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「オンライン句会」で死んでた感受性を取り戻しました

外出自粛で四季を感じられないなら、俳句を詠めばいいじゃない。

先日、「オンライン句会」に参加してきました。
「句会」とは、①各々で俳句を作り、②作者を伏せた状態で人気投票をして、③あれこれ言い合う 言葉好きにはもってこいの知的な遊びです。

大学時代、実用書の出版社でアルバイトをしている時にお世話になっていたエッセイスト・五百田達成さんに時々誘っていただいていて、今回「句会」自体は5~6回目。それをZoomでやる、と聞き「面白そう!」とすぐに飛びつきました。

ちなみに、私も五百田さんも元々は句会イベント「東京マッハ」のファン。こちらは俳句のプロたちが並ぶ天下一武道会で、文化濃度の高い、すごく充実したイベントです。東京マッハ的なことをしてみたい!というのも発端になってます。

※あてんしょん
今回の参加メンバー私含め俳句のプロはいません。専門的に見たら間違っている箇所など諸々あるかと思いますので生暖かい目でご覧ください。

①俳句を作る

友達に「えっ⁉」ってちょっと引かれすらするのがこの作業。確かに難しいけれど、五・七・五の17文字に、季語を入れる。ルールはそれだけ。困ったら「春」って言っとけば季語になる! 季語も歳時記を調べると出てくるしね。うんうん唸りつつ、なんとか3句作成。Googleフォームで主催者に送ります。

②人気投票(選句)

そして、集まった俳句がこちら。

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句会前に、事前に特選(最推し)、並選(推しの句)、逆選(文句をつけてやりたい)を各自で選びます。ちなみに逆選=ダメということではなくて、選がつくと議題に上がりやすくなるので「どういう意味?もっと知りたい!」「ふーん、おもしれぇ俳句」という興味の逆選や「くそぉ、こんなニクイ表現しやがって!」というやっかみの逆選もあります。逆選は「誰かの心に引っかかった」という点で名誉でもあるわけです。

③あれこれ言い合う(批評)

さて、ここから句会本番! 
参加メンバーは、五百田さんはじめ、フリーライターやWEB編集者などの言葉のプロ、はたまた普段は会社員という人までさまざまな8人。五百田さんが主宰するサロン「おとなの寺子屋」が母体です。

作者を伏せた状態で、各々が選句した句を詠み上げます。合格発表を待っているかのようなドキドキのなか、自分の句が詠まれたときのこそばゆいような気持ち。これも句会の醍醐味のひとつです。

さて、開票結果がこちら。

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圧倒的人気は19番。票がたくさん集まった俳句から、選句した人がなぜその選んだのか、理由を述べていきます。

肌に落つ平行四辺形の春

特選にした五百田さん曰く、「何より〝平行四辺形〟という言葉に元ガリ勉としてはグッときてます」。

同じく特選をつけたフリーライターのきえさんも「天才やな!」と大絶賛。「こんなに説明してないのに情景がパッと思い浮かぶ。窓から差し込む光が肌に当たって春を感じている、というのが窓・光・体なんて言葉を使わずに伝わってくる
感想に首がもげるほど頷きました。ぼやぼやしていた、自分の「好き」が他の人の語彙で輪郭を与えられていくのもすごく楽しいです。

ちなみに私も並選。他の人は「自分の身体に窓から差し込む日差しが当たっている」という視点で話していたのですが、私がパッと思い浮かんだのは「夕方の薄暗い子供部屋で、遊び疲れ寝てしまった我が子の頬に、出窓か何かから平行四辺形の日差しが差し込んでいる」光景。(私は子供いません)他者に当たって光、と考えると「肌に落つ」という表現もより叙情的に感じる。「他者が恋人なら、エロティックにも感じられるよね」と五百田さん。

俳句から連想して、いろんな妄想を繰り広げるのも句会の楽しみ方だと思ってます。

そんなベタ褒めされた句を作ったのは広告会社で働くつねちゃん。
在宅勤務中の昼休み、食後にベッドで寝転んでいたとき窓からの光を差し込んできた様子を詠んだそう。
「肌」って言葉にしたらエロくなりすぎたので「平行四辺形」というガリ勉ワードで中和したとのこと。ギャップある言葉選びも見事だなぁと感心しました。

筍の値をみて戻す春の夕

同票2位だったのが、買い物あるあるな場面を詠んだこの句。
情景が浮かぶ親近感と、「筍の値」というピンポイントから「春の夕」という遠景にパンする叙情、「みて戻す」のみで「買うのを辞めた」ことを表現する品の良さ などなど私も好きな句でした。(でも筍よりカステラにときめいて、今回私の食べ物枠の選は2番に)

句会初参戦のななこさんは筍が買えない、そして夕方という情景に「せつなっ!!」と思って選ばなかったそう(笑)。優しい感受性にキュンとしました。句会をやると相手の価値観も見えてくるから面白いです。句会婚活とかアリでは。照れ臭いけど。

作者は句会仲間のまりんさん。誰にも身に覚えのあることを上品に切り取る力にいつもうっとりします。

献立にアスパラガスの銃弾を

なんといっても、「献立」「アスパラガス」という家庭的ワードに「銃弾」という不穏ワード!! まさにハートを撃ち抜かれた人続出でした。
春の句で優しい印象の言葉が並ぶ中で「銃弾」っていうこのインパクトがすごい。
もはや「アスパラガス」って名前すら武器の名前に見えてくる(笑)。

最後の「を」という助詞にもコロナに打ち勝ってやる!とか外出自粛への鬱憤を晴らしてやる!みたいな強い意志も感じるよね~とわいわい。

作者は主宰の五百田さん! 中二病と言われようがなんだろうが、とにかく「アスパラガスが銃弾に見える!」という発見を伝えたかった、と。途中はこういうワードにしてたけど辞めて……など「どういう経緯でこの17字におさまったか」を聞くのは毎回面白い。

まぁ、いいね酒なし花見昼休み

最後に逆選が最も多かった句。 
読点が気になる 情景が浮かばない。「昼休み」ということはこのご時世に出社してる…? 
など物議を醸してました。でもこれは悪いというわけではなくて、それだけ見る人の印象に残る句だったということ。

作者は句会初参戦のななこさん。実は、まだ外出自粛は週末のみで普通に出社していたころ、会社の昼休みにみんなで花見をしたときの句だったそう。(みんな1人で花見してる想定をしていたから意外でした)昼休みの花見はすごく楽しかった……けど、けど、やっぱりビールが飲みたかった! と、複雑な「まぁ、いいね」でした。
答えあわせができてスッキリ。確かにこの微妙な感情は「まぁ、いいね」だ……。


そんな風に、1文字1文字、目を皿のようにして、やれこの漢字遣いが、助詞が、などと言ってるうちにあっという間に2時間半が経過!
「言葉」にこれだけ熱っぽく、真剣になっても許される時間ってなんて幸せなんだろう。

数回目だったけど、改めて俳句の奥深さ、難しさを実感しました。どんな瞬間を切り取って、どういう言葉で彩るか。インスタグラムに近い感覚です。
外出自粛で自分の感性がどんどん萎れているなぁ~~と思っていたけれど、俳句を詠んで季節を感じる心を揺り動かし、みんなで他の句をああだこーだ言うことで己の想像力がむくむく復活するのを感じたのでした。


今回はあまり選をとれなかったので、次はもうちょっとインパクトと共感を残す17字を作りたいな……。夏のリベンジ、必要です。

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