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タグボートアートアワード入選作を支える日本のものづくり技術~堀内製作所

ありがたいことにタグボートアワード16thの入選のご連絡をいただきまして、2021年4月20日(火) - 2021年4月25日(日)まで渋谷のヒカリエで展示参加できることになりました。

ヒカリエ、いつか展示したいなと思ってた憧れの土地だったので嬉しいです。

私がタグボートの所属作家だから入選しやすいんじゃないかと思うかもしれませんが、私、タグボート所属になってからこのアワードに出して落ちたことがあるんですね。なので、タグボート作家は無条件に受かるっていうわけではないです。

今回出した作品は、2020年12月に最初の試作をしていたアートランプです。

その後、いろいろモゴモゴした結果、2つの業者さんに「ロウソクバージョン」と「照明バージョン」をそれぞれお願いすることになりました。

今回、入選のご連絡をいただいたのはロウソクバージョンのほうです。(照明はまだ開発段階)

ご協力いただいたのは東京都墨田区のものづくり企業、堀内製作所さんです!ありがとうございます!

シェアメイトに試作してもらったバージョンは、ステンレス0.5mm厚でしたが、堀内さんと相談したところ、厚さはもう少し厚いほうがきれいにできるということで、今回のものは1mmくらいの厚さになっています。

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スマホを乗せると明かりがくっきり。本体の文字が反転しているので、影になったほうが文字が正位置で見えます。

タイトルは「きっと死ぬ間際に聴こえる景色」

オノマトペランプ_ロウソク版_デザインBsize変更

データはこんな感じなのですが、文字(世界中の笑い声を表す音)だけで構成されています。

レーザーカットでどこまでできるのか調査用にこんなデータもつくっててですね。

オノマトペランプ_ロウソク版_デザインA

こちらはデータファイルがレーザーカットの機械で読み取れないということでナシになりました。

しかし、かなり細かく抜けることが分かりました!

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レーザーカットされた状態はこんな感じです。ただ切っただけだと、よく見ると細かいトゲトゲができちゃうんですね。これみたいに細かい物をレーザーカットするとどうしてもできてしまうようです。

今回、かなり安い金額で引き受けていただいているので、トゲトゲ取りまでさせるのはさすがにちょっと、、と思って、自分でやるので!とお伝えしてたのですが、すでにちゃんとした機械でかなりきれいにしてくださってました(ありがとうございます!)。

家に帰って一応、状態をチェック。シェアメイトがものづくり系なので、やすり貸して―と言ったら、なんかすごい便利な装置を貸してくれました。

「なに削るんですか?」
「ステンレス」
「じゃあ、このダイヤモンドのやつがいいですよ!」
というアドバイス付き。ものづくりの人たち、みんな親切。

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試作機の時にロウソクを立てていろいろ実験してみたのですが、ステンレスで囲まれていると、上は熱くなるけど、周りはあんまり熱くならないんですよね。あと、火が倒れてステンレスの筐体にぶつかっちゃっても、塗装が溶けるとか大変なことにはならないようでした。(安全性、だいじ!)

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おもしろかったのは、影の出方なんですね。長いロウソクを使うと、ロウソクが長く残っていると床に近い部分に影が落ち、ロウソクが短くなると影が上に移動するんです。

寿命がまだたくさん残っている時には地面で暮らし、寿命がなくなる時に天に上るような感じでとても気にいっています。

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あとは火ってとても特別なんだなと。この照明を使う時には、電気を消して暗くしないと良さが出ないですし、使いながら騒ぐような感じでもないです。だから、自然に静かに火と影を見つめるようになります。なぜか静かに火と影を見てしまうんです。

私はこれまでずっと、鑑賞者が作品に関わることで作品が変化するような体験型の作品を多くつくっていたのですが、この作品を味わうために、見る側が「見るための環境」を整える必要があるので、自分のアーティストとしてのコンセプトもちゃんと乗ってるなぁと感じています。

義足照明がつくりたい!

この作品の先には、足型の照明をつくりたいというのがあって、そっちは今回の作品よりももっとコストがかかる感じです。

3Dスキャンとモデリング、3Dプリンターでの出力と照明の設置とかを合わせると、2つつくって100万円ちょっと、みたいな感じでしょうか。1つでも70万円くらいかかりそうな予感です。

この構想ではまだ、義足として使えるほど強度がないはずなので、これをもとに義足ダンサーがつけて踊れるくらいのものがつくれたらなと思っています。

照明をつけるのが思ったより難しいので、思うようにはできないかもしれません。かなり強い光を当てないと影ってうまくできないんですね。ただ、もしも義足の人がこの作品を身に付けてくれたら、その姿はとても美しい気がするのです。それが誰かの希望の光になるといいなと思います。

実はこの義足照明は、ある助成金でつくれないかと思って応募してたんですが、そっちは落ちてしまいました。他にもなんか機会があれば出してみたいと思っています。助成金、キャリアの初期に出してましたが、国民の血税なので当たり前ですが、実績がないと取れないんですよね。

文化庁の助成金のほうが獲りやすくなってるかもなので、2021年にまた募集があれば、そっちで出してなんとか実現させたいなと思っています。

ちなみにエンジェル投資家の方でアートが好きそうな方数人に、こちらのサイト経由でメッセージを送ってみたこともあるんですが、まったく連絡なかったです。(たぶん説得のしかたがよくない

ただね、今回のアワードの審査員に家入一真さんがいらっしゃるんですね。もしも表彰式にご本人がいらしてたら、エンジェル投資家でアートが好きそうな人いますかって聞いてみたいなと思っています。あと、どうやって説得すればいいかを。家入さん、来てくれるかな。。

お金をひっぱってくる方法がわからない!

リアルなお金の話をしましょうか

今回の照明は2社合わせてだいたい22万円の制作費がかかっています。全部で5つくらいつくれればいいですが、初めてつくるものなので、まだどのくらいできるかは分かりません。試行錯誤も多く手間もかかっているので、かなりご無理をおかけしている感じです。

創作って「がんばったで賞」があるわけじゃないので、良い物をつくって結果を出さないと、なかなか次のチャンスにはつながりません。

アートの場合の結果は、分かりやすくは何かの賞を受賞すること、展示発表機会が得られること、買ってもらえること(リーディングコレクターだとさらに強い)、なんらかのオファーがもらえること、などでしょうか。

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アート作品を販売する場合、ギャラリーの手数料は30~60%くらいです。リアル展示ができるところは50%なところが多いですね。海外の超有名ギャラリーはギャラリーが9割取るみたいな話も聞いたことがありますが、噂なので実際は分かりません。オンラインだと10%みたいなプラットフォームもあります。

ギャラリーでの展示を見る時には、私は「アーティストに入る金額」を気にしてしまうので、だいたい表示価格の半額だと思って作品を見るんですが、そうすると「うおおおー、この作品でこの金額なのか、、しんどい」ってことがよくあります。材料費とかつい考えちゃうのよくないですね。作品を楽しんで見るように心がけたいです(無理だけど)。

販売手数料を分かりやすく50%だとすると、今回かかった22万円を回収するには、つくった作品が44万円で売れないといけないことになります。5点つくれたら8万8千円ですね。全部売れると仮定した話ですが。

ただ、これだと自分の生活費や作業費が出ないですよね。あくまでトントンになるだけです。じゃあ自分の作業費が10万円出るように、と考えるとすると、64万円で売れないといけないことになります。半額が自分に入るとすると32万円、うち制作費が22万円です。

作品は5点できるとしたら、1点12万8千円になります。

全部売れればいいですが、そうでなければ赤字+在庫ということになります。この赤字+在庫のサイクルが、制作を「つづける」という意味ではとても重荷になるので、売れなくても損をしない、作品ができるだけで次のチャンスにつながるように、っていうのを割と自分は意識しています。

照明については全額ではないですが、こちらの助成金をいただけているので、自分が出す分は5~6万円くらいで済んでる感じです。

借金より助成金で制作できることのメリットは、お金の面だけでなく、助成金を出してくれる団体が広報をしてくれるところがあります。海外のアーティスト・イン・レジデンスとかもそうなんですが、無料とか費用が出るところの方が、カタログをつくったり、展覧会をやってくれたり、めちゃくちゃいろいろやってくれるんですね。

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最近、アートの市場が盛り上がってるせいか、いろんなところから連絡がきますが、アーティストがお金を払う側(お客さん)になってるところは、それで費用が賄われているので、あんまり広報をしてくれなかったり、そもそも作家個人を推してくれるところじゃなかったりします。

創作活動を継続すること、活動を発展させていくことを考えていくとしたら、アーティストは自分がお金を払わなくて済むところと組んだ方が絶対にいいです。アーティストからお金を取らないということは、作品を売ったり、どっかからお金を引っ張ってきたり、主宰する側もけっこう頑張らないといけないです。でもそのくらい本気なところと組まないと、創ることで疲弊していけば続けるなんてそもそも不可能ですから。

創ることは人を救うと思うのですね。だから創る人が創りつづけられないとしたら、それは社会が弱っている証拠なのではないかと考えます。このへんはまたいずれ詳しく書こうかな。

ちなみに、業者さんを教えてくれたのは、東京都のものづくりを知り尽くしたコロナ父さんです。キャリアの最初の頃からずっとお世話になりっぱなしです。父さんのおかげでスカイツリーのあるソラマチで展示とワークショップができたこともありました。

なんかちゃんと実績つくって、恩返ししたい。なにより、ちゃんと「高い価値のある」アート作品になるように、作家としての自分の価値を上げ続け、日本のものづくりの人たちとコラボ制作していきたいですね。

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