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【読書感想文】スクラップ・アンド・ビルド/羽田圭介

狂人ぶったふりして、こんなラストはずるい。

「じいちゃんなんて、早う死んだらよか」、口を開けばそう言う87歳の祖父の願いを叶えるため、28歳の孫はとある計画を企てる。

「スクラップ・アンド・ビルド」というタイトルから、ずっと都会暮らしの抗争モノだと勝手に思い描いて、全く今まで興味を抱いてこなかったが、全然違った・・・

家族小説だった。

祖父の「早う死んだらよか」「迎えに来て欲しい」という願いを切に叶えようとする孫の奮闘ぶりが愛おしい。

この間読んだ、川上未映子の「夏物語」が命の始まり方に焦点を当てたのなら、これは命の終わり方に焦点を当てた物語。

私はすごく面白かったんだけど、祖父の介護をする孫の話であるあたり退屈な話題と言われれば退屈な話題なんだろうか。

何が正解で、何が不正解なのか、人生の終わりにはつきまとう問題なのかもしれないけど、

祖父の自立をうながそうとする母とは介護のスタンスが真逆だが、被介護者のことを真剣に考えている点で健斗には仲間意識がある。

本人の意思を尊重する姿勢なんだと思う。

いやでも、イメージ的に羽田圭介作品は狂いまくってる印象が強かったから、これは予想外。予想外にあたたかい。

羽田圭介作品をもっと読もうと思った。
私はもう少し、狂ってても全然いい。

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