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3月19日、アンデルセンの国の受難曲... サーアンセンのマタイ受難曲からこぼれ出すメルヘンに癒される。

グレーテ・ペデーシェン率いるノルウェー・ソリスト合唱団の歌、ノルウェーの室内オーケストラ、アンサンブル・アレグリアの演奏で、デンマークの作曲家、サーアンセンのマタイ受難曲。
BIS/BISSA2611

2019年に作曲され、2020年、オスロ国際教会音楽祭で初演される予定が、コロナ禍で延期... 2021年、デジタル配信の形で初演された、ベント・サーアンセン(b.1958)のマタイ受難曲... 聖書をベースにしながら、19世紀、アメリカを生きたエミリー・ディキンソンに、20世紀前半のフィンランドの詩人、エーディト・セーデルグラン、ロシアの詩人、アンナ・アフマートヴァ、現代、デンマークの詩人、セーアン・ウルリク・トムセンらの詩も用い、10のパートで構成され、4人のソリストとコーラスが、受難曲ならではのイエスの受難へと至る物語を展開しつつ、イエスの人類ヘの愛、さらに、我々により身近な、シンプルな愛についても歌うという...

いや、受難曲はパッション!ドラマティックとなって然るべきなのだけれど、サーアンセンの受難曲は、夢の中を漂うように朧気で、何だかメルヘン... で、のっけから視界がぼやけるような感覚に襲われ、それがまた得も言えずリリカルな空気を醸し出し、聴く者をやさしく包む... この感覚が、新感覚!信仰を押し付けるのではない、イエスの儚い人生(なんて言ったら怒られそうだけれど... )を振り返り、慈しむ、やわらかな音楽が、コロナ禍、そして、戦争を目の当たりにした現代人、21世紀を生きる者たちの心に染み渡るのです。そして、深い癒しがもたらされる。

という、サーアンセンのマタイ受難曲を、ペデーシェン+ノルウェー・ソリスト合唱団で聴くのだけれど、北欧ならではの澄んだ歌声、ハーモニー、とにかく美しい!で、絶妙なやわらかさも見せ、サーアンセンの幻影のような音楽を麗しく歌い紡ぐ... そこに、アンサンブル・アレグリアの瑞々しくも繊細な演奏が、たゆたう背景を描き上げ、この受難曲からこぼれ出すメルヘンを引き立てる... いや、受難曲がメルヘンという、信仰の在り方が考え直されている21世紀なればこその魔法!まさにアンデルセンの国の受難曲、本当に興味深く、美しい。

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