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感情爆発のメカニズム
大人でも感情が暴走してしまい、手がつけられなくなる人がいます。
それは、何も怒りの爆発だけを指すわけではありません。
不安や恐怖で怖気づいてしまうことも「感情の暴走」という意味では同じ。
感情が暴走してしまった結果、あとで大きな代償を払うことになり、その後、何の手立てもなければ、同じ失敗をくり返してしまう。
これは、大変もったいないことです。
なにか方法はないものでしょうか。
まずは、感情爆発のメカニズムについて紐解いていきたいと思います。
感情は素早さが勝負!
感情とは、私たちの生活を支え、人生を豊かにしてくれる、なくてはならないものです。
ただ、感情の持つ特性をよく理解しておかないと、諸刃の剣と化して、人生を豊かにしてくれるどころか、自分も他人も傷つけてしまう、とても厄介なものになります。
その特性の一つが「スピード勝負!」です。
もしも危険が迫っていた時に、感情判断がもたついていては、命を危険にさらすことになりますからね。
だから「素早く反応!」これが重要で、感情の強みになります。
ところが困ったことに、警戒しなくてもいいのに勝手に反応してしまい、怒鳴ったり、逃げてしまったりと、仇になることがあるのです。その場合、アンガーマネジメントのような対処法をいくら身につけても、根本の解決にはならないのです。
これまで、感情の取り扱いに苦慮する大人を男女問わずたくさん見てきて、なんとかできないものだろうかと考えてきましたが、それには、やはり本質理解は必須。
まずは、感情→行動の過程を詳しくみていきたいと思います。
感情が爆発する道のり
そもそも、感情の対処に手間取るのは、感じやすい性質を持った人という理解が必要です。
ちょっとした刺激に敏感に反応する「繊細さ」を持つのです。
感情の処理方法は、子ども時代に「カタチがつくられます。
刺激が入ってきて感情が揺れ、その揺れをどう鎮めるか。
まずは、その過程を整理してみましょう。
❶五感から入る刺激
(声や音の聴覚刺激・不機嫌な表情などの視覚刺激・嫌なにおいの嗅覚刺激・暑い寒いの皮膚感覚刺激、この他空腹とか眠いなどの身体の不調も刺激と捉えるとわかりやすいかもしれません)
❷不安が一気に高まる!
(ここで二手に分かれます)
❸ー①その場から逃げようと必死になる
例1)全身を硬直させて思考停止
例2)泣き叫ぶ
例3)怯えて逃げる
これらは全て「逃走反応」
❸ー②怒りを爆発させて威嚇する
例1)怒鳴る
例2)暴力・暴言
例3)無視
これらは全て「闘争反応」
感情が、不安や恐怖に襲われるところまでは同じですが、その後、大きく二手に分かれるのがわかりますね。
そして、重要なのはこのあと。
強い不安に襲われた時に、そばにいる大人からどう扱われるかが鍵を握ることになります。
「いい子」と「暴走するダメな子」の誕生
ひどく叱られたり、冷たく突き放されたり、無視されることが続くと、どう対処すればいいかわからない子どもは、「いい子」と「暴走するダメな子」という、小さな解離を起こします。
要するに、心の痛みには向き合ってもらえずに、不安や恐怖をなだめる方法を教えてもらったり、手伝ってもらえなかった場合、
①逃げる自分も「暴走するダメな子」
②爆発する自分も「暴走するダメな子」
と捉えて、どちらであっても
「いい子」にならなくちゃ!
よし!絶対に「いい子」でいよう!
今度こそ「いい子」になるぞ!
と「いい子」として生きていくことを心に誓うという心の動きが起こるのです。
そもそも感じやすい子ですから、普段から相当気を使いながら暮らしています。
ところが、感じやすさゆえに、うっかり「暴走するダメな子」が出てきてしまう。
そんな時は、ひどく後悔に襲われ、本当に自分はダメな子だと蔑み「今度こそ・・」と、心に固く誓うという心の動きを経験するのです。
取り扱えない自分
こんなことが幾度となくくり返されれば、どうなるか想像できますね。
自分の中に存在する「いい子」と「暴走するダメな子」の解離はどんどん広がり、最後には完全に分裂し、自分の中に「自分では取り扱えない自分」を抱えてしまうのです。
「自分では取り扱えない自分」とは、「暴走するダメな子」がいつ顔を出すかわからない怖さを抱えているとでも言いましょうか。
そして、「暴走するダメな子」は、「嫌だったんだ」「怖かったんだ」「悲しかったんだ」という、心の痛みを吐露することは許されず、存在は無視され、向き合うどころか「今度こそ生まれ変わるぞ!」と決意をくり返し、その結果、ますます解離は広がっていく。
という悪循環にはまってしまうのです。
このパターンに陥っている人は、子ども時代は「いい子」を相当頑張ってきたはず。
周囲は気づかなくても、日に何度も感情にブレーキをかけて
「暴走するダメな子」になってはダメ!
「いい子」でいなくっちゃ!
と自分に言い聞かせながら過ごしてきたはずです。
その心の叫びに気づいてくれる大人に出会えるかどうかで、のちの人生は大きく違ってくるのです。
DV・パワハラ・モンスターも?
ストレスフルな現代、感じやすい子にとって、周囲の大人の助けは重要です。
田舎育ちであれば、大自然の中で、自分を縛り付けているものから解放されることで、なんとかバランスを保つこともできるでしょう。
ゲームの世界に没頭すれば、その間はのびのびとできるかもしれません。
それでも不意に大きなストレスが襲ってきた時には、ブレーキが間に合わず、感情が暴走してしまう。
その度に、失敗→後悔→新たな決意をくり返す。
その結果、しまい込まれた「暴走するダメな子」を抱えたまま、大人へと成長。
「ダメな子」は顔を出さないように細心の注意を払いますが、気を許す関係に限って、また自分が優位に立てる関係だと判断した場合には、容易に抑制が解かれ、暴走が止まらなくなる。
挙げ句の果てには「怒らせるのが悪い」と理屈にならない理屈で制しようとする。
というリスクを背負うのです。
これではマズいです。
なんとかしなくては・・・
DVやパワハラ、モンスターと呼ばれる人たちにも、同様のカラクリがあるのではと感じています。
せめて、子どもの時代に、上手に自分を取り扱える力を育ててあげたい。
なんとかならないものでしょうか。
心の痛みを言葉にする
感情を爆発させる大人を見ると、共通点があることに気づきます。
人一倍感じやすく、周囲にとても気を使いながら過ごしている。
ところが、感情を爆発させてしまった時の「心の痛み」には驚くほど無頓着。
そして、怒鳴る人は「悲しむ」「嘆く」「不安を口にする」ということはなく、必ずと言っていいほど「怒り」や「批判」「攻撃」に置き換えて、吐き出します。
だとすると、心の痛みを、怒鳴って暴れて威嚇するとか、怯えて泣きじゃくって逃げるのではなく、ちゃんと受け止めてもらえるような言葉にして伝える力を育てる必要があります。
怖かったんだ
悲しかったんだ
不安だったんだ
と言葉にすることは
弱虫なんかじゃない。
とても勇気のいることで
大の男の人でも怖気付いちゃう
すごく勇敢な振る舞いなんだよ。
と教えてあげることです。
心の痛みをちゃんと表現できる子に育てる。
それには、暴れる子も、オドオドしている子も、心の痛みを抱えていることを理解して、言葉にすることを手伝ってあげる。
そばにいる大人は、心の痛みを言葉にして伝えるという”見本”を示すことが大切なのです。
鶯千恭子(おうち きょうこ)
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