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【セミナーレポート】今、園からのLIVE配信がアツい!

11/27(金)に開催したオンラインセミナーのレポートをお届けします!

この一年、多くの園さんが行事をどうやって開催するかについて、頭を悩ませてきたのではないでしょうか。感染拡大防止のためとはいえ、子どもの成長を何より楽しみにしている保護者の皆さんに、観覧中止や入場制限、時間短縮などの対策を伝えることは、非常に残念で心苦しいことではないかと思います。

一方で、子どもたちの姿を見る機会を減らすのではなく、「新しい参観のかたち」を作ろうと努力している園さんも増えています。そのひとつの方法が、イベントのライブ配信です。今回のセミナーは、動画配信サービス「おうちえん」を使って、行事や普段の保育の様子をライブ配信している園の先生方をお招きし、園での活用事例や、保護者との絆を深める工夫について、お話いただきました。

※こちらからセミナー動画をご覧いただけます。

【事例紹介】 慣らし保育での活用と効果−−横浜さがみ幼稚園 ICT担当 北野知嘉子先生

横浜さがみ幼稚園は、3ヶ月前に「おうちえん」を使い始め、ライブ配信機能をフル活用しているそうです。

横浜さがみ幼稚園‗おうちえん使い方紹介

● ライブ配信の活用方法

運動会:例年は近隣小学校の校庭を借りていますが、今年は園庭での開催となりました。保護者の入場制限を行い、現地で観覧できない家族のためにライブ配信を実施しました。全体を撮るために1台、近くからの撮影に2台と、計3台のiPadを使ってライブ配信しました。

お遊戯会の座席抽選会:コロナの影響で全席指定席としたため、事前に抽選で座席を決めることになりました。公正なくじ引きが行われていることを保護者に伝えたい、またドラフト会議のようなドキドキ感も味わってもらえるのではないか、ということで、園児がくじを引いているところをライブ配信し、家庭で見てもらえるようにしました。

未就園児保育での母子分離:0〜1歳、2〜3歳の未就園児クラスで、母子分離の時間に、子どもたちの姿を保護者が見られるよう、教室の様子を保護者控室にライブ配信しました。

● 保護者の感想

ライブ配信は保護者に非常に好評だ、という北野先生。運動会では「実際に自分が会場で見ていた角度とは違う角度から見られたのがよかった」、母子分離では「普段見ることのできない子どもたちの姿を知ってジーンとした」、などの感想があったそうです。一方で、家庭で閲覧しているときに、動画が止まってしまったり、画像が粗くて見づらかったりという声も。園側はもちろん、各家庭のWi−Fi環境を事前に確認してもらうことで、ストレスなくライブ配信を楽しむことができるのではないか、と北野先生は語りました。

横浜さがみ幼稚園‗おうちえん使い方紹介2

【事例紹介】 行事でのライブ配信活用−−みどりヶ丘幼児園 園長 尾崎匠先生

● ライブ配信の活用

スライド1

みどりヶ丘幼児園は、園と家庭とで共に子どもたちの成長を喜び合いたい、という思いから、保護者参観の機会を多く設けているそうですが、今年はコロナの影響でさまざまな行事の開催が危ぶまれる状況となりました。緊急事態宣言下では、市からも行事縮小の要請があり、参観保護者数を制限して実施することになりました。そこで、より多くの保護者にこどもたちの姿を見てもらうために、ライブ配信の導入を決めました。

みどりヶ丘幼児園では行事のライブ配信のほか、0歳・1歳児については、普段の保育の様子も配信しています。

● ライブ配信の効果

スライド2

「ライブ配信を始めてから、迎えに来るときの保護者の皆さんの表情が大きく変わりました」と尾崎先生。「預けるときに子どもが泣いてしまうと、お迎えに行くまで心配ですよね。でも動画を見て、園で楽しく過ごしていることがわかれば、それだけで安心できます。連絡帳しかなかった時と比べると、先生と保護者の信頼関係も深まっているように感じます」と語りました。

ライブ配信導入のもうひとつの大きな効果が、園のICT化に対する先生方の意識が高まったこと。みどりヶ丘幼児園では、以前は、行事の際に撮影した動画をDVDに焼いて保護者に貸し出していました。しかし「おうちえん」では、配信した動画をそのまま家庭でダウンロードできるので、特別な作業を行う必要がありません。各家庭に同意書をとる手間はあったものの、大きな業務効率化につながったということです。

さらに最近では、現場の先生方が率先して写真や動画を編集するなど、ICTスキルや自主性が高まっているそうです。「子どもたちの成長を保護者とともに喜び合うために何ができるか、先生一人ひとりが考え、そのためにICTを積極的に活用しようという姿勢が強まりました」と語る尾崎先生。今後は動画の活用場面をさらに広げていきたい、ということでした。

【事例紹介】 なぜ運動会の練習風景を配信したのか?−−あだちみどり幼稚園 理事長 大熊啓太先生

あだちみどり幼稚園は、緊急事態宣言直後に「おうちえん」を使い始めました。さまざまな動画、写真をアップし、保護者に共有しているそうです。
ライブ配信は主に、運動会の「練習」の様子を保護者にてもらうために活用しています。

● 練習風景を配信する理由

図1

「運動会当日にもライブ配信を行いますが、それはあくまでも『サービス』で、園としてはぜひ、練習の過程を見てほしいと思っています」と大熊先生。本番の姿がすべてではなく、それまでの過程にこそ、子どもたちが輝く瞬間がたくさんあります。保護者には是非そこを見てほしい、というのが大熊先生の思いです。「当日は、結果を見るのではなく、子どもたちや先生を応援する気持ちで見てほしい」と語りました。

● ライブ配信のポイント

最近では日常の保育風景をライブ配信するなど、少しずつ活用範囲を広げているあだちみどり幼稚園。普段の様子をライブ配信することで、保護者の園への理解が深まり、先生と保護者とのコミュニケーションが充実したものになっているそうです。一方でライブ配信導入直後には、現場の先生から「子どもを名指しで注意している声が入ってしまうのが心配」、「映ってほしくない部分もある」などの懸念の声もあがったそうです。

図2

そこであだちみどり幼稚園では、日常の保育風景については固定カメラではなく、撮影の場所やタイミングをコントロールしやすい手持ちカメラで、そしてまずは5分〜10分といった短時間での配信を行うことにしました。撮影ポイントは事前に担任の先生と共有しておき、アクシデントが起きた場合には、すぐに撮影を止められるようにしているそうです。またカメラを急に止める場合には、「黙って終了するのではなく、撮影者がコメントを入れることで保護者に余計な心配をかけないよう配慮することが重要だ」と大熊先生は語ります。

● ライブ配信の考え方

図3

大熊先生は「ライブ配信はツールのひとつであり、決して保育のすべてを伝えるものではありません」と強調します。あくまでも「教育」のために実施するものなので、エンターテイメント性を追求しすぎないようにしているそうです。

ライブ配信を行ううえでは、普段から保護者としっかりコミュニケーションをとり、信頼関係を構築することを最重視しています。ライブ配信では、失敗やトラブルを避けられない部分もあります。完璧を目指しすぎると何もできなくなってしまうので、信頼関係さえあれば保護者は園の意図を理解しくれるはずだという思いで、新しいことに挑戦しているといのことでした。

最後に大熊先生は、今後の「おうちえん」の活用方法について「公開保育、普段の生活(遊び)、行事と本番までの過程、採用活動、園だよりなども動画で配信していきたいです。子どもにカメラを持たせ、子どもの目線で動画を配信するのも面白そうですね」と語ってくれました。

参加者からの質疑応答(抜粋)

Q:ライブ配信中にハプニング起きてしまった場合、どのように対処していますか。

A:(北野先生)これまで配信中に大きなハプニングにあったことはありません。小さなハプニングは起きてますが、保護者からのクレームなどはないですね。保護者の方も配信で状況をずっと見ているので、前後関係をしっかりと理解してくださっていると思います。

(尾崎先生)普段の保育を配信しているときに、子ども同士がトラブルになる、怪我をしてしまう、などは起きる可能性があります。そういう場合には、誤解を与えないよう、あとで保護者の方にしっかりとフォローすることが重要だと思います。園と家庭との信頼関係があれば、ハプニングがあったとしても、対応できるのではないかと思います。

(大熊先生)撮影者が、ハプニングが起きるかもしれないという意識をもって撮ることが大切かもしれません。ハプニングが起きた後の対応について、事前に想定しておくことも重要だと思います。

Q:運動会などの行事は、当日録画したものを編集し、後日配信する方法などもあると思いますが、あえてライブ配信する意義はどこにあるのでしょうか?

A:(尾崎先生)子どもが体験していることをリアルタイムで共有できるというのは、非常にメリットが大きいと感じています。行事が終わって保護者の方がお迎えにきたときの表情が全然違います。行事の楽しさを、その日のうちに親子で喜び合うことができるというのは、とてもよいことだと思います。

(北野先生)当園も同じです。その場にはいなくても、自分たちの発表を家族が見ていてくれていると思うと、取り組む子どもたちの意識も変わってくるのではないかと思います。お迎えで保護者に会ったときの子どもの表情も、親子のコミュニケーションも全然違いますね。今日の頑張りを見てくれたという喜びは、子どもにとって、とても大きいのではないかと思います。

(大熊先生)ライブ配信は編集が出来ないので、リスクもあります。ライブ配信のメリット・デメリットを天秤にかけて、園ごとの考えでやるのがよいと思います。私自身は、リアルタイムでも後からでも動画を見られるというのは、すごくいいなと思っています。生中継なので「わー、映った!映った!」という楽しみはありますよね(笑)。園と家庭の一体感を生み出せる気はしています。

Q:おうちえんには保護者が動画をダウンロードできる機能がありますが、動画のダウンロードは可能にしていますか。また動画は、すべてのクラスの保護者に公開していますか。

A:(尾崎先生)宿泊学習など、年長になるまで内容を秘密にしておきたい行事については、パスワードをかけて、年長の保護者しか見られないようにしています。そのほかの動画については、どのクラスの保護者も常に見られるようにしています。ダウンロードについては、今のところ宿泊学習のみ可能にしています。事前に年長の保護者全員に、動画ダウンロードついての同意書をとりました。誰か一人でも反対する方がいたら、ダウンロードはさせない方針でしたが、全保護者が賛同してくれました。同意書を取る前に、保護者のみなさんは動画を見ていたので、「これなら大丈夫」だと思っていただけたのではないかと思います。

(北野先生)動画はどのクラスの保護者も常に見られるようにしています。最初に投稿した動画は、もう1000回以上閲覧されています。ダウンロードは基本的には許可しておらず、「おうちえん」の中で視聴を楽しんでもらうようにしています。とはいえ、ダウンロードしたいという声は保護者からもあがってきているので、現在、方針を検討をしているところです。

(大熊先生)当園でも、動画は常にどのクラスの保護者でも見られるようにしています。動画をダウンロードできるかどうかについては、動画の内容によって決めています。

これからの「おうちえん」−−㈱スマートエデュケーション 代表 池谷大吾

最後に、スマートエデュケーションの池谷から、「おうちえん」の今後の展望についてお話をさせていただきました。

現在「おうちえん」は、神戸大学と共同研究を進め、ドキュメンテーションの機能を追加していくことを予定しています。子どもたちの育ちを、動画や写真で記録する機能です。

今回の事例紹介にもあったように、あだちみどり幼稚園は、運動会当日の成果だけでなく、プロセスを保護者に見せました。結果・成果を見せる運動会から、成長を見せる運動会に、というのはまさに、ドキュメンテーション的な考え方に基づくものだと言えます。

図i1

結果だけを見せ続けると、保護者は去年よりも今年、今年よりも来年、と高い結果を求めるようになります。しかし、プロセスを見せると、成長・差分に注目することができます。大熊先生は、運動会の練習を見せることで、保護者の意識の変化をまさに実感しているというお話でした。こういった体験をより多くの園で味わっていただくべく、「おうちえん」はドキュメンテーションの機能を追加することを決めました。

図i2

では、ドキュメンテーションをICT化することに、どのようなメリットがあるのでしょうか。

図i3

ひとつは速報性です。従来のドキュメンテーションは、保護者が園に行かないと掲示を見ることができない、というのが弱点でした。ICTを活用すれば、時間・場所にかかわらず、情報を伝えることができます。もうひとつは、双方向性です。ICTを活用すれば、園と保護者の双方向のコミュニケーションが、より簡単にできるようになります。こういったことにより、園への理解がさらに深まります。

ICTは「表現」するための道具です。池谷は最後に「現場の先生が作っていて楽しいと感じ、クリエイティビティを発揮できるサービスを、これからも提供していきたい」と締めくくりました。

まとめ

今年度は「参観や懇談がなくなり、子どもが園でどのように過ごしているのかがまったくわからない」ということを、多くの保護者が感じてきたのではないかと思います。そんななか、今回お話をしてくださった園さんは、動画という新たなコミュニケーション手段を導入し、園と家庭と絆を深めることに成功しています。

「ニューノーマル」・「新しい生活様式」という言葉が登場しましたが、コロナ以前の形に戻ろうとするのか、このコロナのピンチをチャンスに変えて、新しい保育・教育を実現しようとするのか、この差は今後、非常に大きくなってくるのではないかと思います。もちろんICTがすべてではありませんが、これからもスマートエデュケーションは、子どもたち、保護者の皆さん、園の先生方のためにICTができることを、園の先生方と一緒になって追求していきたいと思います。

次回のオンラインセミナーもぜひお楽しみに!

(文・大澤香織)


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