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フェリーでの出会い

朝起きると、おじさんが話しかけてきた。

「飲むか?」

一瞬、意味が分からなかったが、次の一言で了解した。

「昨日は、夜遅かったから一緒に飲めなくてごめんな。」

どうやら、飲み仲間を増やそうとした僕らは、この60代のおじさんにも、

声をかけていたようだ。確かにそんな記憶があるようなないような。

「飲みましょう。」

おじさんが差し出してくれたのは、泡盛だった。

ワンカップの蓋を開け、乾杯する。

「うっ。」

二日酔いには少々きつい匂いだった。

そこは我慢して、一気に飲んでみた。

芋焼酎のような味わいで、後味はもう少しすっきりしていた。

「ごちそうさまです。」

その後、話し込んでいると、後輩も交じってきた。

どうやら、おじさんは奄美大島で下船するようだった。

「島に行ったら、もっとうまい泡盛あるから、お前たちに送るよ。」

そういって、僕らの住所をメモしてくれた。

どんどん仲間は増えた。

船旅はまだ、20時間以上あったと思う。

仲良くなった、女の子の一人も奄美大島で下船するとのことだった。

そして、出航の時、デッキで縄跳びをしていた彼もなぜか仲間になっていた。

後輩には、あいつは声かけない方がいいと言っておいたのだが、

すでに僕が寝ているうちに仲良くなっていたようだ。

ロン毛のドレッドヘアーの彼は、その後レゲーのCDも出している奴だった。

その夜は、デッキに出て人生で最も明るい月をみた。

水平線から、月の光が水面に移り、糸筋の線を浮かび上げていた。

今晩の無限のお酒と共に夜を過ごすのであった。

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