【大月書店通信】第151号(2021/8/31)
オリンピックという束の間の夢が醒め、感染爆発と医療崩壊の現実が私たちに残されました。
「多様性と調和」というスローガンとは裏腹に、五輪をめぐる数々の不祥事は、日本社会の人権意識が疑われるような問題ばかりでした。女性差別やルッキズム、障害者いじめ、ホロコーストをネタにする「お笑い」……
でも、これらの発言をした当人たちも、きっと本心から「差別の意図はなく」、「悪気のない戯れとして」言っていたに違いないのです。
そんなふうに、善良な市民である誰もが無意識に加担してしまう「差別」を論じ、計16万部のベストセラーとなった本が、おとなり韓国から届きました。
今月新刊『差別はたいてい悪意のない人がする』(キム・ジへ著)。
障害、外国人、LGBTQ、性差別など、さまざまな差別問題について論じながら、マジョリティ(多数派)にとってそれがいかに「自然」であり、無意識の構造に規定されているかを説得力をもって描いていきます。そこで紹介される事例の多くは、日本の私たちにも思い当たるようなものばかりです。
差別をKKKやナチスのような悪意の集団の行いと考え、「私(たち)はそんなことはしない」と考える限り、社会から差別は消えない――このパラドックスを直視することが、真の「多様性と調和」への道なのだと本書は教えてくれます。
【新刊案内】『差別はたいてい悪意のない人がする』ほか8月の新刊
8月の新刊です。お近くの書店にてお求めください。
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●誰もが「悪意なき差別者」になりうる
『差別はたいてい悪意のない人がする――見えない排除に気づくための10章』
キム・ジヘ[著] 尹怡景[訳] 1,600円(税別)
性差別、LGBT、外国人、障害者…あらゆる差別は、ありふれているからこそ
「見えない」。私たち自身の中にある思考のバイアスと、日常の中にひそむ排除の芽に気づき、真の多様性と平等を考えるための思索的エッセイ。
☆8月6日に起きた小田急線車内での刺傷事件を受け、第1章「立ち位置が変われば風景も変わる」の一部を緊急公開しました。
☆刊行記念イベントがあります。下記「イベント」欄をご参照ください。
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●国民的アニメ作家たちは次世代に何を託したのか
『ジャパニメーションの成熟と喪失――宮崎駿とその子どもたち』
杉田俊介[著] 1,800円(税別)
転換点たる「もののけ姫」以降、時代の困難と「大人」としての責任を作品の中で問い続けた宮崎駿。その「子ども」としての新海誠、庵野秀明、細田守ら新世代の作家の作品群を横断的に批評し、現代日本における「成熟」を問う。
☆試し読みできます
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●野球はなぜ戦後もベースボールと呼び名が変わらなかったのか?
『白球の「物語」を巡る旅――コンテンツツーリズムから見る野球の「聖地巡礼」』
増淵敏之[著] 1,800円(税別)
ベースボールはなぜ戦後も野球と呼ばれ続けたのか。そこには地域と野球の密接な結びつきがあった。伝説の投手沢村栄治、今も都市対抗野球に名を残す久慈次郎、幻の企業チーム別府星野組など、各地の野球にまつわる足跡を辿る。
☆試し読みできます
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●特集=「災害大国」のメディア
『放送レポート』9月号 no. 292 500円(税別)
●模索続ける災害報道~雲仙・普賢岳大火砕流三〇年集会~(蓬田正志)●被災者を取材するということ~災害・事件事故報道の教訓から~(臺宏士)●スポーツ実況と女性アナウンサー(谷岡理香)ほか
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●特集=「コロナ禍」2年目――今、大切にしたいこと
『月刊 クレスコ』9月号 no.246 500円(税別)
子どもたちを感染症から守るため、「しゃべらない」「くっつかない」などの行動制限を求めざるを得ない毎日。そんななかでも、子どもたちの成長・発達を支えるため、手放してはいけないことは何か。各地の実践を紹介する。
【イベント】大月書店「ジェンダーと多様性を考える」ブックフェア ほか
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★ 大月書店「ジェンダーと多様性を考える」ブックフェア ★
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台東区のセレクト書店「Readin’ Writin’ BOOKSTORE」にて、大月書店単独フェアを開催いただきます。「ジェンダーと多様性を考える」をテーマに、話題の新刊から名著、希少本まで、ずらりと並びますので、ぜひ期間中に足をお運びください。
期間:9月1日(水)~10月31日(日)
場所:Readin’ Writin’ BOOKSTORE(東京メトロ銀座線 田原町駅 徒歩2分)
OPEN:12:00~18:00 店休日:月曜日
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★ 『差別はたいてい悪意のない人がする』刊行記念トークイベント ★
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8月新刊『差別はたいてい悪意のない人がする』の刊行記念として、この本を読んだ3名がそれぞれの専門から、この本の意義、社会的な課題などを語り合います。聞き手は本書の編集に携わった梁・永山聡子さんです。
【話題の本】『「日韓」のモヤモヤと大学生のわたし』3刷&イベント続報
7月に刊行した『「日韓」のモヤモヤと大学生のわたし』(加藤圭木 監修、
一橋大学社会学部加藤圭木ゼミナール 編)。K-POPファンなどにも爆発的に広まり、早くも3刷となっています。
☆刊行記念イベント続報!
一橋大学加藤圭木ゼミナール×深沢潮 トークイベント
「歴史を〈わたし〉から語り始める」
【お知らせ】これからの男の子たちへ』刊行1周年&10刷記念動画公開!
昨年8月の刊行前後から大反響を巻き起こし、1年で10刷 2万5000部を突破した『これからの男の子たちへ』。
弁護士でありシングルマザーの太田啓子さんが、男の子の子育ての中で直面した「男の子優先」文化と「性暴力に寛容な社会」の問題に真摯に向き合った内容が、多くの女性・男性の共感をよびSNSで話題に。雑誌・新聞・TV等、メディアでも広く紹介いただきました。
刊行から1年を記念して、太田さんに動画でメッセージを寄せていただきました。どうぞご覧ください。
【編集後記】
唐突に音楽の話で恐縮だが、海外で日本のシティポップが人気だという。松原みきの「真夜中のドア」がspotifyで累計4500万回以上再生されているという信じられない現象が起きている。
特定のアーティストではなく、ジャンルそのものが人気というのも不思議な話だが、それによって様々なアーティストが再評価されたり、若手アーティストがシティポップ風楽曲をリリースしたりという流れも起きている。
何にせよ、リバイバルヒットが生まれる背景には長年そのコンテンツが存在し、人々の記憶にも残っていることが必須だろう。それは活字の世界にも共通する部分とも感じる。(S)
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