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「夜の案内者」生命であるための死2
「蛇の町を見ることはできる?」
「中心部にこの町で一番高いビル塔がある。その上から見えるよ」
「案内してくれない?」
「ん、僕は現場に行きたいんだけど、ちょっとだけならいいよ」
メカリスはほかのリスたちが向かうのを見て、短い時間だけ案内してくれることになった。アサとネズミはメカリスの後についていく。ビルの入り口は栗鼠の大きさに作られているのでかなり小さい。アサは入れるがネズミが入り口を通るのは難しそうだった。
「私はここで待っていますよ」
アサとメカリスはビルにあったエレベーターを使い、最上階へ向かう。建物の中央部にあるエレベーターからは外の様子は一切見えない。栗鼠たちが乗っているのが外から見えないように配慮されているのかもしれない、とアサは思った。エレベーターの扉が開き、二人は外に出た。
メカリスに促され、エレベーター正面の窓から外を見ると、金属の壁の向こうにある蛇の町が見えた。蛇の町には黒い土とわずかな植物があるのみで、文明的な建造物は何一つなかった。蛇たちは絡み合い、お互いを食らい合っている。ほかの蛇を飲み込んだ蛇は動きが鈍くなり、別の蛇に噛みつかれて千切られていく。
壁に押し付けられた蛇の上に蛇が乗り、さらに別の蛇が重なって壁を越えそうになる。壁にもたれかかった蛇の上を小さな蛇たちが登っていく。母子かもしれない。警報が鳴り、境界壁の上に出た母蛇の頭をレーザー光線が半分に切り裂く。それを見た子蛇は母蛇の身体をたどって引き返すが、地面に近いところで別の蛇たちに飲み込まれていった。
別のレーザー光が今度は縦に母蛇の頭部を切り裂く。光線はそのまま町を囲う境界壁を割り、壁に亀裂が走った。亀裂に向かって別の大蛇が体当たりすると、壁がねじ曲がったようだ。隙間から蛇が栗鼠の町をのぞく。そこにレーザー光が照射され、境界壁の亀裂がさらに深くなる。
「ねえ、あのレーザーって自動照射なの?このままだと境界の壁が壊されちゃいそうだけど」
「まずいね。壁には当たらないようになっていたのに、さっきの侵入でプログラムの一部に問題ができたのかも。このままでは大惨事になる」
壁の亀裂に気づいた蛇たちは、体当たりを繰り返してさらに壁を歪ませる。蛇の身体が壁に打ち当たるごとに、金属の壁がひしゃげて亀裂が広がる。そこに顔を突っ込んで侵入しようとする蛇。さらにその蛇の上から壁を抜けようとする蛇が現れる。侵入する蛇に向けてレーザー光が照射されるが同時に壁にも傷が入り、蛇に押されて倒れるように境界壁は栗鼠の町に落ちてきた。町に再び警報が鳴り響く。
「大変だ。僕は行くよ!」
メカリスと一緒にエレベーターを下りる間、アサはメカリスに聞く。
「蛇と戦うつもりなの?」
「もちろん。だけど、前と違ってやつらはメカを飲み込まない。近づいて自爆することはできるけど、やつらの皮膚は分厚くてレーザー光でないと外からは破壊できないんだ。体内に入れれば、なんとか」
地上に着き、ビルを出て走り出そうとするメカリスをアサは引き止める。
「待って。飲み込まれたいなら、方法はあるかも」
「えっ、どんな?」
「でも、飲み込まれたら、あなた生きられないよね、いいの?」
メカリスはアサの足元に駆け寄って立ち上がる。
「死ぬっていうのは生き物の特権だよ。僕は町のために戦って、生き物として死にたい」
境界壁近くのビルが倒壊する激しい音が響き、地面が揺れる。栗鼠たちが境界壁と反対の方角へ逃げて行く中、壁に向かっていくリスたちがいる。彼らはみんな機械なのだろう。アサはメカリスに言う。
「蛇は温度を感知するから。見た目が似てるかより温かいかどうかが大事」
「熱を出せばいいのか、分かった」
メカリスの目が赤く光り、身体からモーターが回転するような激しい音が聞こえる。
「後ろ足を動かしているエンジンをオーバーヒートさせる。これで普通の栗鼠たちと同じくらいの温度になったはず。じゃあ、行ってくる!」
メカリスは前足を地面に下すと同時に壁に向かって走り出す。
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小説投稿サイト「エブリスタ」で連載中の「夜の案内者」の転載投稿です。
物語のつづきはエブリスタで先に見られます。
▼夜の案内者(エブリスタ)
https://estar.jp/novels/25491597/viewer?page=1
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