見出し画像

.114 サッカー観戦に関する覚書



サという字は


アウェーでドローだった週末のこと

うーん。悔しい。
でも、今節も見応えがあった。

実は、試合前にはじめて推しのクラブのくじを引いた。
全選手のグッズがランダムに入っていて、友だちと「意外な選手の缶バッジを引き当てよう。それでおそろでつけよう」と盛り上がる。

気分がいちばん明るかったのはここだったな、とのちのち後悔する。


いつまでも若いのは気持ちだけ

我ながら「なんだこの女子校のノリ」って思ったりもしたが、「バッジをつけよう」と一緒にキャッキャと騒いでいたのは、女子校どころか同じ高校に通っていた子である。

私たちもこのクラブを通じた長い付き合いだな。お互い大人になったところは多々あれど、グッズを前にしたときと1-1とかで試合が進んでいるときは、どうしても気分が幼くなってしまう。

大人の嗜み

まあ、大人になってしまうとこういうことをわざとやって遊ぶのをにひひと笑って楽しんでいるところは確実にある。

逆に、バカバカしいことを敢えて一緒にやれる人とはいい友人になれる。それで真面目な話もできるんだから、すごくありがたい。


心理的往復運動の繰り返し

わたしは「推しのクラブ」などと呼んでいるものの、自分がサッカーをみるのを推し活だと思ったことがない。

芸能人を本気で推したこともないので推し活の実態もよく分からない。しかし、サッカーをみる作業は子どものころの純粋な気持ちを思い出すためではなく、むしろ精神的に成熟したくてやっているようなところがある。


だから、本気でガッツポーズしたり、知らない人とハイタッチしたり、iPhoneを前にして「きたー」とか絶叫している自分に気づいて我にかえると、すごく恥ずかしかったりもする。


みている側の心理と行われている試合の関係

こうして試合をみるときに人として成熟したい願望と、現実の未熟な自分のあいだを行ったり来たりするのが、サッカーのランニングとリンクしてるのかなって思うことがある。


なんでまともに習ったこともない競技を夢中でみていられるかといえば、たぶん習ったことがないので本質を理解していないからという理由に尽きる。

自分はいうまでもなく推しのクラブがタイトルを獲るまでのプロセスにペイしていると同時に、仲間やホームタウンのあたたかさと、サッカーをみながら自分が変わっていく時間やプロセスにお金を出しているのだと思う。そして、長くみているうちにさらにそれらすべてがすごく好きになったんだと思う。


自分が好きな競技の本質はおそらく不変である。でも、試合の文脈に依存して好きなプレーは変わっていく。選手や監督が入れ替わるのは宿命だし、時間やプロセスを買っているからにはどこかで「変化」は受け入れてナンボだと思っているのだろうな。

仮に「変化」が楽しめないなら、たぶん昔にみて良かった試合を延々リピートしてみておくこともできる。わざわざ最新の試合を追いかけるのは、「変化」がほしいからだ。「変化」のなかに「普遍」を見出す悦びなんかを求めていたりもするのだろうな。

みたいなことを考える暇ない

普段、こうして考える余白がサッカーの試合にはない。その忙しなさ、やかましさ、速さが麻薬のようでもある。

考えるな走れ、いや考えろ、考えて走れみたいな余白のない連動したなかにある強固なものは流石にみていると伝わってくる。


スポーツをみるときに軸足を置く要素

仮にみんなが大好きな「気持ち」だけがこの競技で最も美しいと思うなら、たぶん試合はさて置いてダイジェストとインタビューとSNSばかり見るのだろう。

「気持ち」だけが唯一無二で美しいなら、べつに下手な選手を精一杯応援するのも全然アリだと思う。公園で小さな子どもがやってるサッカーだってサッカーである。同時に「気持ち」が美しくないなどとは言っていない。

お金を出したくなるようなうまい選手って本当にいる。立ってるだけで絵になる選手って本当にいる。だから「適当に走ってインタビューで嘘八百にいいことだけ言ってりゃいい」が成立しないともいえる。わたしは、美しいプロの技術にはお金を出したい。


スポーツはこの世の縮図なのか

「お前がサッカーが好きなのは、この世の縮図を眺めて楽しんでいるだけ」だと言われたことがある。

悪いが、縮図だと言えるほど生ぬるい競技ではないというのが当時からのわたしの見解だった。むしろ、この競技こそが等身大のこの世である。

仮に縮図なんだとしても、わたしにそういう知ったかぶりを言う奴の安すぎる説教より、試合をみているほうがはるかに楽しい。


まとめ

友だちとおそろのバッジをつけて爆笑するまでがワンセットだ。もっと言うなら、バッジをつけて指を指して笑いつつ、その日の試合で美しく勝利する。

そういえば、負けるためとか負けてもいいと言う話を聞いたことがない。なんで負けるための試合ってないんだろうなと、次のテーマが頭に浮かぶ。

ここから先は

0字

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?