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プロローグA;真の幸福とは何か ~コロナは教えてくれた~

創刊号 #1

1 新型コロナと現代文明

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 2020年、春、日本は突然、コロナ大魔神の襲来に見舞われました。
それはまるで幕末の「黒船来航」を思わせるような衝撃的な出来事で、またたく間に日本列島の隅々にまで知れ渡りました。
 
 人類は、欧米で250年、日本でも150年、 いわゆる近代化なるものを進め、それまで想像もできなかったような驚異的な大文明を築き上げました。
その結果、文明の大樹には見事な果実が溢れんばかりに豊熟し、人々はその恩恵に浴して、中世時代には一部の貴族や富豪でなければ享受できないような生活を実現することが出来ました。

 しかし、人々はまだ満足せず、「科学技術の進歩」と「経済の発展」を呪文のように唱えて、日々精を出して励んでいたのです。

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 そこへいきなり、急ブレーキをかけたのが、コロナ大魔神です。
交通機関や経済の交流が驚異的に発達し「一球世界」になった現代では、感染は海山も国境も超えてグローバルに広がりました。
慌てふためいた人々はやむなく、国境封鎖や都市のロックダウンなど、強硬な防止策をとりました。その結果はご承知の通りです。
巨大文明の大回転はとまり、人類は経済的、社会的に史上未曽有の大打撃をこうむることになりました。
これはいったい何を意味するのでしょうか。

 天上の主・偉大なる造物主が、コロナという伝令使を派遣して、人間の野放図な文明の発展に異議申し立てをしたのではないでしょうか。
われわれ人類は、余りにも貪欲に大量生産・大量消費をすすめ、贅沢に資源を浪費して、膨大な排泄物を吐き出し、地球を汚染し環境を破壊してきました。
天上の主は、その人間どもの傲慢な放埓ぶりにお怒りになり、大警告を発したのではないかと思います。
われわれはこれを真摯に受け止め、現代文明そのものについて、これまでの生き方そのものについて、根本から考え直してみる必要があるのではないでしょうか。


2 コロナVからの手紙 「地球の嘆き」

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 これは隣りの月から眺めた地球の様相です。
人間たちが、文明の利器や凶器を次々と発明し、善きにつけ悪しきにつけ凄いことをやらかしているという景観です。
みなさん、「コロナ・ウイルスから人類への手紙」を知っていますか?
ヴィヴィアン・リーチさんというドイツの女性が書いたもので、インターネットで世界中に伝わり共感の波紋を広げ、私も大いに感銘を深くしました。
この画は、それをフリップ化したものです。

 ご覧ください、地球上にどんな異常現象が起きているか一目瞭然です。
現代の産業文明の大繁栄によって、大量の排気ガスや廃棄ごみが出ましたね。
それは空にも海にも大地にもまき散らされました。その結果、絶妙なバランスの上に成り立って好循環の地球環境が崩れ、気候変動をはじめ各種の異常事態を生じさせ、それが生態系をも狂わせ、新型ウイルスを発生させたとも考えられています。
猛烈な台風、ハリケーン、トルネード、サクロン、熱波、旱魃、バッタの大群。温暖化は氷河を溶かし海面を上昇させ、南太平洋のツバルやキリバスは水没の危機に瀕し、ヴェニスやモルジブは度々冠水の被害に襲われています。
陸では、集中豪雨、大洪水、土砂崩落、度重なる落雷、大森林の火災など、カリフォルニア、オーストラリア、アマゾン、そして日本列島の各地でもこれまでに経験したことのない異常事態が頻発しています。
このまま放置すれば、人間の存在自体が危うくなる重大事象です。
生きとし生けるものの偉大なる母である地球、その偉大なる造物主は、やむにやまれぬお気持ちで、手荒な強烈なパンチを使って重大な警告を発せられたのではないでしょうか。

3 現代文明はどのように進展してきたの?

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 では、近現代文明はどのように進歩発展してきたのでしょうか。
その過程を表わしたのがこの図です。
人間は長い間、大自然の上で謙虚に質素に暮らしてきました。
それが一変したのは、あの産業革命以来のことですね。
その象徴的な事件は、蒸気機関、力織機、蒸気車の実用化です。
その後、内燃機関、電気モーター、ジェットエンジンへと発展し、様々な機械が発明されました。
それは250年ぐらい前のことであり、日本がそれを摂取して近代化を始めたのは150年来のことなのですね。

 それまでの人類は、地球のあちこちに孤立して棲み、風まかせの船や馬に乗って交流し、作るものはほとんどが手仕事でした。
ところが、蒸気船や蒸気車が走り、紡織機をはじめ各種の機械を使い始めると、人類は凄い勢いで力を発揮し出しました。
この画では青い三角の部分が産業革命期を表しています。
それが大量にものを生産し、運搬し、消費するシステムに大展開します。
そして、もうひとつの注目すべき発明が電信機でした。
それまで手渡しの手紙しかなかったのに、魔訶不思議な電気の仕掛けで
一瞬のうちに伝達できるようになったのです。

 明治維新以来日本は、それらの技術を懸命に摂取し、近代化をはかるのですが、超大国の米国に戦争を仕掛けて大失敗したことは、みなさんの記憶に刻み込まれているとおりです。
しかし、戦後の日本の産業経済の発展は素晴らしいものでした。
まず家庭に電気器具がいろいろ出現しましたね。
掃除機・洗濯機・湯沸器、炊飯器、そして水洗トイレや自動で沸く風呂。それから二輪車や四輪車。さらには、電話やラジオ。そして魔法の箱・テレビ、冷蔵庫、空調機です。
哲学者の梅原猛さんはいいました。
「われわれはすべて、何人かの召使をもち、道化師をもち、馬を持っている貴族である」と。

 さらに最直近で、人間は驚天動地ともいうべき凄い機器を発明しました。
頭脳に代わるコンピューターです。機械といってもそれまでは手足の代わりをするものでしたが、これは次元の異なるスーパー機器でした。
計算機、ファックス、コピー機、そして、パソコン、携帯電話が現れ、そして、いよいよ神様も欺くほどの最新鋭機スマートフォンの登場です。
この掌にのる「新・千手観音菩薩」は瞬く間に世界中に広がり、人類にものすごい福音を与えました。  
そして大空に新奇絶妙の「クラウド」なる不可思議なものが出現、AIと称して人間に森羅万象につき指図しかねない状況になってきました。
こうして、この画のあるように、文明はいよいよ尖がって、神業の領域にまで進出してきたのです。

4 貧困の解消こそ最緊急の課題

 さて、文明がかくも大々的に発展して、その大樹には果実がたわわに実っているのに、どうして誰もが幸福になれないのでしょうか。

 原因は単純明快です。富が偏在して貧しい人が多すぎるからです。
フランスの経済学者トマ・ピケティがいうように、「極端な不平等」が世界に蔓延しているからです。所得格差、資産格差、金持ちと貧乏人の格差です。
格差は昔からどこにでもあったことですが、近代における格差の激しさは尋常でありません。
特にここ30~40年の間にグローバルな自由競争が激化し猛烈な格差を生んでいます。
これは、それを象徴的に表した図です。
左は日本のいい時代の姿、真ん中が米国の最近の姿であり、右はこうあってほしいという望ましい姿です。

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 日本はほんの30年前まで、羨ましがられるような国でした。
欧米のような超富裕層も極端な貧困層も見当たらず、大多数が中産階層に属して文明の恩恵を充分に享受していました。
ところが、1990年代以降、米國流の新自由主義を採用したために急激に格差が拡大し、時流にのった「高所得組」と落ちこぼれた「低所得組」の差が激しくなり、その日暮らしの働きバチの群れが増えました。
そこへコロナショックが襲い、いよいよその格差を拡大しているのです。

 こうした状況は社会不安を醸成します。世界を見渡せば明らかなように、
それが激しい地域では、不満がマグマとなって、デモ、焼打ち、強奪、暴動、テロが頻発します。食べるものもなく、住むところもない人が、そうせざるを得ない状況だからです。
まっとうな政治家がいれば、最優先に貧者救済策を講じて安寧を取り戻すはずです。しかし、私利私欲の突っ張った悪徳政治家は、強欲金満家と結託して、その動きを弾圧し、時には戦争を起こして民の目を外へくらまそうとするのです。

 我々は今、地球環境の劣化と民の生活の劣化という重大事態に直面しています。ここで道を間違えれば、人類は確実に衰亡し、究極は破滅に向かうでありましょう。もし正しい道を歩むことができれば、輝かしい世界が待ち受けているでしょう。われわれは今、その岐路にあることをしっかり認識する必要があると思うのです。

5 「名声と利欲」の一休み

 さて、人間を動かす欲望の二大エンジンは、何だと思いますか?
それは「名声と利欲」です。その言葉には西部文浄老師の著書によると、こんなエピソードがあるのです。

 中国は北宋時代、政治的には無能といわれながらも芸術的に卓越した徽宗皇帝の治世下でした。
ある時、徽宗皇帝は洋々たる揚子江を見渡せる金山寺を訪れ、眼下の景色を目にされました。するとそこにはスゴイ数の船が帆をはらませて往来し、あるいは舷を並べて停泊しています。
その盛んな景観をながめ、自らの統治する国の繁栄ぶりに満足し、住持の黄伯和尚に尋ねました。
「江上の舟船は幾隻ぞ?」と。
和尚は即座に答えました。
「ただ、二隻」、
「なに、二隻だと?」と皇帝がいぶかると、
「名聞の船、利養の船、それのみ」と答えました。
百隻あっても二百隻あっても「悟りという楼」から眺めると、名を得んがための船と利益を得んがための船と、つまるところその二隻だというのです。

 「名声と利欲」、それこそが人間を動かす二大モチベーションなのですね。それは善用すれば文明の利器を生み、悪用すれば文明の凶器を生むわけです。
そしてもう一つの「大欲」は、つまり「権力欲」ですね。それは「名声と利益」の合体版といえましょうか。
現にお隣りの超大国をみれば、米国と中国のトップは、地球大の覇権を狙って日々闘争を重ねていますね。それはかつて、チャップリンが描いた、ヒットラーとムッソリーニの床屋での滑稽な姿を連想させます。

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 この禅語は、「そんな争いはやめて、一休みしなさい」、という意味ですね。そして「何が大事なのかを、じっくり考えなさい」と諭しているのです。

 名利を求めるのは人間としてむしろ当然のことです。
問題は、それが激しくなり、度が過ぎると、争いになり悪へ転じてしまうことです。名利は主人ではないのに、人間が「名利の奴隷」になってしまうのです。

 天上の造物主は、宇宙に浮かぶ青い地球を眺め下ろして、人工衛星がグルグル巡回し、時には大小のロケットが飛び出し、おびただしい数のジェット機と飛び交うのをみて、コロナを召して人間たちに、「“一休み”するように計らえ」と仰せになったのかもしれませんね。

 因みに申せば、侘び茶の祖・千利休の号もこの言葉から来ているとされています。


次号予告

今号では、現代の最重要課題の中から、とくに地球環境問題と格差適正問題に着目し取り上げてみました。
次号では、「文明とはそもそも何か」を、次々号では「幸福とはそもそも何か」について、ご一緒に考えてみたいと思います。

【毎週土曜朝】発信してまいります。

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「真直美」は、真実を素直に美しく一枚の紙にパステルで書くARTへの試みです。



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