せかいいちおだやかなカウントダウン

 
真夜中、の、静けさ、規則的にきこえる音がわずらわしい、重たい身体をぎこぎこと動かして秒針だけをもぎとって食べてしまったから、おなかの中でずうっとかちかちと音がしている。時限爆弾みたいだと思った、あと何年、何ヶ月、何日、何時間、何分、何秒後か、その時が来たらきっとぱぁんと爆発する爆弾、それでも壁掛け時計の鳴き声よりは心地よかったので心臓はゆっくりと睡眠の準備をしている、はじめからここにあるのが、ただしい姿だったのかもしれない。

かち
かち

たとえばアイスクリームを口に入れるしゅんかん

かち
かち

たとえば包丁の先端が胸にふれた刹那

かち

たとえばきみと抱き合ったそのとき

かも、しれないから、離れてもいいよと言うと、きみは少し笑ってシャツをめくりあげる、そこには白くてたいらな腹があって、誘われるまま耳を寄せると、ぼくよりもずっと繊細でちいさいけれど、かち、かち、と、音がした。

 
(あなた、きっと、ひとの生とか、死、とか、じょうずに知らなかっただけなの)

 
心音を聴いたときのように眠たくなって、ぼくは意識を手放した、きみの手のひらがぼくの頭を撫でる、モノクロのつまらない部屋では、夜通し、時計がちくたくと鳴いていたらしい。







生活になるし、だからそのうち詩になります。ありがとうございます。