見出し画像

アートは誰でもつくれる。だけど価値のあるアートをつくるのは難しい。

石川県のガラス工房カレットさんと「みじんこ」のコラボ作品「みじんこっぷ」が販売開始しました。

みじんこショップに、いろんなシリーズを公開しているので、ぜひのぞいてみていただけると嬉しいです。

ほかにも、文字の影が落ちる照明も制作進行中です。

画像2

日本のものづくりとのコラボは、もう5年くらい前からずっとやりたかったことで、実は2018年のSWATCHの銀座ビルでの個展の時にも、ものづくり企業の方とご相談させていただいていました。

ぶっちゃけ言うと、相談したのはコロナ倒産したゴム風船屋さんの「コロナ父さん」です。

風船を使った大型アート作品をつくって展示できたら、華やかで楽しそうだと思ってたんですが、ゴム風船だと膨らんだ状態が長く維持できず、コラボまでは実現できませんでした。(この個展の時は企画書を5回くらい出し直したんだよ)

安くつくろうとする呪いから離れたい

自分自身もそうなんですが、ものをつくる時によく出てくる言葉は「こうすれば安くつくれる」です。原価を安くしたり、たくさんつくったりすることで、販売価格を抑えて安くするっていう考えですよね。

もちろん、コストのことは考えないといけないのですが、それ以上に考えないといけないのは、価値を上げて高く売るっていうことだったなって今は思うのです。

安く売ろうと考えていると、なんとなく創る時に「安いんだからこのくらいでいいか」みたいな考えが生まれちゃうんですよね。100万円で売れてるんだったら、できる限り丁寧に質を上げるって考えると思うんです。

実際にいくらで売るにしても、「丁寧に質を上げる」っていう思考グセがついていないといけなかったんです。始めた頃は特に、作品なんてぜんぜん売れなかったので、口癖のように安く安くって考えていました。ちなみに今もその思考グセが抜けていません(つらい)。

アートが売れるのは安いからじゃない

アート作品って安いから売れるわけじゃないんですよね。安くて売れるなら、安いものは全部売れてないとおかしいです。アートは作品の「質」で売れるんですね。だから質を上げないといけない。アートを買う人はアートが安いから買うわけじゃなく、その作品の質が高く、買える範囲だから買うんです。質の高いアートが安いと売れますが、質が高くなければどんなに安くたって売れません。なのに、つい「安ければ売れる」って考えてしまう。ここに大きな誤解がありました。

なんでもそうですが、いい仕事が次の仕事を呼んできてくれるはずで、それはアートのほうも同じです。安くても価値がないものは売れない、そこを肝に銘じないといけなかったです。

画像1

ギャラリーは売ってからが仕事

アジア最大級のオンラインギャラリー「タグボート」代表の徳光さんが言ってたのですが、ギャラリーは作品を売ってからが仕事なんだそうです。

アートや手作り品の販売をするプラットフォームだと、モノが売れたらおわりですよね。そこで取引は完了です。でも、ギャラリーの場合は、売った作品の価値が上がり続けるように、作家をプロモーションしつづける必要があるんです。

現代アートの作品がオークションで〇億円みたいな高額で取引されているのって見かけますよね。中古品って普通のものは価格が下がるはずなんです。でも、人気のある現代アート作品は価格が上がります。価値があると世界で認められれば、作品自体が通貨みたいな役割を持つということになります。

ギャラリーが作家を推し続けることで、作家の価値が世界的に認められれば、その作家がつくる作品全ての価値が上がるということ。取り扱う作家がそうなるように、ギャラリーが責任をもって下支えするっていう感じなんですね。

詳しくはギャラリータグボートのオンラインサロンのコラムを見ていただくと、現代アートの状況がくわしく分かるのでおすすめです!

とりあえず無料で読みたい人はアーティスト向けのインタビュー記事をどうぞ。

アーティストには誰でもなれる、だけど価値のあるアートをつくるのは難しい

アーティストは資格職業ではないので、誰でも今すぐアーティストになることはできます。でも、つくった作品がいきなりすごい価値になるってことはないです。そういう人もいるかもしれませんが、ニュースになるほどレアなケースだと思っています。

そして、それでいいんだと思うんです。価値をつくるのがカンタンだったら、価格破壊過ぎるじゃないですか。世界の通貨になるほど認められる価値を生み出すのは、簡単じゃなかったはずなんです。現在、トップアーティストとして活躍している人のすべてが、すごく努力も苦労もしているはず。

価値は点ではなくて線でつくる

アート作品の価値はどうやってつくるかというと、私は点ではなくて線でつくるものなんだろうなと考えています。点というのは、作品を1つ作った、売りました、っていう一時的な販売みたいなことです。線というのは、そういった販売も含めて、時間をかけて価値を上げていくというイメージです。

作品Aができた、Aのおかげで考えが発展して作品Bができた、Bによって考えが深まってCができた、みたいな積み上げ式が「線の価値の出し方」です。

点の考え方は、今日は花を描いた、明日は文房具を描く、その次は海を描いてみよう、みたいに、個々の作品がバラバラに存在するケースです。これだと作品単体での勝負になってきちゃうので、なかなか全体の価値が上がっていきません。

作品をつくればつくるほど、考え方を深めていくこと、作品のバリエーションを増やしていくこと、創作の技術や知識を覚えていくこと。今はぜんぜんでも、線で価値をつくっていることを考えて実行できれば、徐々に価値はちゃんと上がっていくと思っています。

画像3

インスタントに判断がつきやすくなったからこそ時間がかかることに価値がある

現代アートの価値って既存の価値観とかなり違っていて、原価や技術はそこまで作品価格に反映されません。ロッカクアヤコさんとか段ボールに描いてますからね。画材の原価でいったらすごく安いはずです。

とはいえ、特に名前がまだない作家の場合は、素材の原価も価格として考慮されると私は考えています。というか、作家名だけで価値を判断しきれないので、素材やCV、作品の見栄え、コンセプトとか総合的に見て、買う人が価値を考えると思うのです。

現代アートは作品の「見た目」はそこまで価値に反映されていないところもおもしろくて。見た目の部分ってその作品価値の氷山の一角でしかないんですね。見た目が素晴らしかったとしたら、それ以上に素晴らしいものが作品の見えない部分に埋まっているということなのです。

インスタのように1枚の写真の見栄えがいいことや、Twitterのように140字でぐっとくるテキストが書けるのとは違い、現代アートは鑑賞者が価値に気づくのはそこそこ難しいです。見る側も割と考えないといけない。そこが現代アートの魅力で、見栄え以外の価値を自分で発掘できるようになると、目に見える世界がすごく変わるなぁと思っています。

目だけで評価できないのが現代アート

現代アートの作家さんと話すと、すごく勉強してて知識が深いんですね。作品の下支えをする思考を磨いた上でこの作品になっているんだなぁっていうのがとてもよく分かります。

見えるものだけで価値を評価するのが難しいのが現代アートです。でも、それは一般に理解がしがたいっていうのもあるはずです。私自身もアート畑の出身じゃないので、最初はぜんぜん意味が分からなかったんですが、普通に暮らしていて現代アートのおもしろさを学ぶ機会が、日本にはほとんどないんですね。海外と比べると、町中にアートが置かれていることも圧倒的に少ないです。欧米やニューヨークでは、町を歩いているだけでいろんな彫刻がごろごろしてて、日常で見かける機会がそもそも多いです。

そういう環境から日々、アート教育されている場所と日本では、アートに対する考え方が違ってきて当然です。日本でも世界でも「価値」と認めてもらうにはどうしたらいいか。作品の向こうに多くの価値が眠っていることをどうやって伝えたらいいか。

画像4

線の価値を考え、価値を上げ、価値を伝える努力をしていくっていうのを改めて考えたよというまとまりのないお話でした。

読んでくださってありがとうございます!

応援してくださる方は「みじんこっぷ」をシェアしてくれると嬉しいですよ!

みじんこっぷは、コップだと思うと高いはずです。アートだと思うとめちゃくちゃ安いはずです。

まずは一生寄り添えるアートみじんこだと分かってもらえるようにがんばらないとです!

画像5


ここまで読んでくださってありがとうございます! スキしたりフォローしたり、シェアしてくれることが、とてもとても励みになっています!