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ちおこ(地域おこし協力隊)メンバーの仕事や生活などを知り、ちおこ募集事業者を巡る旅「岩手県・大槌町 ちおこ旅」
2回目となる今回は、1月27日(土)から29日(月)の3日間に渡り開催されました。
地域に飛び込む不安を少しでも和らげ、大槌町での生活を思い描いてもらうための2泊3日のお試し移住。
先輩ちおこメンバーやスタッフたちの「まずは大槌に来て、大槌を感じてほしい」という思いが詰まった、濃密な3日間となりました。

今回の参加者は、お子様連れのご家族を含む9名。
世代も境遇も様々な皆さんが集まり、お互いに刺激し合い、交流を深めながら、大槌での時間を過ごす様子が印象的でした。
参加者の皆さんの感想や写真も交えて、今回の旅を振り返っていきます。

ちおこ旅1日目(1月27日)


■13:30 「大槌町文化交流センターおしゃっち」に集合

まずはそれぞれ、必要書類の記入などを済ませて頂きます。
集合時間より早く到着されていた方も多く「おしゃっち」3階の図書館を見学したり、近隣にある「ますと乃湯」に足を運んだりと、皆さん思い思いに大槌での体験をスタートされていました。

■ オリエンテーション

「ちおこ旅」実施の背景
大槌町や地方移住に興味はあるけど、一歩を踏み出すことができない…。
そんな方に向けて企画された、先輩ちおこ(地域おこし協力隊)や移住者たちに会い、話して、食べて、体験し、「ちおこを受け入れている地元事業者」を巡る旅。地方移住やちおこを取り巻くリアルに、移住側と地元側、両方の視点から触れることができるプログラムです。

簡単な自己紹介の後、3日間のスケジュールや内容を確認し、いよいよ旅のスタートです。

■14:30 東日本大震災を経て、大槌町の”今”

「おしゃっち」1階にある町内全域の地図や、震災前の町並み模型を前に、大槌町で生まれ育ったスタッフの実体験などを交えて説明しました。

「今日これから、一緒に町を歩いてもらうが、震災前と比べてどう変わったか…大槌町の13年の歩みを感じてもらえたら」と語りかけるスタッフ・あみっちょ。
スタッフ・みっきーは「石川県の地震を受けて“災害はいつでも起きる”と改めてお伝えしたい。宿泊場所に着いたら、避難場所やルートを必ず確認してほしい」と真摯な思いを伝えました。

■ 末広町商店街を歩き「鈴藤商店」へ

日々の暮らしを温める道具店「鈴藤商店」。
主に判子屋さんとして親しまれていましたが、一昨年改築し、雑貨も取り扱うおしゃれなお店に生まれ変わりました。
その評判は、この日もわざわざ盛岡市からお客さんが来ていたほどです。

店主のあきこさんと、看板犬のモコちゃんが出迎えてくれました。

ご家族で参加しているヤンさん。息子さんはこの旅を通して宿題にも取り組まれており、緊張しながらも「お店で、何か工夫していることはありますか」と質問しました。
「実は、仮設住宅での暮らしがヒントになっているんです」と、朗らかに笑う店主のあきこさん。
「限られた空間の中で、どうすればお客さんが居心地よく、ワクワクしてもらえるか。私自身も楽しく暮らせるよう、家具や商品を並べています」

■ 住まいを見る~アパート見学~

小鎚川沿いのアパート「カースル光輝」
大槌川流域の高台にあるアパート「プロムナード」

参加者の皆さんは、
「料理が趣味なので、大きい台所はありがたいです」
「築浅だけあって、お風呂も立派でいいですね」
…など、それぞれが外せないポイントをチェックされていました。

■ 鮮魚店「丸正 佐々木」に寄り道

「プロムナード」の斜め向かいにある鮮魚店「丸正 佐々木」。
ちょうど開店中だったため、急に団体でお邪魔してしまいましたが、ご主人が快く迎えてくれました。

ご主人「今の時期だとメバチかなぁ~。イカやホタテとか、自分で獲ったのもありますよ」

参加者の皆さんは、その安さと、一目で分かる新鮮さにびっくり。
お勧めの食べ方や自宅への発送など、ご主人との会話も楽しんでいました。

■ いよいよ海へ…「蓬莱島」に上陸

坂道を登っていくと、高い防潮堤の後ろに、西日に輝く海が。
車内からは、おおっと歓声が上がります。
タクシーは防潮堤の間を縫うように走り、町民に“ひょうたん島”と親しまれている「蓬莱島ほうらいじま」がいよいよ間近に見えてきました。
釣り人さんが「今日は波が高いから気ぃつけろ!飛沫で濡れるぞ」と親しげに声をかけてくれる場面も。
観光で訪れる方が増え、町民の皆さんもこうして見守ってくれています。

リアス式の海は、山に囲まれて湖のよう。島へは、長くて細い防波堤の上を歩いて上陸します。

■ 町の中心部を見下ろす「中央公民館」へ

「おしゃっち」「鈴藤商店」「蓬莱島」…
眼下に広がるのは、今日実際に巡ってきた町並み。

夕暮れが辺りを包む中、静かに町を眺める参加者の皆さん

「空地は目立つけれど“それでもやっぱりこの町に残りたい、住み続けたい”という人たちの思いを感じてほしい」
この旅を企画した移住定住事務局の運営元である、(一社)おらが大槌夢広場・代表理事の神谷が語りかけます。
「震災直後の映像や写真は、ここで撮られたものが多い。自分が今、同じ場所に立って味わった感覚を、ぜひ持ち帰ってもらえたら」

■ 地元密着のショッピングモール「シーサイドタウンマスト」

「マスト」は昨年10月に30周年を迎え、盛大なイベントが行われました。
施設に入ってすぐ、そのポスターに目をとめたのは参加者のチャンさん。
「すごいですね!町民の皆さん、とても喜んで、当日も賑わったでしょう!」と自分のことのように笑顔を浮かべてくれました。
「マスト」では10分ほど自由時間を取り、思い思いに館内を散策しました。

スタッフ・みっきーがお勧めしたのは「小石商店」の“きのぼり団子(みずき団子/おから団子)”。
参加者のミィさんとヤマタクさんが購入を悩んでいると…

ご主人が「黒いほうの団子は、くるみの色。数日なら常温で持って歩けるよ。固くなったら、トースターとか、ストーブの上で炙ればヤワくなっから」と丁寧に説明してくれました。

■18:00 「さんずろ家」で、ちおこ募集事業者と本音を語らう

それぞれの宿にチェックインをした後は、いよいよ1日目の懇親会です。

まずは大槌での出会いを祝して、カンパーイ!

会場となったのは、海の幸と女将のトークが名物の「さんずろ家」。
今が旬のタラが入った鍋、地酒・浜千鳥の酒粕を使ったブリの粕漬、大槌サーモンのお刺身などが並ぶ中、まだ緊張した面持ちの皆さん。
すかさず女将の大槌弁が響きます。
「これはサメヌタ。サメって分かる?こういうサメね…(身振り手振り)」
「それじゃ分かんねーべ!」
事業者さんの鮮やかなツッコミ。
息の合った地元民同士のやりとりに、笑いの輪が広がっていきます。

参加者のノブショウさんは、大槌サーモンのお刺身を一口食べて「うまい…」と唸りました。
「やはり大槌ならでは。東京で買えるとしても、地元で食べるのは全然違います」
大槌サーモンの養殖に取り組む大槌復光社協同組合の金﨑さんは「ああ、よかった。ありがとうございます」と照れくさそうに笑いながらも、これまでの経緯や苦労を、時には本音とお酒を酌み交わしながら伝えていました。

■19:30 波音響く夜道を歩き「三陸大槌町 郷土芸能 冬の舞」へ

希望者の皆さん数人と、「さんずろ家」から徒歩10分程の場所にある会場「三陸花ホテルはまぎく」へ向かいました。
この日は運よく、海に輝く“月の道”がとても綺麗に現れました。

スタッフ・あみっちょがスマホで撮影した写真。
右の建物が「三陸花ホテルはまぎく」です。

会場に着くと、既にたくさんのお客さんで賑わっています。
さっそく今日の出演団体「臼澤鹿子踊うすざわししおどり」さんの演舞が始まりました。
お腹の底に響く太鼓の音。たてがみを振り乱し踊る勇壮な姿。
その迫力に息を吞み、真剣に鑑賞する皆さんの横顔が印象的でした。
終演後の記念撮影タイムでは、舞い手さんとお話したり、鹿子ししかしらを持って写真を撮ることができます。

参加者・ヤンさんの息子さんは、実際に頭を被らせてもらい、その重さや視界を体験。
「少し重かった」と笑顔で感想を教えてくれました。

会場である「三陸花ホテルはまぎく」は、片寄せ波で有名な「浪板海岸」のすぐ側。大槌町には「浪板海岸」「吉里吉里海岸」の二つの海岸があり、海水浴はもちろん、サーフィンやSUPの体験も楽しむことができます。
ヤンさんは「移住となると、やはりまだハードルは高いですが、今度は夏に来てみるのもいいですね!子どもたちにも、大槌を好きになってもらえたら」と、大槌での初日を終えた今の気持ちを話してくれました。

海、山、川と共にある大槌町は、四季折々に違った一面を見せてくれます。もしかしたら“私だけに見えている大槌”もあるのかもしれません。年間を通して初めて見えてくる魅力も、きっと人それぞれ。ヤンさんが話してくれたように、“自分が感じた大槌の魅力”を、季節ごとに新たな発見を重ねながら親しんでもらう…。そしていつか、皆さんにとっての大槌が“もう一つの故郷”と呼べる場所になったら素敵だな。夜の冷たい潮風を痛いほど頬に感じながら、そう思わずにはいられませんでした。

さて次回は、更に盛りだくさんな「ちおこ旅」2日目です。
参加者の皆さんが、いよいよ先輩ちおこ・先輩移住者と出会います。
大槌で働き、大槌で遊ぶ…。緩さと覚悟が入り混じる、その実態とは。
お楽しみに。


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