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雑談が入ってこない世界へようこそ

わたしはドラえもんを見たことがない。

そりゃぁ、誰だって、と言われるかもしれないけど
そういう意味ではない。
マンガ本を読んだこともなければ、アニメも見たことがない。

そんなわたしでも、ドラえもんについて知っていることもある。
「ぼく、どらえもん」
大山のぶ代が言ってる声は聞いた。まぁまぁ真似もできる。
助けてもらう男子の名前は、のびた。
ジャイアンはボスキャラで歌が下手。

読んだり見たりしてなくても、それくらいなら知っている。
ちなみにスターウオーズも見たことがないが
ハリソンフォードが宇宙で戦う話だと理解している。

そんなわたしが、30年近く前、とても驚いたことがある。
年上の同僚男性が「さざえさん」を知らない、と言ったからだ。
驚いて、言葉が出なかった。
何度か確認したが、彼はドラえもんも知らなかったし、
ハイジも知らなかった。

一度も見たことのないドラえもんを
わたしが少しでも理解しているのは
知らないうちに入ってくる情報からだ。
わたしが興味を持っていないのに勝手に入る情報からだ。

彼は耳がほとんど聞こえない。
彼の住む世界には
鬱陶しい雑音が
入ってこないのだ。

いま、在宅勤務になって、雑音が足りない、という声を聞く。
雑音が大切な情報源だと気づいたということか。
雑音を得るため、zoomをつけっぱなしにする人もいるという。

しかし、目的あるコミュニケーションでしか
情報が入らない状況は、今に始まったことではない。
聴覚に障害があるひとにとって、雑音は意味を持たない。

雑音をつくるための、最初に手にした本。

わたしたちの手話。

※雑談の意味は「本来の伝達目的以外にまぎれ込んで来た余分の情報」として使用したのであしからずご容赦いただきたい。

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