日本最大級のオンラインギャラリー代表に「多様化する世界のアート」について聞いてみた
「アートで食べていけるアーティストの数を増やす」ことを掲げ、17年つづくオンラインギャラリータグボート。
徳光さんが代表になったのは12年前です。現在でも積極的に新規取り扱いアーティストの発掘を行っているタグボート代表の徳光さんに、アートにまつわるウラ話を伺って来ました。
今回のテーマは「多様化する世界のアート」です。
↑ みじんこの査定をする徳光さん。
Ouma(以下、O)「好評をいただいてるインタビューシリーズ、今回で最終回です! 最後は海外のアート事情とアート業界の未来について聞かせてください。まず、海外と比較すると日本のアートマーケットの今ってどんな感じなのでしょうか」
徳光さん「日本のアートマーケットも頑張ってるし広がってるんですが、中国や欧米と比べると日本との差は開く一方ですね」
O「そうなんですか?」
徳光さん「はい。海外の成長率と日本の成長率を比べると、日本はぜんぜん伸びてないんだね。特に、海外ではアートの価値はみんなで上げるものっていう認識があるけど、日本ではその辺りの意識はちょっと薄いかもしれないね」
O「自国のアートの価値をあげようっていう意識が、海外のほうが強いんですかねぇ」
徳光さん「そうだね。あと、セカンダリーについては完全に景気と連動するね。マーケットの拡大や発展を考える上で、アートに関する情報が日本にはそもそも少なすぎるっていうのもあるかな。手段としてのネットはもっと使ったほうがいいと思ってる」
O「アートに関する情報がないっていうのは、たとえばどういう情報が少ない感じですか?」
徳光さん「作品の情報や作家の経歴、顔写真やホームページ、販売価格とか展示の様子、インタビュー、作家が現在考えてること、作品の作り方、なんでもだよ」
O「でもライブビューイングとか、オンラインの情報も増えてないですか?」
徳光さん「増えてきてるけど、まだまだ全然。もっと情報が出てくれば、日本のアートももっと活性化すると思う」
O「アーティストの情報が増えたら、偶然、見つかるようなチャンスも増えますかね? そういえば、ギャラリストでアートコラムを定期的に書いてる人ってあんまり見かけないかも」
▼徳光さんの現代アート関連コラムはこちらから。
徳光さん「なにか言って叩かれるのが怖いっていうのもあるかもしれないね」
O「専門家だと特にそうなのかも。個人の感想でも"好き"くらいしか言う人がいない気がしますね、ネットだと。ネガティブコメントは微妙ですが、ポジティブに自分が学んだこと、作品に対していいなと思ったことはもっと発信してもらえると、作家としては嬉しいです」
徳光さん「センスがないって思われたらイヤだ、っていうのもあるかもね。そういうんじゃなくて、この絵は明るい雰囲気だから好き、とか素直な感想がもっと言い合えるといいよね。あと、投資としてのアートっていうのも言いたがらないかも」
O「投資としてのアートは、現代アート売買の側面として確実にある部分ですけど、お金の話を嫌うところはあるかも。これから情報を出していく上で気をつけることってありますか?」
徳光さん「なにより分かりやすさだね。難しい言葉を使うんじゃなくて、誰にでも分かるように伝えることが大事。海外のアーティストはコミュニケーション能力が高いんだよね。情報とコミュニケーションは量が大事だから、どんどん伝えていけるといいね」
O「なるほど。現在、世界的にアートが盛り上がってるエリアってありますか?」
徳光さん「今は圧倒的に中国かな。上海とか深圳(しんせん)とか」
O「コロナの影響ってありそうですか?」
徳光さん「現在はイベント主催側が対応してるし、人の出も減っちゃってるけど、一時的なことだと思ってる。人間の根源的な欲求を考えると、人はコミュニケーションも含めて密になっていくんだよね。たとえば、311の震災があったけど、自分たちの今の生活ってそこまで変わってないよね?」
O「ああ、そうですね。当時は節電しないとって思ってたけど、改めて言われてみると前と同じになっちゃってるかも」
徳光さん「そうなんだよね。一時的にオンラインが増えても、やっぱり作品はリアルで見たいでしょ?」
O「ですねえ。今後は変わるのかもしれないですけど、まだ今の技術ではリアルのほうがアート鑑賞は楽しいかなぁ。アートのトレンドみたいなのってありますか? 今流行ってるアートみたいなのは」
徳光さん「トレンドはあんまりないかな。新しいメディアは増えるけど、それが主流になるかは分からないよね。世界的な作品のトレンドっていうのを言い切るのは難しいかもしれない。アートは人によってつくられるものだから。たとえば、最近の新入社員の特徴を日本全体でひとまとまりで言うのって難しくない? いろんな人がいて当然だから」
O「ゆとり世代とか言うけど、中身をちゃんと見たら、ゆとってる人だけじゃないっていう感じですかね?」
徳光さん「そう、特にアーティストは、これまでにないことをやろうとしてるから、トレンドみたいにどこかに収束するよりも多様になっていくんじゃないかな」
O「確かに、なるべく同じものは避けようとするかも」
徳光さん「どんどん複雑化、多様化していって、アートの文脈っていうのも、そこまで意識する必要がなくなってくるかもしれない。批評家が文脈をつくることはあっても、これが流行ってるみたいなのはなくなっていくと思うよ」
O「文脈を意識しろっていうのは、アート系の本で見かけることがありますが、文脈は重要なわけでもないんですかね」
徳光さん「大事ではあるけど、もっとアートが多様化していく感じかな。よく、歴史に残るのがいいアートだとかって言うじゃない? だけど残らないのがアートじゃないのかって言ったら、そんなことないよね。そういう定義自体に意味がなくなってくるんじゃないかと思ってる」
O「アートへの関わり方、アーティストとしての生き方も、もっといろいろでいいのかもっていう気がしてきました。週末アーティストでもいいし、80歳から始めてもいいし」
徳光さん「美術史の文脈が分からなければ作品がつくれないかって言ったらそんなこともないし。やってみたいって思ったら、まずは創ってみてほしいよね!」
O「徳光さん。長い時間、ありがとうございました!
徳光さんに聞いてみたいことがある方はこの記事にコメントをいただけると、次に会えた時に聞いてきますよ!」
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