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シー・サイド・アップ


たまごを割るときのきもちでいつもいられたらいいのに、と思う、いままでを終わらせるような、これからをつくるような、きもち。
海、あなたも、満ち引きのときはこんなきもちですか、と、黒いおちゃわんにちゃぽん、とたまごが落ちて白身が波をつくるとき、いつも聞いてみたくなる。
おこがましい。いままでもこれからもみんなくるくる巻いてしまって、たまご焼きにしてしまえばいいよ、って、答えてほしい、海はわたしに、いつも優しくなくっていいの。


たまごは好きだし、あおいたまごを料理するひとのちいさなアニメになりたかった。
かぱ、と当然のようにあおいたまごを割って、しろい牛乳をとぽとぽと注いで、しろいお砂糖を入れて、かちゃかちゃと菜箸でかき混ぜて、丁寧に、丁寧に焼いては巻いて、みずいろのたまご焼きを上手につくる。そこでシーンは変わる。
夢だったのかしら、と、目覚めて、カーテンをしゃあっとあけて、目玉焼きをつくるために、じゅう、とフライパンにたまごを落とす、
ああ、黄色でよかったわ、と、ほっとしたようながっかりしたようなきもちで、トーストのうえにそれを乗せてかぶりつく、今日はいいてんき、と、つぶやく、あおいあおい鶏は、きっと綺麗なんだろうなとぼんやり考える、
窓の外には、いつもどおり、いつもどおりの、あおい太陽がある、それだけの、ちいさなおはなし。

















生活になるし、だからそのうち詩になります。ありがとうございます。