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『父になるまで日記』を綴り始める目的

妻が妊娠した。
それは1ヶ月前。お互い仕事を終えた家で。

泣きながら「早く帰ってきて」との申し出。
色んな可能性が脳裏をよぎったが、
最近の妻の状況と、電話での声質から、
「もしかして、もしかするぞ」と期待した。

「赤ちゃん、できた」

ああ、今までドラマや漫画などで何度も見た光景だが、いざ自分事となるとこうも嬉しいものなのかと。まだ得体もしれない生命を身籠った妻のお腹を本当にさすりたくなるのかと。その神秘さにちゃんと感動するのかと。

この日は、ただただ幸せに満ちた夜だった。

妻の悪阻(つわり)は見事に次の日から始まった。
病は気から、の象徴のような事例だが、“妊娠”という事実が、妻からご飯を取り上げ、匂いを取り上げ、吐き気と腹痛を与えたのだった。

その横で、馬鹿みたいに当たり前にお腹が減る私。
それはそれ。これはこれ。なのは分かっているが、でもやはり気になる。どう支えればいいのか。

私が立てた方策は、「とにかく家事を担おう」というものだった。
自分のご飯を準備し、洗濯を率先して回し、洗い物は全て行い、風呂も掃除する。それによって支えているつもりだった。

しかし、期待していた感謝の言葉よりも、初めての悪阻に滅入り、毎日ネガティブな妻。その一方、自分のしんどさも分かってほしいと思ってしまう私。そのコントラストが日に日に明確になっていった。

「私1人で悩んだり考えたりしている」

7月に入り、7週目を過ぎた頃、妻が言った。
私が考え、実行した方策は功を奏していなかったのだ。妻がしてほしかったのは、洗濯するのでもなく、風呂を磨くのでもなく、

一緒に心配して、悩んで、喜んで、愛おしむこと

だったのだ。
その時わたしは、ガツーンと頭を硬いもので殴られた気分だった。
結局私は自分のことしか考えていない。
支えるふりをしていただけだった。

そこから、少しずつ、妊娠を自分事とし、考えるようになった。

そして今日、自分の心境の変化を感じる嬉しい出来事があった。
それが「米袋」である。
妻に頼まれ5キログラムの『ひのひかり』を買ってマンションのエレベーターに乗った。そのとき、

「ああ、赤ちゃんはこれの半分くらいの重さなんだな」

そう思ったのだ。自然に、父として我が子のことを想起する自分を客観視し、嬉しくなった。
着実に、私も父になっている。

だが、そのスピードは実際に身体に変化が起こり、エコーで目視し、心拍を聞いている妻には到底及ばない。

このままでは、温度差ができてしまう。
初めての子育てに後悔を残してしまう。

そう思った私は、noteに筆をとっていた。
アプリ「トツキトウカ」によると、生まれてくるまであと213日。
その間、我が妻、我が子、我が人生について考えたり感じたりしたことをしっかり綴りたい。
忘れたくない。そして、父としての自覚と愛情を深めたい。
そう思ったのだ。

毎日でなくていい。
何かの折にふと、妻と対峙し、赤ちゃんと対峙し、自分と対峙していく。
そのためのnoteである。


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