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人生所詮、あたしの体にホームステイ


【このnoteは 映画 HOME STAY の若干のネタバレを含みます。全部って訳でも無いので、もし観てない方でネタバレオッケー派の方がいたら是非。】


時々思う事がある。
私が私である限り、邪念とか美化された部分とかを除いた、純度100%の自分を知ることは出来ないのだろうなと。

周りの人達の言葉や態度に、自分の影を見る。でもそれはぼんやりとしていて、思ってる事との乖離に悩まされたりもする。良い意味でも、悪い意味でも。

自分を知るって、やっぱり難しいよなあと。
でも確かにいつも心に留めておきたいものがあるよなと。
エンドロールを終え、自分でゆっくりと消化したものは、私のお守りになるかもしれないと思った映画だった。
 

映画の主人公は死んだ青年。いや、正確に言うと彼の「魂」だった。数多の彷徨う魂の中から選出されたそれは、"シロ"と名付けられた。生きている間に何か「過ち」を起こして魂となったシロは、同じく死んだ小林真という青年の体に一時的に転生する。
100日間というタイムリミットの中、シロは小林真として生きる。そして、彼が死んだ理由を見つけなければならない。
シロが転生する為の "修行" なのだ。

そもそもシロは真が何者なのかを知らない。
家族のこと、好きな食べ物、教室の場所、幼馴染の存在。全部全部知らないのだ。
周りの人が自分にかける言葉や行動から、真という人物像のピースを少しずつかき集めていく。
どうやら真にはとてつもない絵の才能があり、そこそこ裕福な家庭で育ったらしい。料理上手な母親、友達想いの幼馴染、可愛い先輩に囲まれ、"真の人生、意外と悪くないじゃん?" なーんて思っていたのは一瞬の話。
彼を追い詰めたであろう様々なものが徐々に姿を顕にする。 

極め付けは、真が残した遺書だった。
真が死んだ理由は周りに追い詰められての自殺。誰も彼の事を気にする人なんか居なくて、ただただ邪魔な存在でしかなくて。母親の不倫、冷たい兄、夢を真正面から否定する父、学校での孤立、だから自殺したんだとシロは答えを出した。私もそう思った。

でもそれが「死んだ理由」ではなかった。
まだ他に何があるの…?もうこれ以上真に辛い思いはしててほしくないと、観ていてドキドキしてしまった。

物語の全てをここに書く訳にはいかず割愛した部分もあるが、この後は個人的に衝撃的な展開が続いた。

他人が考えてる事なんて、所詮は推し量りでしかない。
よく相手に期待しすぎるなと言うが、まさにその通りなのだと思う。思ったより相手は自分の事を考えていないのかもしれないが、その逆だって全然あるんだ。

自分の才能を認めてくれて、求め続けてくれる人。素っ気なくても、結局面倒を見てくれる人。アルバムを見返すと、いつも自分の隣で笑っててくれている人。
自分の事だって知らないのに、他人の事なんてわかりっこない。だけど、それがいつだってネガティブな意味であるとは限らない。

どんな自分でも、想像以上に誰かに想われている。

それに気付いたシロは、とうとう答えに辿り着く。
俺が俺を殺した、そう、シロは小林真なのだと。
シロが犯した大きな「過ち」は、小林真という自分自身を殺したことだった。

彼は一度死んで初めて、まっさらな自分を見つめた。
自分自身だと気付かず、他人だと思っていたからこそできたことなのだが。
結果的にそのおかげで、死ぬ前まで持っていた真っ黒なフィルターを捨て去って、自分の周りを見渡せた。自分が描く絵の様に、世界にはカラフルな部分だってあった。

自分の好きなことや想ってくれている人とか、そういうカラフルなとこだけを見つめて、それが生きる理由でもいいじゃない。

彼はそれに気付けたのだからよかった。

でも実際どうなのだろうか。
世界の色が真っ黒になる前に、少しでも色を見出せる人はどれくらいいるのだろうか。
そう思うと、結局小林真が自分自身を殺してしまうに至る原因たちをどうにかしないといけないんじゃないか。
カラフルだけを見つめるのもいいが、それが出来なくなってしまうからこその結果なのではないか。
どうしてもここだけは気になってしまった。

だからこそ、忘れていたくない。
たとえ心が真っ黒に侵食されそうになっても、ビクともしない様に強く強く閉まっておきたい。
絶対に、どこかにいる。思ったよりも自分の事を考えてくれてる人が、どこかにいる。
友達や家族だけとは限らない。
その時初めて会う人かもしれないけど、生きていてほしいと願ってくれる人が、必ずいる。助けを求めるって、きっとそういう人に会いに行く事なのだと思う。

残念ながら現実には、自分のデフォルトを初期化して客観視する、なんて方法は存在しない。他人に映る自分の影と睨めっこし続けながら生きていく。

でも。それでも。
どんなに自分がわからなくても、周りから押しつぶされそうになっても、好きなことや想ってくれる人の存在だけは揺るがない。
もう一度言う。それが誰かはわからない。けど必ず何処かにいる。


使えるもん使って、求められるもん求めて、しぶとく生きていこう。
人生は所詮、ちょっと長めのホームステイ。
これがあたしのお守り。

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