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意欲の正体は”成功体験”

気にする子の場合

慎重でおとなしい子は、警戒心が強く、失敗を怖がり、新しいことに挑戦することが苦手です。決して意欲がないわけじゃないんです。ただ、上手くいかなかった時のことを想像して、つい尻込みをしてしまうのが特徴です。

そして、こういうタイプのお子さんは、本が好きなことが多く、同年代の子と比べて知識がかなり豊富だったりします。本当は想像力豊かで、将来がとても楽しみな子というのが本当の姿。ところが、悲観的な目で見てしまうと、せっかくの魅力を見落としてしまう危険があるので要注意なのです。

「将来、いじめられっ子になるんじゃないかしら」
「社会の中で生きていけないんじゃないかしら」
と、子どもの苦手に目が奪われてしまう。

気がつくと「それでいいよ」という肯定的な言葉よりも「もっとこうした方がいい」「もっと○○してごらん」という声かけが多くなってしまうのです。

気になる日本の若者の自己肯定感

ここで、ちょっと気になる数字があるのでご紹介したいと思います。
内閣府から出された平成30年「若者意識調査」で、13歳から29歳の男女を対象に、7カ国で比較したものです。

■「自分に満足していますか?」という質問に「満足している」と答えた人
アメリカ 89.0%
イギリス 80.1%
フランス 85.8%
ドイツ  81.8%
スウェーデン 74.1%
韓国   73.5%
日本   45.1%

他国は軒並み70〜80%なのに対して、日本の若者は45%と極端に低くなっていますね。

実は平成25年に同じ調査が行われていましたが、その時の結果と大きな変化はなく、むしろ若干ですが減少傾向にあったのです。(平成25年45.8%)

更に、日本の若者は
「自分には長所がある(長所)」
「自分の考えを相手にはっきりと伝えられる(主張性)」
「うまくいくかわからないことにも意欲的に取り組む(挑戦心)」
「自分は役に立つ(自己有能感)」
に対しても全てにおいて最下位でした。
そして、もう一つ興味、興味深いのがこちらです。

■「他人に迷惑をかけなければ個人が何をしようと自由だと思いますか?」という問いに「そう思う」と答えた人

アメリカ 81.7%
イギリス 80.8%
フランス 81.1%
ドイツ  77.6%
スウェーデン 78.1%
韓国   77.2%
日本   42.2%

「社会規範」についての問いでしたが、他人に迷惑をかけないからと言って、何をしてもいいわけじゃないと感じている若者が、他国の若者より多いことがわかりす。
これはある意味、調和を大切にしているとも言えるし、周囲の顔色を伺う傾向が高いとも読み取れますね。
だとすると、他者評価を気にしてしまう理由が知りたくなります。
視点を大きく広げて、このことについて考えてみましょう。

変化の激しい時代の落とし穴

現代は変化の激しい時代です。
変化のスピードがどんどん加速しており、これからの時代がどうなっていくのか、明確に言い当てられる人がいない、誰もが予測不能な時代だと感じています。

変化が激しいものの、せわしなく日々は過ぎていく。
そんな中で、子どもを育てていかなければならない親たちは、それでも、わが子が少しでも幸せになれますように、少しでも苦労が少なくありますようにと願っています。

出来ることなら、自分が育ててもらった以上のことをしてあげたいし、出来る限り可能性を広げてあげたい。
ただ、変化の先が見えないので、不安に揺れるし、入ってくる情報に振り回されてしまうのです。

「これは大事よ」と聞けば、聞き漏らしてはならないとアンテナを張るし、「知らないと損するわよ」と聞けば、じっくり吟味することなく飛びついてしまう。

それもこれも、裏を返せば、わが子のしあわせを願ってのこと。
この子の人生が、少しでも苦労が少なくあって欲しいという思いの現れなのです。

ところが皮肉なことに、親が願えば願うほど、目の前のことに気持ちが奪われてしまう。その結果、わが子の苦手な点が気になって仕方がない。
今のうちになんとか手を打っておかないと取り返しのつかないことになるんじゃないかと、最悪の想定ばかりが浮かんでくるのです。

不安はビジネス

人は不安に包まれていくと、同調してくれる人を探すようになります。
「あなたの判断は正しい」
「間違っていない」
といってくれる人を探すようになるのです。

その結果、一層不安を掻き立てるような情報に敏感に反応し、エスカレートしてしまうのです。

ー不安を煽るとモノが売れるー

という言葉を聞いたことはありませんか?
人を不安にさせておいて、商品を売り込むというビジネスのことを言います。
「お困りを解決します!」と言わんばかりに、いろんな商品を売り込んでくるのです。

世の中には、そういう良からぬことを企む輩がいるのも事実。
そんな悪徳商法に引っかかってしまったら大変!
「儲けたい」という目的と、「助けて欲しい」という欲求が噛み合わなかった時の代償は、子どもが引き受けることになるからです。

意欲の正体は”成功体験”

さて、話を戻しますね。

今の時代は、繊細なお子さんだけでなく、多くの若者が「自信が持てない」「リスクを負いたくない」と感じています。
変化の激しい時代ですから、仕方ないとも感じます。
でも、変化の時代だからこそ、誰も正解はわからないのですから、挑戦する意欲を大きく育ててあげたいとも、強く強く思うのです。

「失敗するかもしれないけれど頑張ってみる」
そう思える子は、どんな特徴があるのでしょう。

大人でも、意欲があふれている時って、失敗するデメリットより、成功することで手に入るメリットに注目していることが多いという特徴がありますね。
きっと子どもも同じなんだろうなと思います。

ではなぜ、失敗よりも成功に関心を向けられるのでしょう。
それは過去の”体験記憶”です。

どんな子にも、数々の失敗経験はあるはずです。
ところが、出来事のどこに注目するかによって、積み上げられる記憶が違ってくるのです。
例え、思うようにいかないことに遭遇したとしても

「最後までよくやり通せた」
「ぐっと堪えられた」
「苦しかったけど、うまく気持ちを立て直せた」

など、ネガティブな側面よりもポジティブな側面を拾い集めた記憶を持っているのです。
例え、期待通りの結果にならなくても「よし!次こそ頑張るぞ!」と意欲を燃やす源にできるのです。

つまり意欲の正体は「成功体験の記憶」だったのです。
そして、成功体験の記憶は「きっと自分は越えられる!」と思わせてくれる”大人のいざない”が、大きな力をもたらしているのです。

こうなりたい!と思わせる

そうだとすると、大人自身がポジティブをたくさん拾い集める力を持つ必要がありますね。

そばにいる大人が「何」を大切に考え
出来事の「どこ」を拾い
子どもに見せるのか

ここに力を注ぐのです。
そして、子どもの苦手を目にした時に、その力を発揮させるのです。

例えば、引っ込み思案で、なかなかお友だちの輪に入れない子がいたとしましょう。
「もっとたくましくなって欲しい」
と大人が思うとしたら
子ども自身にも
「もっと強くなりたい」
「もっとたくましくなりたい」
と思わせるいざないをすればいいのです。

「緊張しただろうに、よく挑戦できたね!」
「随分と踏ん張れるようになってきた!」
「すごい勇気に驚いた!」

とポジティブを拾い集め
「すごい!すごい!」
と伝えてあげればいいのです。

そうすることで、子どもは「引っ込み思案な自分」に注目することはせず、「勇気を持って挑戦する自分」に注目するようになり、たくましい自分を手に入れるようになるのです。

無駄なことは一つもない

いかがだったでしょう。
どんな経験も、決して無駄にはならないことがお分かりいただけたでしょうか。

ポジティブな側面に注目することで、どんな経験も成功体験に仕上げていけるのです。

そのくり返しの記憶が、変化の激しい時代にたくましく生き抜く力として、子どもたちの人生を前進させてくれるはずです。

今からでも大丈夫!
今日からぜひ成功体験の記憶づくりをはじめてみてください♪

鶯千恭子(おうち きょうこ)

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