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社会に希望を取り戻すアート作品をつくりたい2021年~タグボートアートフェア出展企画紹介

2020年もあっという間に終わってしまいましたね。2020年の最後に改めて、自分がアーティストになってからずっとテーマにしてきた「生命」や「医療」のことを考えました。

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数少ないアート作品の展示機会を確保してくださってるギャラリータグボートさんには本当に感謝です。今は、2021年3月の展示「tagboat art fair」に向けて作品制作をしています。

展示企画は当初のものから変更して、「系統樹」という2017年からやっている作品を発表することにしました。2017年にフィンランドのアーティスト・イン・レジデンスに参加してた時に考えた作品です。

これまでに、フィンランド、上海(3回)、韓国(2回)で展示発表したことがあるんですが、日本で展示したことはないんですね。自分にとっていろんなチャンスを引っ張ってきてくれた、とても大事な作品の一つです。

1枚1枚はポストカードサイズなのですが、合体して大きな作品になるというもので、購入された部分に空白ができていくのが特徴です。フィンランドで作品を買ってくれた人が「いつか自分の隣を買った人と出会うかもしれない」と言っていたことがありました。

作品を通じて、誰かの存在を想像してくれたらとても嬉しいなと思っています。

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コロナうんぬんに関わらず、社会という自分を取り巻く世界を集合的な生命体と考えて作品に反映させてきました。この作品は購入されるごとに喪失していきながら、2017年から創りつづけているので、どんどん拡張しています。現在、そのほとんどは上海にあります。

2021年3月のtagboat art fairでは、韓国で展示した分と新作分を合わせて発表しようと思っていますが、全部で1800枚以上あり、今回展示分は幅8メートル、高さ2.6メートルくらいになります。

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制作方法もちょっとずつ変化していて、同じ色が一つもないこと、ひとまとまりのグループ(科 / Family)ごとに創っていることは変わりありませんが、韓国からは現地の町の色を取り入れながら制作するようになりました。

これをさらに発展させて、新作部分はこれまで私が歩いてきた町の色と道の形を作品に取り入れて制作するつもりでいます。

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こんな感じでエクセルを用意して、エリアごとにグループ化にします。これまでは、割と流動的な形状でグループをつくっていましたが、今回は真四角にグループ分けしています。

Googleマップでエリアの画像を見ながら、下絵の線画を鉛筆で描き、写真を見ながら、その町の色を作品に乗せていきます。

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例えばオランダの町の色はこんな感じ。

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分割してると分かりにくいですが、下絵の線は町の道路や川がモチーフになっています。

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道路と町の色を使うっていうのは、SICF21に出した「視覚的治療室」という作品からです。

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視覚的治療室の時には、写真に写っているエリアの道を切り絵していました。もっと元をたどると2019年に韓国で制作発表した作品になるのですが、こんな感じで作品同士が影響しながら発展していっています。

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獣医の仕事の本質って、動物を治療することじゃなくて、「動物の治療を通じて人の心を癒すこと」なんですね。アートに転向してからも、癒しっていうのはなんだろうっていうのを考えてきました。

人間にとって最も苦しいと感じることは、自分自身や最愛の人の「死」だという話があります。なので、もし、生きていることや死んでいることの概念を変えられて、死をなくすことができたら、人にとって最苦なことはなくなるんじゃないかと考えました。

それが社会を生命体として捉える概念(集合生命)につながっていくのですが。。2019年の日韓関係の悪化や2020年の状況から、死はもしかしたらすでに最苦ではなくなっているんじゃないかと考え始めたのです。

日本は特に、死を選ぶ人がとても多い国です。もしかしたら人は死を求め始めていて、死に希望を託し始めてしまっているんじゃないかと。これは社会に対する信頼度の低下や、社会に希望が失われていることを表しているような気がしたんですね。

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細胞が集まって身体ができるように、人がいるから社会が生まれます。現在の私は「社会治療」という、人々が社会を癒し、社会から人々が癒されるという医療概念を考えているのですが、社会に希望を増やす、希望を取り戻すにはどうしたらいいかを考えました。

医療は基本的に個人の治療を向いているんですが、病気の原因や治りにくい理由は、社会とそこに暮らす個人の相性があるように思っているんですね。生き方や考え方、常識などは世界中にたくさんあって、本当にさまざまです。うまく自分と合う考え方の場所に「移動」できれば、それは治療の一環になるんじゃないかと思っています。

同時に、社会システムなど自分の外の理由だけでなく、自分の内側に、可能性や期待、喜び、欲望、希望なんかが発見できたら、それは社会に対する治療なんじゃないかなって思うのです。

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この作品にあと何があったら希望が伝えられるかなって考えました。撮影してきた町の形状を模様のように描き込む予定なんですが、それ以外に、その町で聞こえるだろう「笑い声」を入れられたら、希望を思い出せるかもって考えました。

作品の中の笑い声を読む時、笑った音が読んだ人の心に残り、実際に笑った時のことを思い出すんじゃないかなって。世界中すべての国に行ったわけじゃないんですが、私が訪れた国の人たちに聞いて、その国の笑い声がどんな感じなのかを、これから聞いて集めるつもりでいます。

アート関連だけで、これまで10カ国くらいを渡り歩いてきました。どの国もどの土地もとても素敵で、出会えたすべての体験は私の宝物です。これからも、まだ見たことがない出来事にたくさん出会っていけたらいいなって思います。そしてその全てを、作品に込めていきたい。

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周りに目を向けると、選ばなかった選択肢に胸が痛むこともありますが、それでももしも「選ぶ」場面に戻れたら、私はやっぱり今の人生を選ぶと思うのです。

人生の全部を賭けてもいいくらい、創りつづける人生を送りたい。だから2021年も引き続き、創りつづける生活をしていきます!

2021年3月までもくもくと続けているであろう「系統樹」その他の制作風景はこちらで見られるので、気になる方はフォローしてのぞきにきてくださいっ。


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