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妄想映画鑑賞

晴れた秋の朝、ゆっくり紅葉でも見ようと歩き始めたのだが、ほどなくして雨に打たれる。しばらく止みそうにないので雨宿りに映画館まで走った。
何を見ようかと物色しているとアキノソラ監督の「ハッピーエンドは売り切れました」が目に留まる。
制作発表の時に監督が「毎回毎回、なんでバッドエンドなの?って聞かれるから、タイトルにした」と話していたのが気になっていた。

映画は3話のオムニバス形式。中学に入ってから周りと馴染めずにいる少女。嫁と娘から邪険にされるサラリーマン。ご近所付き合いに疲れた主婦。主人公達を待つのは、もちろんバッドエンドだ。しかし、最初から最後まで不幸というわけではない。
むしろ序盤はひたむきに努力して、少しずつ明るい未来をつかんでいく。
彼らに共通するのは、現実から目をそむけずに変えていこうとする姿だ。
そして観客が主人公に感情移入した頃、物語はどん底まで落ちる事になる。

転落人生3セットをこなし、腰を上げる。
しかし気分は不思議と落ち込んでいない。
どん底まで落ちた主人公達だが、彼らはそれでも生きていく。
結末だけを見ればバッドエンドだが、それは人生の一部にすぎないからだ。

映画館を出ると、青い空が広がっていた。
今日の天気は晴れのち雨のち晴れ。いやいや、また雨かもしれない。
ハッピーエンドかバッドエンドかは確かに重要かもしれないが、そんなのどっちでもいいやってくらい途中のストーリーを僕は大事にしたい。

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