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30年ぶりにクラシック弾いて気付けた事3つ

つい先日、アメリカでクラシックピアニストとしてご活躍のぴあおさんが企画してくださった「皆弾き企画 第27弾 ショパン ワルツ集」に参加しました。いつも幅広くお声がけ頂いている、とても有難い企画です。

企画の募集があったのが昨年12月。
せっかくなので以前から憧れていた曲に挑戦してみようと思い、ショパンのワルツ遺作ホ短調にチャレンジしてみることにしました。

私はいま、普段はオリジナルの作曲やピアノ即興をメインに活動しています。練習期間が必要なクラシック曲に新たに取り組むのは、実に30年ぶり、高校生以来のこと。

私にとっては、思い切ったチャレンジでした。

半年間かけて練習し、おかげさまで無事完走。私にしてはかなり上出来の録音が残せました。
正直、通し演奏の録画(フル)が撮れるとは思っていなかったので、ホント良く頑張ったと思います(笑)。諦めなくて良かった!!!

今回チャレンジしてみて良かったと思えた点、気付きが3つありました。
自分の備忘録として残しておこうと思います。
もし、どなたかの参考になれば幸いです。

1.短い時間の積み重ねでも、新曲を弾けるようになる

学生時代は、平日でも1日4時間はピアノを弾いていたと思います。
だから、まとまった時間が取れない中では、クラシック曲に取り組むのは無理だろうと思ってました。

もちろん今回は、毎日4時間練習なんて無理です。
そこで、しっかり期間を要する前提で、曲と向き合うことにしました。

企画募集があったのが昨年12月、そして企画への投稿は本年5月末。
だから6か月計画です。こんな感じですすめました。

➀まずは譜読み。曲の全体像と自分なりの難所を見極めとく

企画にエントリーした直後に、まずはザっと曲全体の譜読みを進めました。
超強引な初見演奏。
目的は、曲の全体像を知ること、そして自分の実力に対しての「難所」を認識しておくためです。

全然弾けていないまでも、「ここはすぐ弾けるようになるだろうな」「ここマジやばい」などなど、自分なりの感触を持っておくとそれだけでも安心材料の一つになりました。

②細かいことはさておき、まずは「慣れる」こと

この段階を、実に4か月ほど掛けました。

1月~3月は、作曲メインに過ごしていた時期。
ショパンのワルツ練習は、週1回30分程度、譜読みをしていた程度。
あとは模範演奏を良く聴き、色んな方の解説動画や解説ブログを読むなどもしました。

4月に入り、1~2日おきに譜読み。
4月末時点でだいぶ慣れたけど、ゆっくり弾くのがやっとこさ。
(…そして5月の1か月間で一気に追い込むことになる)

結果論でもありますが、この進め方でよかったと思っています。
ここが、学生時代の取り組み方とは大きく変わったところの一つでした。

普段オリジナルの即興演奏中心にやっているおかげで、自分の中から音楽が出てきて、脳と指先が一体になる感覚が良く分かるので、
クラシック曲演奏に関しても、曲のフレーズが自分の中から出てくるような感覚に持っていきたい
というのが、何となくですがありました。

だから、強引に何度も繰り返して身に付けるよりも、自然な形で、ショパンの曲を自分の中に入れていきたいなと思いました。時間(期間)を掛けて向き合えばいいと。

③直前2週間は、毎日録画→反省会。ここで一気に伸びる!

やって良かったのは「毎日録画」そして「反省会」を丁寧に行って、明日の練習で実際に活かすこと。その繰り返しを約2週間。

「こんな演奏がしたい」に対して、いかに出来得る限り「客観的な振り返り」をし改善につなげるかが、とても大事だと思いました。

録画は5分~30分。反省会に30分。それをTwitter投稿するのに30分。
直前2週間は、毎日1時間半程度、このために時間を使っていました。

たとえばある日のこんな投稿。

「ステージ本番」の意識で、通し演奏を前提とした「録画」をすると、演奏のために自分に足りないものに気付きやすいと思いました。

例えば、私は速めの曲を弾くとすぐに右前腕の筋肉がパンパンに張って、演奏中に吊ったり吊りかけたりします。でも、そんなの言い訳なんだ。

■最後まできちんとした身体の状態で演奏したいなら、筋力配分を計画的に考える必要があるし、腕だけで弾こうとせず、身体全体を使い体重移動も用いながら演奏をする必要がある。
■ミスする箇所が減らないなら、覚悟決めて暗譜する。自分の暗譜を信じて、演奏中は鍵盤、指先、鳴ってる音だけに集中する必要がある。

等々…より良い演奏をするために、「こうするべきだ」と自分自身が実感すれば、もうやるしかない。

自分のペースで演奏していると、必要なことに気付きにくいので、「ステージ本番」の意識で、通し演奏を前提とした「録画」をするのは、特に直前期には本当に良い練習だと思いました。(学生時代にはここまでしていない)

5月1日時点では、感情を込めて弾くとすぐにミスって、「正しくその音を弾く」という意識でなければ演奏出来ませんでした。

だから、約3週間後には、感情を込めて思うがままに、かつ豪快なミスなく演奏出来るようになったのは、本当にラッキーだったと思います。

2.作曲や即興の経験は、クラシック演奏にも活きる

若い頃の方が「難しい」曲を弾いていたので、演奏力は落ちたなぁって思ってたんですが、ちょっと考えが変わりました。自分比です(笑)。

今回久々にクラシックの新曲と向き合う日々の中で、自信を持ったことがあります。

「私、若い頃よりもずっと、楽譜と丁寧に向き合えてる。すごいじゃん。」

クラシックを嗜む方々にとっては、当たり前のことかもしれませんが。。。

作曲で自分でも楽譜を書くのが当たり前になったこと(ピアノソロ、フルオーケストラ、ポップス系のバンドスコア等)で楽譜がより自分事になったのと、あとは曲がりなりにも、作り手側の心境を経験していることが、より丁寧に楽譜に向かわせてくれるのだと思いました。

人様の書いた大切な作品に、私なりに真摯に向き合いたい。

元々、丁寧に楽曲と向き合っている方は沢山いらっしゃいますが、
私自身は、作曲の経験のおかげで、丁寧に向き合えるようになったんだと、今回30年ぶりにクラシック曲と向き合いながら感じました。

3.カバー演奏も、目指すは「私の言葉」

前回のnoteで書いた「ピアノの技巧」につながる話です。

今回久々にクラシック曲と向き合い、ダルクローズさんのこの言葉を強く実感出来ました。

私たちにとっては、理想的な技巧は、感覚と感情の協調を保証してくれる指と脳の絶え間ない協調をもってのみ、生み出すことのできるものなのである。

リトミック論文集「リズムと音楽と教育」第5章「リトミック、ソルフェージュ、即興演奏」
エミール・ジャック=ダルクローズ・著
板野平・監修、山本昌男・訳

特に、直前期の追い込みの中で、
段々とそのフレーズを思うがままに感情を乗せて奏でるのが、自分にとって「当たり前」みたいな感覚に変わって行く瞬間があって、これがまさにダルクローズさんの言う「感覚と感情の協調を保証してくれる指と脳の絶え間ない協調」なのかなと思えました。

(そうなる前の感覚は、そのフレーズをミスらないように乗り越えようみたいな感じ。吠えてる犬にそ~っと近づくような感じ??(笑))

「憧れのフレーズが、まるで自分の中から出たかのような感覚」になれる瞬間を味わえるのが、クラシック曲に向き合い、演奏する醍醐味なのかな、なんて思えた次第です。

練習を積み重ねることは、目の前の楽譜を正しく演奏出来るようになることではなく、その曲のフレーズがまるで「私自身の言葉」として出てくるかのように演奏できるようになることだと、今回考えを改めました。

そして、演奏はノーミスに越したことは無いけれど、大切なのは、「私はこの曲が大好きなんです」「本当に素敵な曲なんです」という想いを載せて奏でること。

いやもう、改めて、ホント楽しかった。特にラスト2週間は。
チャレンジしてみて、本当に良かったです。諦めなくて良かった。
関わって下さった皆様に心から感謝です!!ありがとうございました!!

4.さいごに

私の活動のメインは、オリジナルの作曲とピアノ即興です。

でも、久しぶりに「クラシック楽しい!!」モードになっているので、
「若い頃に気になったけど向き合わなかった曲」たちにも、少しずつ取り組んで
いきます。

昨日早速、シューベルトの即興曲集を買いました(笑)。

今回「短い時間の積み重ねでも、期間をかければ、クラシックの新曲を弾けるようになる」と実感できたことは、本当に大きいです。
これからも作曲と並行しつつ、楽しんで行きます。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!!