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作品からチャンスを広げる「クリエイティブのための自己紹介」を考える

 クリエイティブの自己紹介は、基本的に「作品」だと思っています。作品が良ければチャンスの声がかかってくる。なので、クリエイティブな人たちは作品の質を上げるのが一番だいじ。

とはいえ、今って作品を見てもらう機会ってあちこちにあるじゃないですか。ネットでもリアルでも。展示情報は死ぬほど目にするし、チャンスをつかみたい人もたくさんいる。そんな中で、「自己紹介」がうまいっていうのは、チャンスをちょっぴりつかみやすくなるんじゃないかなって思っています。

クリエイティブの自己紹介の役割は?

クリエイティブの自己紹介は「作品」です。その上で、作品ではない言葉での自己紹介の役割を考えてみると

・作品を見てもらえる機会を増やす(真の自己紹介につなげる)
・相手に覚えてもらう(認知の獲得)
・話題に上がりやすくする(口コミの増大)
・自分の脳内整理(自分は何をする人かを自覚する)

みたいな効果があるのかなーと思っています。

私がアーティストをやり始めた直後、作品をつくる以外に最初の頃にやったのって「ライターをやること」だったんですね。ライターとして美術館やギャラリーとかに取材に行くと、展示企画の意図や作品づくりの際に気を使っていること、どうしてこの作家に惹かれたのかとか、けっこう丁寧に教えてくれます。

記事にできると、相手の人にもメリットを出しながら自分が深く学ぶことができるんですよね。何より、作品発表に関わる人たちのアートへの愛情が感じられたのが、とてもありがたかった経験でした。

取材をすると、キュレーターさんやギャラリストさんってたぶん、メディア慣れしているのでしゃべるのが上手なんですね。説明もとても分かりやすいです。

たくさん経験があるわけではないですが、アーティストはけっこう苦手なんじゃないかなーって思うことがあったんですね。ライター目線で話を聞く時って「どこが読者の興味を引くかな」って考えながら聞くんですが、それが見つかりにくい人は、なかなか上手に紹介しにくいんです。

もちろん、ライターなので、ちゃんと引きになるところを見つけるのですが、もしも作品の質が同じくらいで、引きの分かりやすい人と分かりにくい人がいた場合、前者のほうがチャンスをつかみやすい気がしませんか。

そんなわけで、主にアーティスト向けですが、クリエイティブの自己紹介をライター目線で考えてみました。

ジャンル・テーマがはっきりしている

ライターとして誰かの記事を書く場合って、だいたいその人のタイトルから紹介するんですね。〇〇のデザイナー、冒険家、〇〇サイト運営者みたいな感じです。なので、分かりやすいタイトルがあると、とても助かります。タイトルがあると、その人の活動ジャンルも一言で伝えられます。

オリジナルのタイトルがある場合には、それを捕捉する説明を入れられるといいです。たとえば、自分はタイムマスターです!って名乗ってたとしても、そのままだとなんだか分からないので、記事にする時には必ず「時間をテーマにした現代アーティストで、タイムマスターと名乗りながら活動している〇〇さん」みたいにするんですね。「タイムマスターの〇〇さん」って書いても、読者が誰も分からないからです。

なので、それを名乗っている理由をちゃんと伝えること。この場合、「現代アーティスト」っていう単語でタイムマスターを補足しています。

たとえば、タイムマスターの〇〇さんが、アートっぽい活動をやっているけれど、本人が「これはアートじゃなくて、時間改変活動なんです」って言ってるとします。また、本人もアーティストではなく、タイムマスターだと主張しているとします。

その場合、記事だとたぶん、

時間をテーマにした作品を制作し、タイムマスターと名乗りながら活動している〇〇さん。タッパを複数個つみ上げることを時間改変活動と称し、シェアハウス内でタッパ照明を制作。これがSNSで話題となり、100件以上の依頼が殺到。〇〇さんは「これからも時間を改変し続けたい」と意気込む。

みたいになります。

本人がアーティストって名乗っていないため、アートっていう言葉をはっきり使わずに、まとめる感じですね。

タイムマスターっていうのはオリジナルタイトルですが、時間が関係してそうなのはなんとなくわかるし、活動を時間改変と呼んでいることから、時間をテーマにしているっていうのは分かりますよね。

こんな感じでジャンルやテーマがあると紹介しやすいのと、テーマをすぐに言えるっていうことは自分のクリエイティブの軸をつくることになるので、お勧めです。アーティストでいうステートメントみたいなやつですね。

・生命をテーマにしている
・人をテーマにしている
・意識をテーマにしている

なんでもいいですがテーマがあると、普段から自分でもテーマについて考えるので、作品の質も上がってくるはず。せっかくテーマを決めてても、途中でころころ変えちゃわないほうがいいですね。テーマが頻繁に変わってる場合は、たぶん、自分で決めたテーマを忘れてる気がします。テーマは変えるんじゃなくて「深める」のがおすすめ!

極端な数字がある

テレビや新聞とかで紹介する場合は、それが話題になるかどうかを考えるんですね。日本一、世界一、世界最速、最軽量、みたいなのって分かりやすい話題です。日本で一番キノコの名前を知っている、とかでもいいかもしれない。その場合、「日本で一番キノコの名前を知っていると語るキノコマスターの〇〇さん」ですね。

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レア度の高さ

やってる人が少ないことも話題の一つです。読者としても「へー、そんな人いるんだー」って思いますよね。

5年間に渡って毎日1つ、丸を描き続けた〇〇さん
氷で彫刻をつくって、終わった後に飲み切ってしまう〇〇さん
1日1時間しか起きていないスリーパーの〇〇さん

とかですかね。レア度は極端なことをすれば誰でもつくれますが、つくる場合はそれを一生やり続けられるか、とかまで考えたほうが良さそうです。1日1時間しか起きないぞ!って決めたとしても、すぐに話題になるわけではないので、たぶん3か月とか寝続けないといけないですよね。その間の生活費はどうするのかを考えないといけないですから。

意外性がある

意外性は「みんながこう思ってること」との違いによって出せます。現代アートの作品づくりの手法でもよく見かけますが、美術館がレストランになってたり、ライブ会場になってたりもそんな感じですね。

お皿で帽子をつくってるとか、寝袋でドレスをつくってるとか、通常の使い道とはぜんぜん違うことをやっていると、その差分が意外性になります。

作品につながらない自己紹介は避ける

改めて、クリエイティブの自己紹介は作品なので、作品の質をあげるのが一番です。ただ、質もどんどん上がっていて、誰でもネットに出せるという競合だらけになってる状態で、少しでも作品に到達してもらうには、という視点で考えました。

興味を持ってもらう、覚えてもらうっていうのを考えた時、「脱サラしてアーティストになった」とか「極貧生活をしながら制作をつづけている」みたいな話題の取り方は、私はあんまりお勧めしません。

自己紹介は「作品(作家)への矢印」です。この紹介のしかただと、脱サラしたんだー、貧乏なのにがんばってるんだーってことにフォーカスがいってしまって、作品に矢印が向かわないからですね。これだと、脱サラしたアーティスト、貧乏なアーティストって広まりそうです。

その紹介が広まって、自分にチャンスがまわってくるか、作品をもっと見てもらえるようになるか、を考えると良いかもしれません。

覚えやすい紹介があると説明にコストがかからない

上海のアーティスト・イン・レジデンスで会ったスイス出身のアーティストさんで、ピンクをテーマにした方がいたんですね。

展覧会もピンク。本人の髪もピンク。ピンクの絵の具も自作してる、みたいな感じで、とにかくピンク一色でした。小さい頃からピンクが好きで、なんでピンクは女の子っぽいイメージがあるんだとか、ピンク色と犯罪の関係とか、とにかくピンクにまつわるあらゆる知見をもっていて、思考の深いアーティストさんでした。

さらに、覚えやすいんですね。ピンクのアーティストさんいたよって言えばいいので。実際に私もいろんなところで「ピンクのアーティストさんいてさ」って話しまくりました。

自分の周りをざらっと見渡して、こんな感じで一言で相手の紹介ができるようなクリエイティブの方ってどのくらいいます?

アーティストっていうのは言えるかもしれない。
デザイナーっていうのは言えるかもしれない。
マンガ家っていうのは言えるかもしれない。

大きなタイトルしか思いついてもらえないとすると、競合がたくさんいる中から抜け出せないですよね。アーティストに関して言うと、せいぜい油絵とか和紙とか、技法や素材が加わるくらいじゃないでしょうか。

使ってる素材がカニだったり、窓ガラスの破片だったり、レア度が高ければ注目を集めそうですが、だいたいは素材もそこまで珍しいものではないはず。

もしも周りの人が覚えやすく、誰もが説明しやすい紹介文を持っていたら、自分の知らないところで自分と作品が伝わることが増えるかもしれません。説明するって意外とコストがかかるんですよね。友達との会話の中で、こんな人いたーって言うとしたら、できあいの説明がある人が楽です。

作品をつくりながら、ちょっとだけ自分の自己紹介について考えてみると、チャンスをつかみやすくなるかもしれません。

ちなみに私は、元獣医の細胞アーティスト(現代アーティスト)です。よろしくね!

細胞とオノマトペを使った作品とかをつくってます。宣伝だよ!


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