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検察はたくさんの冤罪(えんざい)をでっちあげてきた件(1)

▼西山美香氏の冤罪被害は、彼女に軽度の知的障害と発達障害があり、それが原因だった。知的障害と発達障害に、検事がつけこんだわけだった。冤罪が明らかになり、ほんとうによかった。

▼しかし、検察の冤罪づくりの構図は、被告個人の属性にかかわらない、もっと構造的なものだ。

この現実は、検察の冤罪づくりに携わっていた人々や、巻き込まれた人々の間では、言わずもがなのことである。

その現実が、最近、誰の目にも明らかになった事件が、村木厚子氏にかぶせられた冤罪だった。村木氏が冤罪被害を受けたのは、厚生労働省の局長時代のことだった。

▼筆者としては、この件1つだけをとってみても、なぜ、つい先ごろ、あんなにツイッター上で検察を擁護する声が巻き起こったのか不思議でならない。

おそらく、検察の犯罪を知らない人が多いからなのだろう。

たとえ知ったとしても、あまりにも現実離れしていて、にわかには信じられない検察の非道であるから、リアリティーを感じられないのかもしれない。

▼中日新聞編集委員の秦融氏が、「〈調査報道〉独自情報入手し冤罪立証ーー連載「西山美香さんの手紙」から」という文章を「新聞研究」2020年3月号に書いていた。

これは、「記者読本2020 記者となる君へ」という特集の1本。とくに記者になる人でなくても、マスメディアについて考えるいいきっかけになる企画だ。

▼村木氏の冤罪事件は、2009年に起きたが、細かい文脈が案外知られていない。簡単なまとめ記事が載っていたので、それをまず引用しておく。

〈【郵便不正事件】障害者団体向けの郵便割引制度が悪用された問題で、厚生労働省の村木厚子雇用均等・児童家庭局長(当時)が逮捕され、無罪判決が確定した冤罪事件。その後、大阪地検特捜部の検事による証拠改ざん事件に発展した〉

▼この事件は、担当の検事が、証拠のフロッピーディスクを改竄(かいざん)する、という日本の司法の恥さらしで一気に有名になった。

しかし、より深刻な問題は、こうした検事個人の属性よりも、検察という組織の、組織としての「自白至上主義」である。どんな手段を使ってでも、自白さえとれればOK、という思想が、「自白」ーー具体的には「供述調書のでっちあげ」ーーを「効率的」かつ「恒常的」に推進する温床になっている。

▼村木氏が巻き込まれた事件は、この「供述調書のでっちあげ」が、とてもわかりやすいかたちで衆目に晒(さら)された事件だった。

なにしろ、村木氏はその後、厚労省の事務次官になるのである。官僚の世界のトップになる人でも、こんな冤罪に巻き込まれるのだ。検察が暴走したらとんでもないことになる、という構図が、クッキリ浮かび上がった。

そのでっち上げの手法とは、どんなものなのか。長くなるので次号で。

(2020年7月9日)

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