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2021年夏、大月書店はジェンダーと多様性にフォーカスします。

Photo: Ludovic Bertron from New York City, Usa(CC-BY 2.0)

2021年の夏が来ました。
新型コロナのパンデミックが再拡大する中でのオリンピック開催強行。いろんな意味で、歴史に残る夏となることは間違いありません。
昨年以来のコロナ対応と五輪をめぐる迷走は、変われない日本の姿をまざまざと晒しました。しかし、政治状況に劇的な変化は起きず、市民も「批判疲れ」「怒り疲れ」に陥っているように思います。
日本という国はこのまま、いつまでも変われず老いていくのでしょうか。

でも、そんな中でも変わっていることはあるはずです。
たとえば、森喜朗氏の性差別発言に世代や性別を超えた抗議が沸き起こったこと。
入管法改正案に対する反対の声が広がり、法案成立を断念させしたこと。
高校などで、スカートとスラックスを選択できる制服が広がっていること。
学校や自治体で生理用品を無料配布する動きも、急速に全国に広がりました。

そんな動きと強く連関していると感じられるのが、ここ数年のジェンダー・フェミニズム関連書の活況です。
大月書店でも、昨夏刊行した『これからの男の子たちへ』が大反響を巻き起こし、刊行1年で9刷・2万5000部を突破しました。
かつて性教育は激しいバッシングを受けましたが、いまや地上波など主流メディアでも当たり前の教養として取り上げられ、広い層に浸透しています。
こうした問題関心はまた、性的マイノリティやさまざまな障害、多文化ルーツを持つ人など、多様性を尊重する社会への志向性とも結びついています。

政治や経済の中枢の「変われなさ」をよそに、人々の意識には大きな地殻変動が起きているのかもしれません。
社会全体が変わるスピードは遅くても、価値観のアップデートが必要だと考える人は確実に増えている。だとすれば、変化はいずれ不可逆的に起こるはずです

私たち大月書店も、そんな変化の一部でありたい、と考えました。
もちろん、これまでもジェンダーや多様性は重要なテーマであり続けてきましたが、その視点をあらゆる企画活動の基本に据えていきます。
以下にご紹介するのは、この夏以降の大月書店の出版ラインナップです。多くがジェンダーや多様性に関するテーマを扱っているのは、編集者1人ひとりが、いま時代が求める本を考えた結果と言えるでしょう。

7月刊『ケア宣言』(ケア・コレクティヴ著)は、コロナ禍が浮き彫りにしたケア実践の重要性に光を当てるマニフェスト。ケア労働の重荷を女性やマイノリティに負わせ、その価値を貶めてきた政治と社会のあり方を解明し、ケアを中心に据えた世界を構想します。

8月刊『差別はたいてい悪意のない人がする』(キム・ジへ著)は、韓国で16万部超のベストセラー。性差別や性的マイノリティへの差別、障害者や移民・難民への差別などを広く論じながら、私たちが日常の中で無意識の「悪意なき差別主義者」になっていないかと問いかけます。

#MeTooの政治学』(チョン・フィジン編、9月刊予定)は、韓国フェミニズム運動の最前線でアカデミズムとアクティビズムを橋渡ししてきた著者たちによる論集。そこで論じられる内容は、驚くほどに日本社会の性差別の現状に通じています。

そして『フェミニストたちの東アジア(仮)』(熱田敬子・曹曉彤・張瑋容・金美珍・梁 永山聡子編著、10月以降予定)は、中国、香港、台湾、韓国の4地域で沸き起こっている現在進行形のフェミニズム運動を、豊富な写真や当事者の寄稿を交えて伝えるドキュメントです。

一方、『不平等の進化的起源(仮)』(ケイリン・オコナー著、11月以降予定)は、ゲーム理論・進化心理学の視点から、性差や人種による差別がいかにして発生し固定されるのかを数理モデルで説明する、斬新な研究です。

また、児童書の分野でも、かつて性教育絵本の先駆けとなった『性の絵本』を全面的にリニューアルした『人間と性の絵本』(全5巻、10月刊行開始予定)、『世界じゅうの女の子のための日 国際ガールズ・デーの本』(9月刊)、『NOって言おう!(仮)』(12月刊)などを予定しています。

今後、新刊に関連した記事やイベント、フェア情報などを当noteで順次お届けしていきます。ご興味をもっていただける書店様とフェアやイベント等、ご一緒に企画できれば幸いです。

   2021年7月    株式会社 大月書店

*書名および刊行時期はいずれも仮のもので、予告なく変更する場合があります。


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