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フォーゲット・ミー・ノット(0129)

 
もう怯えなくてよくなったことにいちいち怯えてしまうこと、お母さんと似てないねって言われてどっかほっとしてること、お父さん似なのって聞かれてもそうですかねぇ、って曖昧に笑って答えるしかできないこと、橋の下からひろってきたのよ、って、冗談がほんとうはほんとうだったら良かったなって、思ってごめんなさい、って、思えなくてごめんなさい、AIに育てられた子どもには愛が目に見えるものだって気付かれてしまうね、涙なしには、なんてポスターのつまんねぇフォントがいちばん興味ないね、
感動ポルノ、嫌いだから悲劇のヒロインにならないことだけ祈ってる、消費者でいるの楽だけどもうやめたい、あなたも息もつけないくらい早口で喋るのももうやめてください。
でっかいウサギの着ぐるみが高速のど真ん中にあたしを引きずり出してころそうとする悪夢、を見た日から時折そうやって責め立てられる、からあいつだと思う、さっさとその頭外して顔見せてよ、聞き覚えのない女の声、どうしよう、もしももしも万が一いつかいつか、浮気相手の女がおなじ声だったら。戦慄。 
 
 
螺旋階段を駆け上がって、そしたら今度はいちばん上から真っ逆さまに落ちていく、いこうと思う、それがあたしにできる唯一の反抗なのだ、
血液はただ赤い、だけでよかった、それ以上でも以下でもなかった、あ、うすあかるい青色でもよかったな、
フォーゲット・ミー・ノット、勿忘草のブルー、忘れないで、あたしを、わすれないで、忘れられないためには覚えてもらわなきゃならなくて、知ってもらわなきゃならなくって、(あたしの美しさを)、そのためのブルー、ス、と詩、それから、ぜーんぜんあおくない、瞳。
 
 
出しっぱなしの包丁は幽霊に奪われる前にキレイに洗って丁寧にしまっておいてやる、わらいながらシャワーを浴びてうたいながら髪を乾かしてやる、生活の端々に釘が打ち付けられていったあの煩雑な部屋で、愛の実体がつかめなくてよかった、愛だけは呪いにならなくてよかった、よかった、ほんとうによかった。
 
 
 
 
 
 
 
 






生活になるし、だからそのうち詩になります。ありがとうございます。