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本命の推しと2番目の推し③ 2022/02/05

2番目の推しは、ファンにお願いされると断れない性格だった。
ファンの望みを叶えたいと思うあまり、少々厄介なファンに好かれる傾向があった。

そんな姿に私は胸を痛め、もどかしさを感じていた。
はっきり拒絶すれば良いのに、と。

2推しは徐々に疲弊し、精神的に参っているようだった。
それでも笑顔は絶やさない。
日増しにやつれていく2推しが、痛々しかった。

2推しの一部のヲタクたちは、自分だけの特別な対応を要求していた。
実際に特別な対応を2推しがしていたのか私にはわからないが、ヲタクたちはSNSで思わせぶりなことを書き、同ペン(同担)を煽っているようだった。

とある公演で、2推しのヲタクがライブ中にボロボロと泣いていた。
そしてそのライバルのヲタクが、泣きながら外に出て行ったことがあった。

自分に目線をくれて嬉しいと泣くヲタクと、他のファンにばかり目線を送って自分は無視されたと泣くヲタク。
さらに、今日は自分にあまり目線がこなかったと特典会で2推しを責めるヲタク。

最近、あんまり眠れないから、、

体調を心配する私に2推しはそう言っていた。
でも大丈夫、といつも変わらず穏やかな対応だった。

アイドルとしては未熟な本命の推しは、意外にも厄介ヲタクを拒絶する強さを持っていた。
だけど冷たくすればするほど、執着していくヲタク。
本命の推しは、自分に執着されることをとても嫌っていたように思う。
そういうヲタクに対して、推しはとても冷たかった。

ある時、本命の推しの『厄介なヲタク』が、執拗にペンサ(ファンサービス)を求めてアピールしていた。
目の前、2メートルも無いくらいの距離で気づかないはずは無い。周りは冷や冷やしながらその光景を見ていた。
だけど推しは丸っ切り無視を決め込んでいた。
チラリとも目線を送らなかった。
意地でもペンサをしないという強い拒絶をはっきりと感じた。

私は、本命の推しの優しく可愛い対応しか知らなかったから、その姿を初めて見た時とても怖かった。
美人のヲタ友にその話をすると、ああそれはいつもの事だよ、と言っていた。
厄介ヲタクにはいつもそうやって完全に無視してるよ、と。(そこまで拒絶されるって、あんたいったいナニしたんや、、、)

私の知らない推しの一面を知って以来、注意深く観察するようになった。
彼女の言う通り、厄介ヲタクにはいつも冷たかった。ニコリともしない。
もっと怖いのは、そうやって冷たくされているファンは皆、嬉しそうなのだ。
満面の笑みで、ケラケラと笑って推しに話しかけていた。
無表情で対応する推し。

新大久保ヲタクの闇を、垣間見たような気がした。

本命の推しと2番目の推しのどちらの対応がアイドルとして正解なのか、私はわからなくなった。

ただ言えるのは、2推しは日増しに疲弊していた。
精神的に限界が近そうな気がしていた。

2推しの厄介ヲタクたちは、現れては消え、新陳代謝を繰り返す。
1人が去ってもまた新たな厄介ヲタクが現れた。


私はどちらの推しにも『良いファン』だと思われたかったし、推しを煩わせるようなことはしたくなかった。

そうやって2人の間をフラフラと曖昧な態度を続けていたが、突然、状況が変わった。

ある日の特典会、いつものようにチェキの列に並んだ。

私の順番になり、スタッフにメンバー名を伝えようとした時、2推しより先に本命の推しが前に出てきた。
2推しはそっぽを向いて、後ろに控えていた。

私は急いでスタッフにチェキの枚数とメンバー名を伝えた。
本命の推しの名前を先に、2推しの名前を後に。

それ以来、チェキの順番は本命が先で2推しが後になった。

それまで毎回、名前を言うより先に必ず2推しが前に出てきたのに。。そうなった理由はまるでわからない。
ただ、直前に推しと2推しは軽く言葉を交わしたように見えた。気のせいかもしれないけど。

例の美人のヲタ友にその話をすると、

ようやく本命の推しは、自分のファンだと確信したんじゃないかな

そう言っていたけど、もしそうだとしたら何がきっかけでそう思ったのだろう。
そして2推しが出て来なかったのは、事前に申し合わせていたのだろうか。

何が何だかまるでわからないが、こうしてチェキの順番問題はあっさり解決してしまった。
行動出来ずにいた私を見兼ねての優しさだったのかな、と思ったりもする。
面倒臭いファンだな、と思われていたりして。。。

彼女が言うように、推しにとって『順番』とは、私が思っていたよりずっと重要だったのかもしれない。
結局は本命にも2推しにも、私は変な競争意識を持たせてしまったような気がして、後悔した。最初から素直に本命の推しを優先させていれば良かった。

今でもその時のことを思い出すと胸がチクっとするが、同時に、推しが自分から出て来てくれたことに嬉しさを隠せない自分もいる。

ヲタクって、自分勝手な生き物だ。
そして、自分に都合の良い解釈をするもの。

あの頃は2推しをしている自分に酔っていて、周りが見えていなかったのかもしれない。


本命の推しと2番目の推しのエピソードは、楽しかった記憶ばかりだけど、今考えるとどちらにも良い顔をしていた自分はズルいヲタクだったなと反省もする。
私はどちらの同ペンからも嫌われていたかもしれない。

だけどとても楽しい思い出ばかりで、後悔はしていない。

本命の推しも、2番目の推しも大好きだった。
(ヲタ友には、無意識に2人を弄んでいると怒られた)

2人のちょっと微妙な関係を垣間見たエピソードも、そのうち書いてみようと思う。


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