愛しさと切なさと SmartHR プロダクトデザイン組織のバイブスのアゲ方と
はじめまして。SmartHR プロダクトデザイングループのおうじです。新人です。
はじめに断っておきますが、写真ご覧頂いている通り、あまり前が見えておりません。
目の前にあるであろうキーボードもディスプレイもほとんど見えておりませんので、現在念力を使ってこの文章を書いています。
入社の経緯と入社後の課題
私は今年 6 月に SmartHR へ入社し、いま 3 ヶ月が経過しました。
前職の送別会で名前を伏せ字にされたり、
尊敬していた同僚エンジニアから去り際に「裏切り者の都」というコンテキストの塊のような餞別をもらったり、
色々と波乱はありましたが無事に SmartHR に席を置かせて貰っています。
入社の経緯は以上です。
私が入社したタイミングでデザイナー組織は「コミュニケーション」と「プロダクト」の 2 グループに分かれて本格始動し、より専門性の高い組織管理と成長を求められていました。
私のここ 3 ヶ月の役割は、分かれたばかりの組織の片方、「プロダクトデザイングループ」をなんとかイイ感じにオシャレでバイブスぶちアガる組織にすることです。
今日はこれまでにどんな風にチームとしてアガってきたのかをご紹介しようと思います。
私の念力が尽きるまで。
急成長した組織の課題
先日公開された弊社代表宮田のブログにもある通り、現在 SmartHR は調達した資金の大半を「ヒト」に投資しており、その結果、組織は人員面で急成長しています。
外からは割とまっとうに見えるプロダクト開発体制もここ最近整ってきたばかりでして、実は PM/デザイナー/エンジニアといった 3 ロール入り乱れての開発プロジェクトも今年からはじまりました。
人の役割は揃ってきたものの、別職種どうしではまだまだお互いに「なにをお願いしたらいいのか」や「どこまでお願いしていいのか」といった期待値が揃っておらず、人数が生産性に直結していない状況でした。
身体は大きくなったけれど、動かし方がまだうまくわからない状態ですね。
ちなみに私が小学生高学年のころ、夏休み明けに急激に身長の伸びた同級生 T くんの隣でラジオ体操をしていたら、T くんの持て余した長い腕が私の頭部に強打され泣くほど痛い思いをしたことがあります。
脳天唐竹割りを食らった私の身長は以後 T くんほど伸びることはありませんでした。許すまじ、Tくん(呪念力)
そんな私のような(身長的に)成長の止まった組織にならないためにも、デザイン組織は早急に社内からの期待値を揃える必要がありました。
デザイン組織への期待値を揃える
「ねえ、ちょっと、そこのお兄さん。そうそこの給与所得者の扶養控除等(異動)申告書、通称マル扶ロゴTシャツを着た君だよ、君。
デザイナーって知ってる?へえ、知ってるのかい。
え?『デザインをつくってくれる』ひとだって?ふうん。
じゃあ、君の言うデザインっていったいなんだい?どんな成果物をデザインと呼べるんだい?プロジェクトにおいていつからデザインするんだい?人はなぜ生まれどこに向か…あっ!ちょっと!お兄さん!お兄さんってばー!」
これは私が社内で開発に関わるステークホルダーに実際にインタビューをした記録です(嘘念力)
デザイナーを長年雇用しており、デザイナーの働き方にある程度の「型」を持った組織であれば疑問にすら思わないようなことですが、なんども繰り返す通り SmartHR は成長中の組織であり、まだまだデザイナーが「なにをしてくれる」のか十全にはわかっていませんでした。
そこで、まずはじめにプロダクトデザイングループのメンバーで「コミットメント」を定義してみることにしました。
プロダクトデザイングループコミットメント
コミットメントは我々プロダクトデザイングループのデザイナーが「なにをしてくれる」のかを明確に定義したドキュメントです。
ドキュメントの対象としてはデザイナー以外のプロダクト開発ステークホルダーですね。
内容としては、現在以下の項目を記載しています。
中長期的に担保できる効率的な UI デザインを行います
- Sketch、Figma などによるデザインの制作ができるよ
- 社内プロダクトの一貫したインターフェースを担保・評価するよ
- デザインシステムの構築とメンテナンスを行うよ
ユーザー行動と欲求の特定から解決策の提示・提案( UX デザイン)を行います
- カスタマージャーニーマップ制作の実施とファシリテートができるよ
- ユーザーテストの設計・実施・ファシリテートができるよ
- ヒューリスティック・ユーザビリティテストの実施ができるよ
- ペルソナ設計ができるよ
製品のブランドを担保します
- 一貫したプロダクトイメージの醸成をやるよ
- ユーザーに良い印象を持たせる画面の制作ができるよ
プロジェクトオーナーもできちゃいます
- PM / PjM 不在の開発プロジェクトのオーナーシップを持てるよ
- 開発チームとの定常コミュニケーションができるよ
- 開発に関わるステークホルダーとの合意形成ができるよ
デザイナーにとっては既知のことでも、社内の別職種の方に明言することによって意外と気付きがあるものです。
実際にこのドキュメントを社内に公開してから、期待値が「絵や装飾」から「設計の妥当性」に変わったような実感があります。
また、このドキュメントはメンバー全員で合意して作っていく必要があったので、 Google ドキュメントで作成されています。
社内では esa という情報共有サービスが主流ですが、このドキュメントでは「途中の段階を共有する」ことと「コメントで議論する」ことが重要なので Google ドキュメントを使用しています。
すでにコミットメントの運用ははじめていますが、プロダクトデザイングループもまだまだ走り出したばかりの組織なので定常的にアップデートを行っています。
デザイナーの組織貢献を握る
―――――
『カチッ』
時計の長針と短針が重なり、午前零時を迎えた事実が誰もいないオフィスへ無情に響き渡る。
昨日はあたしの誕生日だったのに。一日仕事に追われるどころか、深夜残業で日付すら跨いでしまった。
スマートフォンをスワイプしてロックを解除。数分に一度かかってきていた恋人ケンヂからの電話はもう収まっている。
なにもする気になれず呆とホーム画面を眺めていると、ポロリンという気の抜けた音とともにメッセージアプリに通知アイコンがついた。ケンヂだ。
『誕生日おめでとう。デザインの仕事がんばって。さよなら』
わかっていた。わかっていたけれど、ホーム画面を水滴で濡らすことを止められなかった。
これはすべてあたしのせいだ。
先週、営業部長が給湯室で言っていたことを思い出す。
「デザイナーには言う通りにデザインだけやらせとけばいいんだ!どうせ一銭にもなりゃしねえ!」
それを聞いてからというもの、あたしは意地になっていた。
どうにかしてデザイナーが会社に貢献している姿を見せたかった。
だから、がんばったのだ…恋人を省みることもなく…。
こんなとき、デザイナーの組織貢献がきちんと定義されていれば…。
あたしは悔やんでも悔やみきれない。
―――――
これは私が前世でトレンディーな女性デザイナーだった頃の記憶です。
このあと前世の私はオフィスで乱心した後、恋人や会社との関係を絶って新天地で暮らし、そこで出会ったゴーヤ栽培人の男と元カレとの間で恋心に揺れますが、それはまた別のお話しです(念力のお暇)
このブログを読んでらっしゃる経験豊富なデザイナーの皆様はご経験があると思いますが、デザイナーは「で?見た目が綺麗になってなんぼ儲かるの?」という疑問にいつも直面してきた生き物です。
創業時よりデザインに対する理解と投資割合が高かった SmartHR ではありますが、冒頭にあった通り期待値が揃っていない中では「どう貢献してくれるか?」もわからないのは当然です。
今後組織が成長するに従ってきちんと言語化されていない価値が淘汰されていくのは自明ですので、ここもコミットメント同様にメンバー全員で定義していきました。
プロダクトデザイングループビジョン
ビジョンは我々プロダクトデザイングループのデザイナーが「なにを目指すのか」を定義したドキュメントです。
ビジョン自体はいたってシンプルで、プロダクトの「品質」と「生産性」に貢献するという一文でほぼ完結しています。
「品質」に貢献するということ
SmartHR は SaaS と呼ばれる業務クラウドサービスを提供する事業を行っています。
主な収益源はサービスの継続利用料金ですので、もしお客様に「使いにくい」や「信用ならない」と思われ解約されてしまうと会社の経営にネガティブな影響を与えることになります。
デザイナーがお客様へ「使いやすく」「信用できる」画面や体験を提供できれば、それは解約率の低下をもたらすことに繋がり、会社の経営にきちんと貢献できていることになると我々は考えています。
「生産性」に貢献するということ
SaaS 製品の良いところとして、組み込み型のソフトウェアとは違い「アップデート可能である」という点が挙げられます。
特に我々が開発している製品の業務領域では法改正などにより行政書類の書式が変わることや、業務のフロー自体を変えざるを得ないことが多々あり、それらの状況に素早く対応することが求められます。
デザイナーが「再利用可能」で「ルールを持った」デザインを行っていれば、画面開発の工数を削減することに繋がり、すばやくアップデートの対応を行うことが可能になります。
新機能やアップデートをお客様に提供できるスピードが上がれば、お客様のサービス導入理由にも繋がるので、ここでも会社の経営に貢献できると我々は考えています。
おわりに
あっ、あっ、頭が、割れ、あーーっ
というわけでそろそろ念力が限界なので今回はここまでです。
今回は組織立ち上げの取り組みとして、主に「コミットメント」と「ビジョン」のご紹介をしましたが、この怒涛の 3 ヶ月の間にはまだまだご紹介しきれていない取り組みがたくさんあります。
なぜそんなにたくさんやらなければならないかというと、何度もお伝えした通り SmartHR は成長途中の組織だからです。
SmartHR のデザイナー組織作りを一緒にやってみたいという方は是非 Wantedly などでお声がけください。
デザインカルチャー作りに興味のある方はもちろん、私の前髪を可愛らしく切ってくれる方だとなお嬉しいです。もう念力を使わずに済むように…。
次回はデザインシステムか、認知パターン定義の取り組みについてご紹介できればと思います。
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