大月書店通信*第141号(2020/10/29)
「大月書店通信」第141号をお届けいたします。
新型コロナで一斉休校の期間中、中高生の妊娠相談が急増したとの報道がありました。相談を受けた専門家らによると、正しい避妊方法を知らない、妊娠の仕組みを誤解している内容が目立ったといいます。こうした事態は、性教育の立ち遅れが原因です。たとえば中学校では1年間で平均3時間しか性教育に充てられていません。
いま世界では、ユネスコが発表した「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」がスタンダードになっています。人権やジェンダー平等、性の多様性に立脚した「包括的性教育」とよばれるもので、性行為や避妊方法にとどまらず、家族や友情、恋愛といった人間関係、ジェンダーの理解、セクハラやDVなどの性暴力と安全確保など、体系的な教育プログラムが、幼年から青少年までの発達段階に応じて示されています。こうした性教育を受けることは基本的人権であり、学校が中心的な役割を果たすことも強調されています。
10月新刊の『包括的性教育――人権、性の多様性、ジェンダー平等を柱に』は、学習指導要領の“はどめ規定”や“寝た子を起こす”論など、日本の性教育政策の問題点を克服して、学校教育での実践を理論的にサポートする入門書です。
学校での性教育が不十分だと感じていたら、本書をぜひご覧ください。
【新刊案内】『包括的性教育』ほか10月の新刊
10月の新刊です。お近くの書店にてお求めください。
●世界標準の性教育のカギを握るのは学校だ!
『包括的性教育――人権、性の多様性、ジェンダー平等を柱に』
浅井春夫[著] 2,000円(税別)
SDGsでは性感染症予防やジェンダー平等が明記され、保護者の強力なニーズもあり、性教育に注目が集まっている。国際標準の性教育は学校が拠点となる。日本のボトルネックは何か、いかに打開し実践を切り拓くか、理論的に論じる。
●カウンセリングの本質がわかる好著の改訂新版
『改訂新版 カウンセリングで何ができるか』
信田さよ子[著] 1,600円(税別)
カウンセリングの第一人者が、その起源から理論・潮流、クライエントとの会話の実際も再現し、カウンセリングの可能性を語り尽くす。公認心理師の国家資格創設を受けてロングセラーを大幅改訂。
●非日常の世界から新たな社会の形を探る
『〈復興と祝祭〉の資本主義――新たな「災後」を探る』(唯物論研究年誌第25号)
唯物論研究協会[編] 3,500円(税別)
地震、水害、新型コロナ…引き続く災害に襲われる日本。そのなかで、五輪など祝祭により復興を目論む政治・資本の力と、新自由主義がもたらした社会の困難が露出している。その矛盾の裂け目から、新たな社会のビジョンを描く。
●特集=コロナショックと国の自治体戦略
『季刊 自治と分権』秋号 no. 81 1,000円(税別)
●首長インタビュー 宮本晧一さん(福島県富岡町長)●コロナショックと安
倍政権の「惨事便乗型」自治体戦略(岡田知弘)●第32次地方制度調査会答申から見る国の自治体戦略(榊原秀訓) ほか
●特集=官邸メディア監視の実態
『放送レポート』11月号 no. 287 500円(税別)
●官邸「メディア監視」の実態~情報公開請求でみえたもの~●民放労連新委
員長に聞く●「反日種族主義」現象を批判する~日韓の右派が合作した歴史否定とポスト真実~(岡本有佳) ほか
●特集=いいね!「20人学級」
『月刊 クレスコ』11月号 no.236 500円(税別)
新型コロナウイルスから子どもの生命と健康を守れるように、そして子どもたちが学校で楽しく学んだり遊んだりできるように、「20人学級制」を求める声が広がっている。財源などの疑問に応え、各地のとりくみを紹介する特集。
【話題の本】『これからの男の子たちへ』ほか
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★ 『これからの男の子たちへ』たちまち1万部突破 ★
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8月に刊行した『これからの男の子たちへ――「男らしさ」から自由になるためのレッスン』(太田啓子 著)。大反響が続いており、早くも1万部を突破しました!
☆著者インタビュー・対談☆
刊行記念イベントもあります。下の【イベント】欄をご参照ください。
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★ 『私たちはふつうに老いることができない』著者インタビュー ★
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5月に刊行した『私たちはふつうに老いることができない――高齢化する障害者家族』。著者・児玉真美さんへのインタビュー記事が増えています。
世界各国で進む「いのちの選別」を追った『死の自己決定権のゆくえ――尊厳死・「無益な治療」論・臓器移植』も、併せてお読みいただければ幸いです。
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★ 12月刊行予定『歴史否定とポスト真実の時代』 ★
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韓国で出版され、12月に小社より日本語版を刊行予定の『歴史否定とポスト真実の時代――日韓「合作」の「反日種族主義」現象』(康誠賢 著)。原書が2020年度・第14回の林鍾國賞(学術部門)を受賞しました。
『反日種族主義』はなぜベストセラーになったのか? 「実証主義」を掲げるその主張に根拠はあるのか? お近くの書店でご予約ください。
【イベント】「新しい部活動のかたちを考える」ほか
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★ 『これからの男の子たちへ』出版記念イベント ★
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「話題の本」欄でご紹介した本の出版記念イベント。著者の太田啓子さん(弁護士)と、本書にも登場する清田隆之さん(桃山商事代表)が語り合います。
※会場参加は定員に達しました。オンライン参加のみ、お申し込み可能です。
男たちは変われるか?~「俺たち」から「これからの男の子」たちへ~
日時:2020年12月11日(金)開場18時/開演18時30分
会場:Readin’Writin‘ BOOKSTORE(東京メトロ銀座線「田原町」徒歩2分)
参加費:1,000円
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★ 「新しい部活動のかたちを考える」オンライン講義&シンポジウム ★
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2017年刊行のロングセラー『そろそろ、部活のこれからを話しませんか――未来のための部活講義』の著者、中澤篤史さんによる講演と、参加者を交えたシンポジウムです。どなたでも参加できます。
日時:2020年11月6日(金)18時~20時
会場:オンライン(Zoom)
参加費:3,000円
主催:日本部活指導研究協会
【編集後記】
ウルグアイの元大統領ホセ・ムヒカ氏(85歳)が、コロナ感染拡大のなかでの健康と年齢を理由に、政界を引退しました。ムヒカ氏は、収入のほとんどを貧困の救済や次代を担う子どもたちの教育にまわし、自らは農業にいそしんで、質素だけれど、豊かな暮らしを楽しんできたといいます。
今年、上映された映画『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』のなかで、彼はこう語っていました。
「大統領というのは多数派が選ぶのだから、多数の人と同じ生活をしなければいけないんだ。国民の生活レベルが上がれば、自分もちょっと上げる。少数派ではいけないんだ」
この彼我の差にため息をつきつつ、コロナの時代に輝きを増す、ムヒカの言葉をかみしめています。(M.K)
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