餓死した女性アーティストの遺作を巡る現代アートミステリー「手と骨」33
【エピローグ】
三ヶ月の韓国滞在を終え、志穂は福岡に戻った。スーツケースを受け取って税関を抜け、手早く真山にメッセージを送る。
「着いたよ。荷物も受け取ったところ」
到着ロビーに出ると、ニューヨーク行きの便に遅れが出ているというアナウンスがあった。
「福岡発ニューヨーク行き、JC三一〇便は悪天候のため現在、遅れが生じております。ご利用のお客様には大変ご迷惑をおかけしておりますが、今しばらくお待ちくださいませ」
志穂はスーツケースに手をかけたまま、通路の真ん中で立ち止まる。視線の先には出発ロビーに向かうエレベーターがあった。
真山から電話がきた。
「お疲れさま。駅まで迎えに行くから、何時頃に着きそうか連絡ちょうだい」
「うん…」
「疲れた? 大変だったね、いろいろ」
「うん」
真山の声にうなずきながら、志穂の目には涙があふれてくる。
「ごめん」
「なんで謝るの、帰ってきたらうちで鍋でもしよう」
「ごめん、私、やっぱり帰れない」
「えっ、なんで?」
「だって私、このままじゃ」
「志穂、どうしたの、意味分からない」
「ごめん、…ごめんっ」
志穂は携帯を手にしたまま、声を上げて泣く。
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