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理事長、建物解体は築後72年でどうすか?

新潟のマンション管理士、おとうふです。
老朽化した分譲マンションの最後をどうするのか、難しい問題ですよね。別のnoteで「国が何とかしてくれる」事は期待できないのでは、という話を書きました。併せて読んでいただくと嬉しいです。

この中で「建物の解体」を難しい最期の一つとして書きました。方法は非常に明確ですが「解体費の捻出」「解体に関する合意」「協力デベロッパーの選定」等ハードルが非常に高い問題が多いため、なかなか現実的に解体にまで至るマンションは少ないです。
建替え、敷地売却のどちらについても「解体時期の設定」が不可欠となります。「解体準備金」を毎月の積立とするのであれば積立額に影響があります。解体に関する合意についても急に来年、再来年に解体、と出来る訳ではないので将来の時期を明確にして検討する必要があります。

そこで「解体時期をいつに設定するか」という議題が持ち上がるのです。

私が考える適切な解体時期はタイトルの通り「築後72年」です。正確には「解体目標を築後『72年』と仮に設定して早めに検討する」であり「72年経ったら何が何でも解体する」ではありません。
当然マンション毎にさまざまな条件がありますので一概には言えないことは重々承知しております。また重要な問題ですので、組合員の皆様でお話し合いになった結論があればそれを優先いただくのが良いと思います。
ただ、私も一応マンション管理に携わるプロとして、この問いに対する自分なりの答えを用意致しましたのでこちらにしたためたいと思います。
ご興味ございましたらご一読いただければ幸いです。


解体目標を設定することへのアレルギーと実害

中古マンションの価格は立地や物件のスペック、近隣のライバル物件の有無等様々な要因で決まられます。たくさんの要員の中でも特に重要な項目が「あと何年使えるか」「使えるようにするためにどのくらい費用がかかるか」を想定して設定されております。そのため同じ立地でも高経年マンションは築浅マンションに比べて安価なわけです。
「あと何年使えるか」という期間設定しているマンションは極々少ないです。というか、資産価値に影響が出ることなので、おいそれとは設定できないというのが本音だと思います。極端な例えですが、1〜2年で住めなくなるといっているマンションを数百万円出して買う人はいませんよね。マンションって使用期限が見えると価値が極端に下がるんですよね。

税法上の耐用年数「47年」をどう考えるか?

コンクリート造の建物の税法上の耐用年数である「47年」を目安とする管理組合さんも多いのではないでしょうか?ただ、きちんと管理しているマンションさんにとってみれば「47年」で解体は随分早いと思いますし、もったいないと感じる事も多いのではないでしょうか。

高経年マンション管理に携わる事が多い私の肌感覚ですが、築30年を超えてくると解体や建て替えの話題が出始めますが、具体的な検討にかかるマンションはそう多くはないように思います。

ちなみに、同じコンクリートの建物でも「商業ビル」はこの47年を目安に解体、建て替えされる傾向にあります。

解体費用について

マンションを解体するためには当然お金がかかります。RC造ですと戸当たり200〜1,000万くらいらしいです。

積立金の余剰があれば将来解体費として使えるかもしれませんが、あまり当てにしないこととして、200〜1000万を積み立てるには毎月いくら積み立てれば良いのでしょうか。参考に期間別の積立金一覧表を作ってみました。

期間別解体費用積立一覧表

70年の欄いる?と思われるかもしれませんが、竣工当初から積立ていればこのくらいという目安として見ていただければと思います。

修繕周期の計算がしやすい

大規模修繕計画の周期の設定は様々ありますが、過去の長期修繕計画ガイドラインでは「12年から15年」と言われておりました。直近ではこれに加え「18年」という声も聞かれるようです。12年なら5回、18年なら4回とピッタリ収まる。

築年数が50年を超えた分譲マンションは多くないですが「コンクリート造の建物」と見ると実は相当たくさんあります。身近な所ですと小学校や裁判所等の公共建築物は修繕しながら長く使われております。

「新潟市公共建築物保全計画」では80年とされている

72年というのは、竣工から標準的な管理が行われていれば多くのマンションが目指せるラインだと思っております。令和4年の「新潟市公共建築物保全計画」で保全目標を80年としているため、あながちでたらめとまで言えないと思うんですよね。リンク貼っておきます。ご興味のある方はお読み下さい。

言い訳がましい後書き

お読みいただき、皆様色々な感想を持たれていると思います。
ご参考にしていただければ幸甚ですが、根拠が乏しく実用性に欠けるという意見もあるかと存じます。それはそれで真摯に受け止め引き続き根拠を固めていきたいと思います。
ちなみに、私がこのnoteで達成したい一番の目的は「解体含むマンションの将来について早めに検討してもらう」事です。この難しさたるや半端じゃないです。今検討している自分達は解体の当事者ではないかもしれない。次の世代のために何をしてあげられるのか…なんて事をどのくらいの区分所有者さんが共有できるのか。

正攻法で「将来について検討しませんか?」なんて話をしても「時期尚早」だの「次の世代に検討して」だの言われて俎上に上がらないです。もしあなたがこの問題に主体的に取り組めるということであれば、理事会に「理事長、建物解体は築後72年でどうすか?」と具申してみて下さい。ギョッとされると思いますが、万が一「反対だ」などと言われたら「その反対の理由はなんですか?」と聞いてみて下さい。根拠などないことなので「自分が行うことが面倒だから」以上の回答は出てこないはずです。こうなれば「マンションの将来を検討するための委員会を立ち上げる」「理事役員に立候補する」等取れる手立てが出てくるはずです。

最後までお読みいただきありがとうございました!皆様がより良いマンションライフを過ごせますようにお祈りしております!

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