誕生日には星がおちて

 
欲しいものはないかと聞かれたので、きょうりゅうのほね、と答えた、きみの、顔を見ないまま。

産まれた日
きょうりゅうはどこにもおらず
きみはたぶんどこかで
這いずっていただろう

きょうりゅうのことなど知らず
にんげんという生き物も知らず
ましてやきみのことなど知らず
博物館の夢だけを見ては
うつつ
母のちちを吸っている
彼女がうらやましかった
ほねはただほねであると
気づかぬ彼女がうらやましかった
ろうそくの何十本が燃えつきるまで
ただうらやましかったので
行方
ろうそくが増えるたびに
きょうりゅうのほねがほしい
付録つきの雑誌のように
それをひとつずつ組み立てて
いつかきょうりゅうを産みたい
そうしてあの日の彼女に
身をもって教えてやりたい
ほねはただほねでしかなく
ほねはたしかにほねであるのだと

また産まれた日
きょうりゅうはおらず
きみは
彼女は
どこかで拙く歩行する
にんげんという生き物は
博物館をつくりつづける




#詩 #poem #恐竜

生活になるし、だからそのうち詩になります。ありがとうございます。