建売氷河期を語る王騎
まさかこれほど早く建売氷河期が来るとは。私の予測より5年以上早い。コロナと戦争が時代の流れを早めたのでしょう。特に新築戸建の主戦場たる名古屋の反響数は壊滅的です。ここまで市況が冷え込んだ以上、顧客の"熱量"を操れる営業でなければ今後この業界で生き残る事は難しいでしょうねェ。
https://twitter.com/oukirealty/status/1730932775153463433
この建売氷河期が何を意味するのか。実は、戦後長らく隆盛を誇っていたマスマーケティングの決定的衰退なんですよねェ。これまでボリュームゾーンと信じられてきた平均年収層の細分化に伴う「ふつう」の多様化に、いよいよパワービルダーがパワーで押し切るビジネスモデルが通用しなくなってきたということです。
https://twitter.com/oukirealty/status/1748364213104595353
元来、家は「選ぶ」のではなく「つくる」ものでした。高度成長期に住宅供給量が圧倒的に不足したことで、建売やマンション業界が社会ニーズに応え続けた結果、住居はまず「選ぶ」しかしどうしても条件的に選べない場合に「つくる」という順序で考える、それが現代では合理的で一般的な考え方になったのです。
ところがここに来て、住宅は再び「選ぶ」よりも「つくる」という考え方が主流になりつつあるようです。土地や中古の選択肢も増えて来た中で、どうせ住むならつくりたい、こだわりたい、未来の暮らしに少しでも自分の色を加えたいという顧客側の潜在欲求の高まりが、建売在庫の増加傾向と土地売り及びローコスト注文メーカーの経営の堅調さにはっきりと表れてきているからです。
世代別の人口動態がかつてのようにほぼ菱形で、住宅購入世代と人口のボリュームゾーンが近しかった時代は、今よりもマスマーケティングが機能していたので、平均点より少し高いくらいの商品を大量生産で効率良く「選べる」状態にした産業や企業に自然と軍配が上がる仕組みでした。
しかし今や人口減少社会に入り数十年が経過、空き家が増え続ける一方、2000年基準の中古住宅が築20年を超えて値頃感が出てきたと考える層、団塊世代以上が遺した土地建物をどうするか考え始める層、リモートワークが浸透して必ずしも都市部に住む必要が無い層、子無し夫婦で3LDK以上は要らない層・・・
これらのどの層の考え方も、現代では平均であり"ふつう"なのです。どの考え方も今の時流を捉えており、決して間違いではない。この全ての「ふつう」の最大公約数を満たした住宅を開発して商品化しようというのがパワービルダーの基本的な考え方というわけですが、まさにこれが機能不全に陥っている。
ンフフフフ当然でしょォ?これらの「ふつう」には共通項がほとんどないため、条件を全て満たそうとすると、どの層にも響かない家が出来上がるだけですからねェ。ではどれかの層にターゲットを振り切って量産すれば良いのか?それも割に合いません。各層が占める人口ボリュームが少な過ぎて商売にならぬからです。
つまり一般的な「ふつう」の概念が細分化されて個々人に委ねられた時点で、これまで全国のパワービルダーが一方的につくってきた『建売=ふつうの家』は、単一企業レベルのマーケティングではもはやつくれない、仮に無理矢理つくったとしても、企業側が思うような予算と期間では売れないという所まで来ているということです。これが建売氷河期の実態なんですよ。
住宅業界に限らず、少子化と多様化を伴った個人へのパワーシフトが加速度的に進んだ今日、もはや企業側がボリュームゾーンを安易に規定して、余白の無い商品を大量生産してしまうのは、市況予測や市場シェアに余程の自信でもない限り現実的ではないということです。これからは真の意味で、顧客との価値共創の時代ですよォ?ココココ