「門」

瞼を開くと。まだ明るさの薄い部屋で松果体は敏感に光を感知します。門を開くように。肩甲骨を左右に大きく開くと。連動するように鎖骨が喉を開いていきます。ひとつひとつ門が開く音を静かに聞いていると。時折、油をさした方が良さそな重い音が響く門もあったりします。そうそう、今日は一日開かずの門もあります。そんな日があっても気分は上々です。

このところ白湯が朝のはじまりです。真っ白な大きめのマグカップにたっぷりと飲み干すこともあれば。半分で充分な日もあります。白湯を飲んでいる間。眠っていた隣の部屋にお香を焚くのが日課になっています。同じ種類のお香なのに日によって心境によって匂いも印象も違います。

眠っている間に日常のストレスや昇華できなかった感情が足の裏あたりから出ていそうな。そんな感じがするのは私だけでしょうか。眠っていた部屋にさまよう邪気を朝のうちに浄めてしまいましょ。てな具合でお香に火をつけます。

白湯.をすすりながら鼻をクンクンとうさぎの真似してみてもお香の匂いが立ち込めていない時があります。そんな時には私の体から毒素のような邪気が排出した朝なんだろうと思っていました。お香が私の邪気に飲み込まれてしまったんだわ。と思っていたけれど。どうも逆のようなのです。邪気を鎮めよう浄めようとするときにお香は匂いたつのを感じます。むしろ呑気な朝を過ごしてるときには。サラッとお香は燃え尽きて匂いを残さないような気がするこの頃です。

白湯が舌に程よい温度になって。ごくりと喉で音がします。体のなかで次々と開いた門を通してじんわりとあたたかな水分が行きわたる。ボーっとしていた右脳と左脳も開いてきたのをお腹の虫が教えてくれます。ぎゅるぎゅるー。

そうなの。門がたくさん開いている朝は。白湯が内臓から器官まですみずみにまで浸透するのを感じます。

台風2号が強い雨風を連れてやって来るという予報です。1日に登山予定をしていましたが日延べすることで意見がまとまりました。私としては台風もですが。近年は熊出現情報も見逃してはいけないのではと思っています。登山はもう少し様子見です。

予定がいくつか変更になった雨の続く日日。こんな時に頼りになるのがアマゾンprime。手のひらの映画館ですよ。しかも、ちょっと良い加減の映画を2本見つけました。ひとつはカトリーヌ・ドヌーヴ主演「愛しすぎた男37年の疑惑」もうひとつはヘレン・ミレンが主演とまではいかないけれど。メインで出演していた「ラストオーダー最後の注文」。

このふたりの女優さんなら。どんな物語のなかに居てもそれなりの存在感を出してくれるだろうな。そんな、私の密かな期待は裏切られることはありませんでした。雨の午後に少し閉ざし加減にしていた。私の感情の門に流れ込んだ映画の露をじっくりと堪能いたしました。

「大変、美味しゅうございました」