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コロナ倒産した僕が、新規市場を求めてフィリピンに行った時のこと【2話】

 僕のやっていたゴム風船は子ども向けの商品だ。少子化の進む日本では、いずれ厳しくなると、家業を継いだ時から考えていた。

 僕が考えていたことはいくつかあって、一つは風船のこれまでとは違う市場をつくるということ。もう一つは、他の国にそのまま展開できないかということ。僕の会社の工場はもともとタイにあって、タイでつくった風船を日本に運んでいたんだ。だから、タイからそのまま他の国に運べたら、コストは変わらずに展開も可能かもしれないって思っていた。

 僕は仕事の合間をぬって、海外展開できる場所を探しつづけた。その時、気になったのがフィリピンだった。

 フィリピンは人口も増えていて、人口ピラミッドが昔の日本と近く、三角形をしていた。簡単に言うと、子どもが多くて高齢者が少ないってことだ。風船事業は父の代が一番うまくいっていたから、その時の日本と同じような人口構造のフィリピンなら、将来性があるんじゃないか。まずは現地に行ってみよう。ネットでは分からないことが、現地で感じ取れるかもしれない。僕はすぐに飛行機のチケットを取った。

 なにかを始める時ってとてもワクワクするけど、同時に不安もある。僕はマニラ行きの飛行機の窓から、青く広がる空を見つめた。眼下に広がるふかふかの雲を見ながら、このチャレンジが風船の未来に繋がりますようにって、心の中で一生けん命お願いしてたよ。

 2014年4月、こうして僕は市場調査のためにフィリピンの首都マニラにやってきた。マニラには巨大なショッピングモールがいっぱいあって、その賑わいは、まるで週末のイオンモールみたいだった。

 親子連れの楽しそうな会話が聞こえてきて、歩いているだけで人の熱気がすごかったんだ。発展していく町のエネルギーを肌で感じるみたいだった。

 僕がモール内を歩き回っていると、おもちゃ屋さんがあった。入ってみるとそこには風船が売られてるじゃないか。彼らを見つけた僕の心は、風船みたいに跳ね上がる。やめてくれよ、遠くの地で友達を見つけたような気分になるじゃないか。こんなところで会えるなんて、おまえ、元気にしてたかって。

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「この風船ってどのくらい売れてるんですか?」

 直球で聞いてみたら、お店の人が親切に教えてくれた。なんと、そのお店の風船だけで、月に日本円換算で20万円くらいの売り上げがあるらしい。そのおもちゃ屋さんはフィリピン国内でも有名なチェーン店で、国内だけで100店舗くらいお店があった。単純計算したら、風船だけで月に2000万円くらいの売り上げになるってことだ。

 なんでフィリピンでこんなに風船が売れてるんだ?

 僕はフィリピンのことを歴史も含めて調べ上げた。フィリピンは7000以上の島から成り立っている国なんだけど、もともとはスペイン、その後はアメリカに植民地化されている。スペインが領有宣言したのは1564年のことだし、どうやら長い歴史の中で西洋の文化が根付いたようだ。

 たとえば、フィリピンではバースデーやクリスマスパーティの飾りつけに風船を使う。海外ドラマでよく見かけるだろう? 部屋を風船でいっぱいにして音楽かけて、みんなでダンスする。フィリピンもあんな感じなんだ。

 日本ではパーティに風船を使うっていうのはあんまりない。これは日本にはない風船需要だ。フィリピンにはチャンスがあるかもしれない! 

 僕は競合調査と称して、フィリピンでいろんな風船を買い集めた。単に風船を買えるだけで嬉しかったのかもしれない。どの風船をどれだけ買って帰ろうかって考えるだけで、僕の心はすっかり浮かれていた。たくさん買いすぎちゃったら、友達の子どもに分けてあげればいいや。僕は風船たちをカゴの中に放り込んだ。

 フィリピンで売られている風船で一番多いのは中国製のもの。ほかはマレーシア産とタイ産のもので、日本で売るよりもフィリピンで売られているもののほうが高かった。

 それなら、タイの工場でつくっているものを直接、フィリピンに運んで売ることができるんじゃないか?

 僕はお店となんとかアポを取ろうと、メールや電話を繰り返した。だけど、なかなか連絡がつかない。実際に現地に行っても担当者がいないなんてこともあった。

 そんな時、タイのビジネスパートナーがフィリピンに知り合いがいると教えてくれた。それがのちに現地エージェントとして動いてくれることになるイルカさんだった。

コロナ父さん

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1話目「コロナ倒産した僕が、破産を決意した日のこと」はこちらから。

このお話は、実在するゴム風船屋さんからお話を伺い、小説風に読みやすく脚色した物語です。

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