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湯沢町のリゾートマンション爆売れ記事について、新潟のマンション管理士が一言

2月3日にこんな記事(以下「当該記事」という。)が公開されてました。

新潟・湯沢のリゾマンいきなり「爆売れ中」の真因

爆売れ中なんだそうですよ。この記事が出るまで知りませんでした。
私はただのマンション管理士なので、リゾートマンションを「今が買い」とも「絶対に買うな」とも言いません。
ただ、もし当該記事を見てリゾートマンションを買おうか迷った方がいらっしゃいましたら、新潟で15年マンション管理に携わっている私の考えがお役に立てるかもしれないと思いこのノートを書きました。
何の役にも立たないかもしれませんし、お邪魔ノイズになっちゃうかもしれませんが、興味ございましたらご笑覧くださいませ。

ちなみに時間の無い方用に、結論はこちらのツイートの通り。

リゾマンって、買っちゃいけないんじゃなかったっけ?

湯沢のリゾマン界隈をウォッチしている方にとっては、当該記事は意外だったと思います。ちょっと前にリゾマンは「負動産」とか「腐動産」って言ってる記事を見たような気がするけど、あれはなんだったの?という気持ちの方も多いのでは。

いずれもここ4年程前の記事です。この期間で何か大きく変わった?私が知らないうちに革命起きたの?
まあ全部違う雑誌なので、言ってることがバラバラなのは別に良いわけですが。

変わったこと、変わっていないこと

という訳でこの約4年間で変わったこと、変わっていないことを整理して書いてみます。

変わったこと①コロナ禍

2019年12月に中国で1例目の新型コロナウイルス感染者が報告されてから、2020年に入り「コロナ禍」に突入し、様々な行動が制限されるようになりました。

変わったこと②リモートワークの普及

コロナ禍に伴い、多くの会社でリモートワークが採用されるようになりました。これにより「必ずしも勤務地の近くに住む必要」がなくなり、居住地の選択の幅が広がった方が増えました。当該記事でもリモートワークの普及が「爆売れ」の一因と記載されております。

変わったこと③インフレ

コロナ禍、ロシアのウクライナ侵攻によりエネルギー、建材、設備、様々な物品が値上がりしています。現在進行形で上がっており、天井が見えない状態となっております。

変わったこと④大手管理会社の撤退

湯沢地区については大手管理会社の撤退が続き、地元の管理会社である「エンゼル」さんが大きなシェアを持っております。

変わったこと⑤管理計画認定制度

全国的には2022年4月から始まった「管理計画認定制度」ですが、湯沢地区では2022年9月から申請可能となっております。今の所(2023年2月5日現在)、同地区では認定を受けたマンションはないようですが、この認定を受けたリゾートマンションが出てくれば「一定水準の管理が行われているマンション」という評価がなされる可能性があります。

変わっていないこと①湯沢町の人口減少

湯沢町は人口約7,971人(2022年12月末日)の町です。
過去からの人口推移を見ると、残念ながら少しずつ減少しております。

2022年12月末日 7,971人
2017年12月末日 8,235人
2012年12月末日 8,290人
2007年12月末日 8,568人

引用:湯沢町ホームページ

変わっていないこと②日本一のマンション化率

データは少し古いですが、2015年の東京カンテイ調べの行政区別のマンション化率(マンションストック戸数÷世帯数×100)は410.4%です。2位の草津町158.47%を大きく引き離してのブッチギリの一位です。

引用:最新不動産ニュースサイト「R.E.port」

尚、2022年12月末時点の湯沢町の世帯数は3,948世帯で、上記データより増えております。ただ、マンションストック数が変わっていないならマンション化率は363.9%で依然高い水準を保っているものと思います。
爆売れしても「リゾートマンション」が欲しいのであれば、まだまだ在庫はあるし、「船に乗り遅れるな」という状況ではないと思います。

変わっていないこと③マンション終末期を取り巻く法整備

2022年6月にマンションの管理の適正化の推進に関する法律やマンションの建替え等の円滑化に関する法律の改正がありました。これにより「管理の適正化」「建替えの円滑化」につき従来より進んだものと思います。
ただ、高経年マンションについての「解体時の費用負担や合意形成の難しさ」「管理不全マンションへの支援の方法」「相続放棄された専有部分の取り扱い」「外国人所有者との共生」等は解消されたとは言えない状況です。湯沢のリゾートマンションはいずれも築30年程経過しており高経年マンションに片足を突っ込んでいます。高経年化により管理は更に困難となっていくわけです。
今、湯沢のリゾートマンションを購入するということは「先の見えない高経年マンション問題の当事者となる」という事と同意な訳です。

変わっていないこと④低水準の修繕積立金マンションの存在

「リゾートマンション」と一括りにされがちですが、管理状況はマンションによりまちまちです。一例として、毎月の修繕積立金額に大きな差があります。

Aマンション 1993年築 32.36㎡ 4,760円 ㎡あたり147円
Bマンション 1993年築 61.96㎡ 9,220円 ㎡あたり148円
Cマンション 1992年築 46.49㎡ 2,790円 ㎡あたり60円
Dマンション 1992年築 49.02㎡ 4,900円 ㎡あたり100円

月額の積立額が低ければ直ちに管理が悪いというわけではなく、長期修繕計画や現在の積立金総額等を精査しなければ評価はできません。ただ、経験則上「Cマンション」のような著しく修繕積立金の低いマンションは、管理のどこかで無理が生じている可能性が高いです。

将来の「リスク」をどこまで考えるか

変わったこと、変わっていないことを書いてみました。読んでいただき、どの様に感じられたでしょうか。「リスクは低く、今が正にリゾートマンションの買い時」と思われた方もいれば「市場は大きく変化しておらず、購入には依然リスクが伴う」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。私は皆様の判断を尊重します。

リゾートマンションを実住用に購入し「終の住処」にするのであれば、イニシャルコストが安いので「賃貸で住む」より場合によっては安上がりになるかもしれません。ただ、リゾートマンション含む分譲マンションは「大規模修繕工事」「解体、敷地売却」「建替え」等、賃貸物件とは違うイベントが複数発生し、区分所有者の多数決で決まっていきます。自分の意思とは別に、管理にかかる費用が値上がりしたり、共用部の使用方法が変わったりすることもあります。

安いイニシャルコストにはそのリスクの金額も含まれているのです。
買ってから「聞いてない」「知らなかった」と言っても後の祭りです。
マンションの価格は、市場にいる多くの人がこの「物件の価値」と「リスク」の重さを考えた価格です。今まで価値なしと判断されていたものに価値が付いた明確な「理由」が分からず雰囲気で購入することは「ハイリスク・ローリターン」のギャンブルの様なものです。

この判断でイニシャルコストで支払う数十万円、数百万円の範囲を超えた負債を抱える可能性があることだけは肝に銘じて、素敵なリゾマン生活を!それでは!

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