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ごはんのこと

食べることが好きだ。食べることが好きになったのは両親のおかげだ。両親も食べることが好きだった。そして母は料理上手だった。仕事から帰り、手際よく美味しい料理を仕上げていた姿は、今となっては脱帽である。

大学を卒業してから一人暮らしをし、アパートの小さいキッチンで食べたいものを作った。私は料理がけっこう好きなんだ、と自分自身を知った。料理は没頭できてリフレッシュになって、成功すると美味しい。何度も作ったりコツを知ると上手になる。料理の本を買ってきて挑戦したり、後輩を呼んで鍋を囲んだりもした。とはいえ、独り暮らしだと外食したり弁当や総菜を買って食べることも少なくなかった。

私の中の「食べること」の概念が変わったのは、結婚して妊娠して助産院に通うようになってからだ。友人による助産院で医療介入なしの出産経験談に興味をもち、私も!と思ったのだ。(助産院だと会陰切開しないっていうことがいちばん大きなきっかけだったような気もする、2回とも自然分娩かつ会陰切開なしで産後ラクだった・・・)助産院は、医療介入なしの分娩を行うため、妊娠期間中の生活指導が厳しい。体を冷やしてはいけない、和食を食べる、睡眠時間をしっかりとる、運動(ウォーキング)する、パソコンやスマホから離れる時間をとる、などなど。

それまで、夫とふたり大人の気ままな生活をしていた私は、本当に大変だった。まず妊娠で体力がぐっと落ちてしまって、とにかく横になりたくて仕方ない。仕事中は気力が続くのだけど、帰ると布団に倒れこんでいた。安定期に入って、食事の内容を見直して、忙しい中でも和食を頑張って作った。ごはん、お味噌汁、焼き魚、煮物やおひたしなどなど。

和食が作れると、離乳食は味付けする前にとりわけすれば済むから、と言われ、便利に流用できることもおしえてもらった。かぼちゃ、小松菜、人参、大根。味噌汁用にクツクツゆでて、取り出してつぶして食べさせた。離乳食用に作らなくてよいのはいい。ありがたいことに、我が娘たちはこういった野菜は今でも好き。

しかし乳児・幼児がいて、勤めもあると、食事にかける体力が残らず、やはりかける手間は減らしていきたいもの。いまの世の中、いろいろと便利なものがあって、駅ビルの惣菜店も、すでにカットされセットされている野菜や肉と調味料で調理するものも、レトルトも使った。冬はおでんだと、朝出かける前に仕込んで、帰宅後すぐに食べられる。本当に重宝した。

とにかく忙しい。とにかく時間に追われる。好きな料理も没頭してとりかかる余裕が無い。簡単に用意できてすぐ食べられるもの、簡単・すぐ・簡単・すぐ。すぐ。すぐ。。。これでいいのかなとぼんやりと思う。出かける時間になってしまうから、寝る時間が遅くなるから、「早く食べて」ばっかり言ってる私。食事ってそういうものではないはず。どこかでわかっているけれど、ゆっくり食べてる暇はない。ましてや理想的な食事を整えるなんて。保育園の先生だって無理しないでって言ってくれる、お母さんがラクしていいのよ、お母さんの笑顔が一番だよって。でも、ラクしても、これでいいと納得していない自分がいる。ラクしたからって笑顔になってないんだ自分。本末転倒。

そんなときに出会った一冊。土井善晴先生の「一汁一菜でよいという提案」


私は、朝食用に味噌汁を作り続けている。こどもたちは、ごはんとみそ汁の朝食をとって、今、学校や園に行く。みそ汁がどうしても飲めない日は、ふたをして、冷蔵庫へ入れておいて、夕食時に飲んでいる。こどもたちは、毎日みそ汁飲んでるから大丈夫!(あとは学校と園でバランスの良い食事とってるし!)と、そこだけは自負している。

移住して、時間に余裕がある生活になり、私が苦しかったのは「時間に余裕のない生活」だったとわかった。時間に余裕がないと、料理に向き合えない。毎日、凝った料理ではなくても、野菜を切って、肉や魚を煮たり焼いたり蒸したりして、自分が納得できるシンプルな調味料で味付けしてして、美味しかったり美味しくなかったりしながら、食事を用意したい。単純に美味しいものを作って食べたいという気持ちと、家族の体調をしっかり支えたいという思い。私は、自分の中の食事の重要性が高いのだ。食事を大事にしたかった。

忙しい日々でも、みそ汁を作り続けていたから、大事にしたいことを自分のなかでつなぎとめていることができたような気がする。

自分が大事にしたいということを、大事にするべき。それが自分自身、なんだと思う。

最近(でもないのかもしれないけれど)世の中では「新型栄養失調」という傾向があるそうだ。しっかり食べていても栄養素やミネラルが取れていないということにより、体調の不具合を引き起こすという。若年層の自殺が多いというニュースを見て、日々の食事にも原因があるんじゃないかと感じる。私自身、自分が食べているものに、実は栄養がないかもなんて考えたこともなかった。病気は運悪くなる人もいると思う。でも食事の結果が病気として出ている可能性もある。安さとか手軽さとかを選びがちだけれど、、、それだけでいいのだろうか。自分と家族が心身ともに健やかでいるための食事を、私は選びたい。

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