僕はおまえが、すきゾ!(10)
僕と優作と古賀朝子は、古賀さんのリクエストにより「鳥貴族」で飲む事になった。
僕は串カツ屋の方が良かったのだが、優作はブタ朝子のいいなりだ。
僕達二人の生中と、古賀朝子のハイボールで乾杯をした。古賀さんは中々、お酒は飲める方だった。
「この前はごめんねー」と優作は古賀朝子に言って謝った。
「何がですかー?」とキョトンと古賀朝子は答えた。古賀さんの意見に僕も激しく同意だった。何が、ごめんなのだろう。まだ付き合っても無い二人の間に入って、タイタニックを観た事が、ごめんなさいという事なのだろうか。
「だってこの間、折角古賀さんからタイタニックを観ようって言ってくれたのに、こいつの邪魔が入ってさ」
その言葉に、古賀さんは笑顔を返して言った。
「私、タイタニック大好きなんですよー。それに二人より三人で観た方が楽しいじゃないですか。私は良かったですよ」
「ホントに~。それならいいけどさ」、明らかに優作は古賀朝子に不服感を醸し出していた。
優作は、僕に向かってこう言った。
「お前、もう帰れよ。お前の用はもう済んだ」
そう言って、優作は僕の体を押して、椅子から立たせようとした。
僕は僕で鳥貴族を堪能せずに家路に着くのは、不本意だと思い、居座ってやろうと考えていた。
その時、優作の席の前に座っていた古賀さんが席から中腰を浮かせて立ち上がり、言った。
「まだいいじゃないですか。武田さんも一緒に呑みましょうよ」と。
「え?」優作は唖然とした顔を僕ら二人の前に覗かせた。
「俺、ちょっとトイレ」と言って、優作は僕の服の袖を引き、トイレに向かった。
「この前、お前映画館で会ったんだろ?彼女
と。彼女何て言ってたんだよ」
優作は細い目を更に細くして、僕に詰問した。
特に何にも言っていなかったと答えるのが、正解だろう。色々答えるのも、後が面倒だし。
「特に何も言ってなかったよ」僕は、優作にそう答えた。
「お前、もう帰ってくれよ。俺と古賀さん二人にしてくれよ」
分ったよ、と僕は心にわだかまりはあるものの、そう答えた。
席に戻ると、彼女は一人でハイボールを飲んでいた。
「今からこいつ、ちょっと用があるんだって」
「えー、先に帰っちゃうんですか。残念」
古賀さんは、残念そうに頬杖を突いた。
頬杖を突く古賀さんの前のテーブルに両手をバシンと突くと、言った。
「優作に気がないなら、紛らわしい事するんじゃないよ!」
「え?!どういう事ですか?!」
僕は彼女の言葉を最後まで聞かず、テーブルに二千円を置いて、店を出て行った。
古賀さんは、優作の事を本当はどう思ってるんだろう、そればかりが僕の頭の中でグルグル回っていた。
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