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読書をするには準備がいる #1 〜ミステリを読むには準備がいる〜

読書をするのには準備がいると最近思う。

もちろん、別にしなくても読むことはもちろんできる。
ただ、その読書を堪能し、自分にとって良い時間とするためにはちゃんとした準備がいると思う。
「タイパ」なる言葉が使われる近年、時間はとても貴重で高価になった。
ゲームやテレビ、YoutubeにSNS、趣味からちょっとした暇つぶしまで、世界は娯楽に溢れているし、またそのどれもが無制限に時間を消費することができる。
1日24時間という制限は現代人には正直短すぎる。

そのせいもあってか、〜しながら〜をする。
そんなことはもはや当たり前である。
私もゲームをしながら、別のゲームをするし、なんだったら更にラジオを聞いたり、Tverで見逃したテレビを見たりもする。
ながらのながらのながらである。

そんな生活を送っていると「読書」とはとても高価な娯楽だと思うわけである。
タイパが重視される現代において、読書は非常にタイパが悪い。
見たいテレビや聴きたいラジオを付けながらでは内容がちゃんと頭に入ってこないし、没頭することができない。
〜しながらという行為において読書はもっとも向かない作業の一つだと思う。

だからこそ、読書をするには準備がいる。
読書をするための時間を確保し、その貴重で高価な時間を無駄ではない至高の時間にするために、入念な準備をしたいと最近思うようになった。

今はミステリを読んでいる。
著:小西マサテルの「名探偵じゃなくても」だ。
小西さんはナインティナインのオールナイトニッポンで放送作家をしていて、ナインティナインの大ファンである私もその経緯から前作である「名探偵のままでいて」を手に取り、ファンになった口だ。そのせいか、どうしても著者のことは小西さんと呼んでしまう。
また、本作は第21回このミステリーが凄いで大賞を受賞していて、ミステリが好きなジャンルである私としては色々な要素が重なって読んでみたいと思った作品でもある。
詳細は省くがこの作品は安楽椅子探偵モノである。
認知症を患う老人が探偵役となり、主人公の女性が持ち込んだ事件を解決していくストーリーで、優しく、読みやすい文章と奥深い展開にとても心惹かれる一冊だ。

自分の好みの1冊を読むのであればこそ、その時間は贅沢に使いたい。
なんとなく読むではなく、その世界観に没頭して読みたいと思う。

そのためにはまず場所を整えたい。
個人的には喫茶店が良い。
スタバとかオシャレな感じの喫茶店ではなく、うるさすぎず、静かすぎない落ち着ける喫茶店が良いなと思う。
BGMは控えめで、他の客の声が気にならないように混ざりあうお店がベストだ。
欲を言えば店員が巡回したりせずに、必要な時にこちらから呼べるボタンのあるお店だとなお良い。

飲み物はコーヒーかカフェオレのホットが良い。
ミステリにはコーヒーの匂いがとても似合う。
名探偵にはコーヒーの愛好家が多いイメージがなんとなくあるし、解決編のテーブルにはコーヒーが並ぶことも珍しくなく、その世界に同席できるような錯覚をほんの少しだけ覚えることができる。ような気がする。
それにミステリは頭を使うから、少し甘めにして飲むのがとても良い。
なんだったらケーキセット的なモノをチョイスして、幕間に休憩がてら少しずつ食べ進めるのもオススメだ。
ただし、アイスやソフトクリームの類だけはオススメしない。
ミステリの世界には強い没頭作用がある。
一度世界に入ってしまうと戻ってくるのにはとても時間が掛かるし、「アイスが溶けてしまう」という余計な思考を増やしてしまうことは、読書という時間の価値を損なってしまう可能性があるからだ。

また、服装も重要だと思う。
読書は他でもない自分自身のためだけに使う時間だ。
窮屈を感じてしまうような格好は頂けない。
その世界に没頭できるようにリラックスできる服装が良い。
とはいえ、無頓着も良くない。
その世界に没頭して、名探偵の隣に立った時、恥ずかしくない格好が良い。
気張らない程度のオシャレをして、この時間に挑むのだ。
没頭した世界の先で名探偵の素晴らしい推理に、コーヒーの香りと控えめなBGMが最高のエッセンスとなって事件を解決に導いてくれるはずだ。

読書は時と場所を選ばない。
移動する電車やバスの中、寝る前の布団の中でも本は読めるし、楽しめる。
読書とは元来そういうモノである。
とはいえ、せっかく読むためだけに時間を使うのだから、その時間を少しばかり特別にしてみても良いのではないだろうか。

ほんの少しだけ、私たちは読書をするための準備をしてみても良いと思う。

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