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「多い様」の外を知る

昨年、賛否の渦の中、それでも感動を与え倒した東京オリンピックが行われた。コンセプトは、「多様性」。狭い視野、偏見、固定概念は、もう前時代的であり、「令和の日本は誰ひとりとして世の中から排除しませんよー。そんな世界にしましょうよー。」と誇示していた。それに対して、目を輝かせて同意し、濁りなく応援していた私。

それから5ヶ月後、この本と出会った。

https://www.amazon.co.jp/正欲-朝井-リョウ/dp/4103330635

浅井リョウの『正欲』
題名と表紙のインパクトに目を惹かれて購入。
そんな何の気なしの出会いだったが、読み始めると一瞬で、価値観とか信条を根底から揺さぶられ続ける作品だった。

「多様性」が好んで叫ばれる世の中で、「多い様」の外にある性的欲求をもつ人たちの話。
東京オリンピックで取り扱われる「多い様」は所詮、話せば慈しみをもって聞いてもらえる範囲であり、その外に欲なり嗜好なりをもつ人がいることを人生で一度たりとも考えたことはなかった。なんと狭義的な「多様性」だったのかと情けなくなった。

人は結局、マジョリティの岸にいたがる。マイノリティに慈しむフリをして、こちら側の方が正しいということを確認する。その慈しみの範囲が広くなったとは言え、結局「まともな人」の岸には辿り着けない人たちがいる。いや、辿り着かない、か。それを承知で「多様性」と声高らかに言うのはどこかおかしい。

2/3×2/3=4/9
マジョリティでい続けようとしたって、いつかはマイノリティになる。
いちばん怖いのは、自分が正しいと思うこと。

ということを、もっともらしい顔して、マックカフェで書いている。
紅芋みたいな真紫の髪をした女性の横で。

suke

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