかりやすく理解していただくために「スーパーマリオ」を題材に説明させていただきます(実際の任天堂の担当区分けとは別だと思いますが)

■前提

まず前提として「スーパーマリオ」というアクションゲームの企画・コンセプト(プロジェクト)の概要が固まっていて、大まかに以下のような状態が決まってるという前提がある状態をイメージしてもらえればと思います。

◇ゲームコンセプト
「ジャンプしたり、ダッシュしたり、壁を壊したりすることでアイテムを探しながらパワーアップし、数々の仕掛けを乗り越えて進んでいくアクションゲーム」

◇シナリオ
「さらわれたピーチ姫を救うため、複数のステージをクリアして最後にクッパを倒す」


そこからレベルデザイナーは以下の概要を検討して仕様化します。

・このコンセプトやシナリオを達成するためのステージ構成をどうするか?
・基本アクションの他にステージ構成に必要なアクションはどのようなものがあるか?(海のステージがあるなら泳ぐとか)
・ステージを構成する上でどんな敵が必要か?
・アクションに対してどんな仕掛けが必要か?
・全体を通してどんなテンションでプレイしてもらえばよいか?
・イベントや演出があるなら、どのタイミングでどう入れるか?
・必要な世界設定はどんなものがあるか?
・どんなテキストを表示したり、セリフを言わせればよいか?
・どんなSEやBGMが必要か?

■発注

仕様の検討がある程度終わったら、必要なものを全て発注していきます。
(実際は作りながら随時発注することが多いですが)
これらの発注先はたくさんあり、こちらの意図や面白さを熱意を持って説明した上で「作る価値があるものだ」というのを理解してもらって、コストが収まるように全て発注します。

<主な発注先>
・シナリオ/世界設定
・イベントや演出
・キャラクターモデル
・MAP
・環境やライティング
・モーション
・VFX
・サウンド
・仕掛けやアクション等に必要なプログラム
・敵(エネミー)
・仕掛けに必要なアセット(3Dモデル)
・専用アクション(MAP固有のアクション)


多くないですか?
毎日やってるのに文字にすると、なんか滅茶苦茶大変そうな仕事ですね。まあ実際大変ですけど(笑)

■実装

これらの発注物が実際に作られ、ゲームとして組み立てることができるようになったら、作られたものを使い倒して面白くなるようにステージを構成していきます。
色々なものを使ってステージを作っていく作業です。

(例)
・ちょうどよい場所に「?」ブロックをおいていく
・コインを配置する
・落とし穴などMAPを調整する
・ノコノコを歩かせて、クリボーを配置する
・移動床を設置したり大砲(キラー)設置する。
・ゴールのポールを設置する
・最初と最後にイベントが発生するようにする

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作られたものはうまく動くこともあればそうではないこともあり、常に発注先のメンバーと調整しながら実装していくことになります、あまりにも関わる人が多いこともあり「レベルデザイナー」と言われる職種は面白いステージや構成やMAPを組み立てていくスキルだけではなく

「開発を進めるためのマネジメント能力」
「誰とでも話せるコミュニケーション能力」
「面白さを理解させるプレゼン能力」
「処理落ち、メモリオーバー、バグ対応などの危機対応能力」※最終的にデータをゲームに実装する役目なので


などが異常なまでにに求められます。
様々なスキルが求められる反面、ゲームに対する影響力や権限が大きく、ゲームデザイナーの中では「花形」の職種の一つと言われています。しかし、実際やってる身からすると「やりがいはあるものの、仕事多すぎてヤバい」「多分、仕事量が一番多いパート」という感想がメインの感想になり、毎度別のパートの方が楽だったなと思います。隣の芝生はいつも青いのです(笑)

このように、レベルデザイナーとは、ゲームの構成や全体のイメージを固めながら、必要なものを発注し、それを使ってステージを構成して
「ゲームそのものを組み立てていく仕事」
になります。
最初から最終形をイメージできるレベルデザイナーなんて、恐らくこの世に一人もいないですし、ゲームはいきなり完成形にはならないので「トライ&エラー」「クラッシュ&ビルド」を繰り返しながら完成に近づけていきます。

日々そのようなことを繰り返しているので、四六時中以下のようなことを考えながら仕事をすることになります。

・この構成がベストなのか?
・このMAPレイアウトで目指すビジュアルイメージを実現できてるのか?
・こういう仕掛けを置いたら、もっと楽しくなるんじゃないか?
・移動したりプレイする時にストレスを感じないか?


少しは「レベルデザイナーの仕事」をイメージできたでしょうか?


🎮レベルデザイナーがあつ森をプレイ出来ない理由

「あつまれどうぶつの森」はプライベートで楽しくプレイさせてもらっています。開発者目線で見ても、今までの秘伝のタレ感も最新の今を反映してる感もあり、本当に素晴らしいゲームだと思います。

あつ森……いつも最初は楽しくプレイして…るんです……
ですが!!かならずプレイしていると…止めたくなります……


「どうぶつの森」だけではありません。「ビルダーズ系」のゲームや「マインクラフト」などMAP作る系のゲームは全て長い時間プレイできなくなりました。

というのもMAP作る系のゲームをしている時の思考が

・この構成がベストなのか?
・このMAPレイアウトで目指すビジュアルイメージを実現できてるのか?
・こういう仕掛けを置いたら、もっと楽しくなるんじゃないか?
・移動したりプレイする時にストレスを感じないか?

というようにレベルデザイナーの仕事している時の思考とほぼ同じだからです。レベルデザイナーの中には、プライベートは切り替えて「あつ森」を楽しんでる人もいると思います。ですが!自分は無理なんです……本気を出せば出すほど

・「あつ森」の構成を考えている暇があれば……
・「あつ森」のビジュアルイメージの考えている暇があれば……
・「あつ森」のネーミングを考えている暇があれば……
・「あつ森」のMAPに何を置くか考えている暇があれば……
・「あつ森」のプレイストレスって、ほぼ自分にしか関係ない……

となり、より良い島を作れば作るほど、

「あつ森にレベルデザインの労力を割くなら、
 今作ってるゲームに労力を割いた方がよくね?」


となり「虚無感」と「背徳感」に襲われ、急激に我に返り、やる気が一気に削がれます。ただでさえ、ゲームデザイナーは心の底からゲームを楽しめなくなっているというのに、さらにです(苦笑)
(ゲームデザイナーが、心の底からゲーム楽しめないことについては別で機会があれば書こうと思います)

ということで、自分をはじめレベルデザイナーは「あつ森」ができなくなる率はかなり高いと思います。かなりピンポイントすぎる「職業病」ですがなんとなく理解していただければと思います(笑)


🎮まとめ

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かなりマニアックな記事になりましたが、少しでも「レベルデザイナーの仕事」について理解を深めて頂ければ幸いです。
書いていて仕事の内容を客観視しすぎて仕事に引き戻される感が半端ないです。

ここまでざっと説明したように、なかなか大変な仕事ではありますが、仕事の裁量が大きく、自分主導でできて、誰よりも早くゲームを組み立ててゲームの手応えを感じることができるレベルデザイナーという仕事はとても楽しく、大好きな仕事です。

「あつ森」を心の底から楽しみたい方には実際になることをオススメしませんが、少しでも興味を持ってくれる方がいたり、ゲームをする時にこれはレベルデザイナーの人が作ってるのかーと思っていただけたら嬉しいです。

最後まで読んで頂きありがとうございました!

よろしければサポートを宜しくお願いします。頂きましたサポートは今後の創作活動に使わさせていただきます。決してビール代にはしませんのでご安心ください(笑)