生きるために、食べなきゃいけない

また体重が落ちた。

コンビニに行けば糖質制限の食品がどんどん増えていて、インスタを開けばオートミールなどのダイエットメニューがずらり。YouTubeの広告は安っぽいアニメと音声で、体型のせいでフラれる女で溢れている(脱毛もめちゃくちゃ多いけど)。

世の中はダイエットが、とにかくずっと流行っている。流行っているという言い方は失礼かもしれないけど、私はその逆でずっと、体重が減らないように意識している。

身体は至って健康で、持病があるわけじゃない。病的に細いわけでもない。BMI(身長と体重から算出する、肥満度を表す数値)は16。確か20くらいが丁度良かったはず。16だと「痩せ」に相当する。痩せすぎってほどではなくて、まあ、ヒョロヒョロだなって感じ。筋肉も全くない。みすぼらしい体型だ。

中学生のとき急激に身長が伸びて、ガリガリで貧相な体がコンプレックスになった。半袖短パンを強要される夏場の体育が本当に嫌いだった。できるだけジャージで居たかった。

高校に上がって、半袖短パンを強要されることがなくなったのを良いことに、真夏でも暑さを我慢してジャージを着ていた。骨っぽい体を隠せることで、コンプレックスの意識は少し薄まった。

制服が無くなると、いくらでも体型を隠せるようになった。相変わらず私はヒョロガリだったけど、まあ太いよりはマシなのかもしれないな、とすら思っていた。垢抜ける方法で一番最初に出てくるのって大抵「痩せること」だったし、服だって細い方が選び放題だ。


細い原因は「食に関心がないこと」が大きい。あんまりお腹が空かない。食欲が薄い。朝も昼も、家にいるなら食べなくてもつらくない。外に出ればエネルギーが足りなくて頭がクラクラしてしまうから、きちんと食べるべきだけど。
いつからそうなったのかは、あんまり覚えていない。

食にも関心が薄いけど、「食に興味が無いのってかっこいい」「食べるのはみっともない」みたいな気持ちがどこかにあることに、最近気づいた。

人前で食事をするのも嫌いで、一人で食べるご飯がいちばん美味しい。食欲が旺盛な人を見ると、心のどこかでちょっと引いてしまう自分がいる。食べることは生きること。生きようとする姿勢そのもの。

自己を肯定できないせいか知らないが、自分なんかがいっぱい食べるのか、とかいう気持ちもある。食べていることが少し恥ずかしい。


私はもともとアトピー持ちで、物心ついた頃からずっと肌トラブルと格闘していた。幼稚園を除く全ての卒業アルバムの個人写真が、ちょうど肌の荒れるタイミングと被って、目の周りが赤くなっていたり、腫れていたりする。燃やしてしまいたいくらい惨めだ。

肌が汚くて、美人でもなくて、その上太っていたらもうダメじゃん。そんなことを思って、太るのが怖い。今より数キロ増えたところで、まだまだ大丈夫だとは思うんだけど。ダイエットは物凄く大変そうだから、自分に甘い私は一度太れば痩せる努力もできそうにない。

体重はあんまり頻繁に計っていないけれど、増えていれば「そんなに食べなくても大丈夫かな」と思って食べるのを諦めてしまうし、減っていれば「頑張ってもうちょっと食べなくちゃな」と思うので気疲れする。心の片隅で、減っていることになんとなくほっとしている自分もいる。

今は少し減った。おやつも食べた方がいいし、朝昼晩三食、茶碗一杯に白米を食べる。これで増えるか分からないけど、これ以上減ると過去最低ラインに到達してしまう。あまりに不健康すぎる。


小さい頃、私が嫌いな野菜を嫌々食べていると、母に「美味しい美味しいって食べないと身にならないよ」と言われたことを思い出す。

太りたいし、太りたくない。
痩せたいし、痩せたくない。

全部本当。生きなくちゃいけない。


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